第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P12

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-12-2] 外反母趾症状を有する女子大学生の立位姿勢と歩行時の床反力の関係

―外反母趾に対する運動療法の再考―

吉田隆紀, 谷埜予士次, 鈴木俊明 (関西医療大学)

Keywords:外反母趾, 床反力, 足圧中心

【はじめに,目的】

我々は過去の研究で,外反母趾症例は歩行時の立脚後期において足趾内側方向に足圧中心(COP)が移動し,蹴り出し時の直前に垂直方向への床反力が増大しているという知見を得た。今回の本研究の目的は,外反母趾症状を有する症例の立位時の特徴と歩行時の蹴り出し時の床反力増大の関連性について検討し,今後の外反母趾に対する運動療法の一助とすることとした。

【方法】

対象は,外反母趾角15度以上の女子大学生9名(以下H群)(21.3歳,身長158.5±3.8cm,体重50.9±5.7kg),コントロール群は外反母趾角が10度以下の女子大学生9名(以下C群)(年齢21.1±0.2歳,身長158.3±4.1cm,体重54.9±4.3kg)とした。方法は,身体アライメント評価として,外反母趾角,FTA,Leg-heel角,縦アーチ高率,横アーチ長率を計測した。関節可動域測定として足関節の背屈・底屈(膝屈曲位と膝伸展位)を測定した。また立位時の30秒間のCOPを圧力分布測定システム(ニッタ株式会社)で計測し,両足底の前後長からのCOPの割合を算出した(足先を0%,踵後端を100%とした)。またフォースプレート(AMTI)を使って歩行時の立脚時間,水平前後分力のピーク値,離地時の垂直分力,離地時の水平前後分力を計測し,体重で正規化した。なお測定は3回実施し平均値を採用値とした。得られた測定値はU testを用いて検討しH群とC群を比較した。有意水準は5%とした。

【結果】

測定の結果,有意差が認められたのは外反母趾角(H群22.4±3.3°,C群9.8±5.2°),Leg-heel角(H群外反10.5±4.1°,C群外反3.8±3.6°),縦アーチ高率(H群13.6±1.8,C群17.8±1.3)であった。関節可動域テストにおいて足関節背屈可動域(膝屈曲位:H群8.5±7.4°,C群18.1±10.1°)(膝伸展位:H群4.5±6.7°,C群13.4±7.4°)で認められた。筋力測定では母趾圧迫力(C群3.9±2.0kg,H群1.9±0.9kg)で認められた。また立位時のCOP位置(H群61.4±5.4%,C群55.4±5.4%),歩行時の測定の離地時垂直値(H群1.6±0.2N/kg,C群1.2±0.1N/kg),離地時前後値(H群0.2±0.2N/kg,C群0.6±0.5N/kg)で認められた。

【結論】

H群はC群に比較して歩行の足趾離地時に垂直方向の負荷が大きく,離地時前後水平分力が低いことから蹴りだし時において適切に推進力が得られていないと考えられる。その理由としてLeg-heel角の増大や縦アーチの減少を加味すると要因として足底部の剛性の減少によって前後への推進力を低下させていることや母趾の圧迫力が弱いことが挙げられる。またH群は足関節背屈制限が原因となり立位時のCOPが後方にあり,歩行時においても後方重心のため足趾離地時の垂直方向の負荷が増大するのではないかと推察した。これにより外反母趾症例の立位姿勢にも着目することが重要と考えられた。