[P-MT-12-5] 小学生における浮き趾と各種運動機能との関連性の検討
Keywords:浮き趾, 小学生, 足趾把持力
【はじめに,目的】
近年,足趾障害の一つとして浮き趾が注目されている。浮き趾は幼児から高齢者まで幅広い年代でみられ,そのうち成人や高齢者においては,浮き趾が足趾把持力や歩行能力に関連することが報告されている。しかし,小学生における浮き趾と足趾把持力との関連や,浮き趾の有無が直接的に運動能力に影響するかどうかは不明である。特に12歳までの子どもの時期は,足部形態が完成に向かう時期である。この時期の浮き趾が引き起こす問題や関連要因を検証することは,早期からの浮き趾予防を考えるうえで重要である。よって本研究の目的は,小学生における浮き趾と各種運動機能との関連を明らかにすることとした。
【方法】
奈良県田原本町の小学校5校の4~6年生635名を対象に浮き趾の有無,足趾把持力,新体力テスト(反復横跳び,50m走,立ち幅跳び)を測定した。浮き趾の有無は,フットプリンターによって得た静止立位時の足型データにおいて,全くプリントされていない趾が一本でもあれば浮き趾群と判定した。足趾把持力は,足趾筋力測定器(竹井機器工業,T.K.K.3364)を用いて股関節,膝関節90度屈曲座位にて左右各2回計測し,その最大値を用いた。新体力テストの結果は,奈良県教育委員会が管理する完全匿名化データを使用した。統計解析は全て対応のないt検定を用いた。まず対象者の左右各足において浮き趾群と正常群に群分けし,足趾把持力を左右別々に比較した。次に,左右両方の足を合わせた場合の浮き趾群(左右の趾の中で一本でも浮き趾がある群)と正常群に群分けし,反復横跳び,50m走,立ち幅跳びの結果を比較した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
解析対象者635名のうち,浮き趾群に該当したのは,右足で253名(39.8%),左足で259名(40.8%)であった。足趾把持力は左右ともに正常群に比べ,浮き趾群が有意に低かった(右足:浮き趾群:13.1±3.7kg,正常群:13.7±4.2kg,p=0.040;左足:浮き趾群:12.6±3.7kg,正常群:13.4±4.0kg,p=0.011)。また,左右合わせた場合で浮き趾群に該当したのは376名(59.2%)であったが,浮き趾の有無による新体力テストの3項目の結果に有意な差は認められなかった(反復横跳び:p=0.29,50m走:p=0.87,立ち幅跳び:p=0.55)。
【結論】
本研究の結果,小学校4~6年生において浮き趾がある側の足趾把持力が低いこと,浮き趾の有無によって運動能力に差がないことが明らかになった。本研究は横断研究であるため因果関係は不明だが,浮き趾という現象自体が運動能力に影響を与えるのではなく,足趾把持力の低下に影響し,足趾把持力が関連する運動能力の低下につながる可能性が示された。一方で,新体力テストはスポーツ活動の有無や足部以外の運動機能も結果に影響するため,今後は様々な要因を含めた調査によって,浮き趾がどのような問題を引き起こすのか,そして浮き趾の原因を検証する必要がある。
近年,足趾障害の一つとして浮き趾が注目されている。浮き趾は幼児から高齢者まで幅広い年代でみられ,そのうち成人や高齢者においては,浮き趾が足趾把持力や歩行能力に関連することが報告されている。しかし,小学生における浮き趾と足趾把持力との関連や,浮き趾の有無が直接的に運動能力に影響するかどうかは不明である。特に12歳までの子どもの時期は,足部形態が完成に向かう時期である。この時期の浮き趾が引き起こす問題や関連要因を検証することは,早期からの浮き趾予防を考えるうえで重要である。よって本研究の目的は,小学生における浮き趾と各種運動機能との関連を明らかにすることとした。
【方法】
奈良県田原本町の小学校5校の4~6年生635名を対象に浮き趾の有無,足趾把持力,新体力テスト(反復横跳び,50m走,立ち幅跳び)を測定した。浮き趾の有無は,フットプリンターによって得た静止立位時の足型データにおいて,全くプリントされていない趾が一本でもあれば浮き趾群と判定した。足趾把持力は,足趾筋力測定器(竹井機器工業,T.K.K.3364)を用いて股関節,膝関節90度屈曲座位にて左右各2回計測し,その最大値を用いた。新体力テストの結果は,奈良県教育委員会が管理する完全匿名化データを使用した。統計解析は全て対応のないt検定を用いた。まず対象者の左右各足において浮き趾群と正常群に群分けし,足趾把持力を左右別々に比較した。次に,左右両方の足を合わせた場合の浮き趾群(左右の趾の中で一本でも浮き趾がある群)と正常群に群分けし,反復横跳び,50m走,立ち幅跳びの結果を比較した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
解析対象者635名のうち,浮き趾群に該当したのは,右足で253名(39.8%),左足で259名(40.8%)であった。足趾把持力は左右ともに正常群に比べ,浮き趾群が有意に低かった(右足:浮き趾群:13.1±3.7kg,正常群:13.7±4.2kg,p=0.040;左足:浮き趾群:12.6±3.7kg,正常群:13.4±4.0kg,p=0.011)。また,左右合わせた場合で浮き趾群に該当したのは376名(59.2%)であったが,浮き趾の有無による新体力テストの3項目の結果に有意な差は認められなかった(反復横跳び:p=0.29,50m走:p=0.87,立ち幅跳び:p=0.55)。
【結論】
本研究の結果,小学校4~6年生において浮き趾がある側の足趾把持力が低いこと,浮き趾の有無によって運動能力に差がないことが明らかになった。本研究は横断研究であるため因果関係は不明だが,浮き趾という現象自体が運動能力に影響を与えるのではなく,足趾把持力の低下に影響し,足趾把持力が関連する運動能力の低下につながる可能性が示された。一方で,新体力テストはスポーツ活動の有無や足部以外の運動機能も結果に影響するため,今後は様々な要因を含めた調査によって,浮き趾がどのような問題を引き起こすのか,そして浮き趾の原因を検証する必要がある。