[P-MT-13-2] 股関節疾患患者の歩行立脚初期時の骨盤・大腿セグメントパワーと筋活動特性
Keywords:セグメントトルクパワー, 歩行, wavelet周波数解析
【目的】
我々の研究グループは,これまで変形性股関節疾患(OA)患者の跛行に関する研究として,運動力学的視点から,骨盤帯と大腿骨のセグメントトルクパワーを算出し,両パワー値の極性をみることで,力学的エネルギーの流れを検討する研究を行ってきた。そして,健常者との比較において,骨盤帯と大腿骨でのエネルギーの流れが異なる事を昨年の同学会で報告した。今回は,さらに表面筋電図(EMG)を加え検討した。
【対象】
対象は健常成人(健常者)1名(女性,年齢:45歳,身長:162.0 cm,体重:58 kg)及び,両側OA患者1名(女性,年齢:49歳,身長:157.0 cm,体重:59 kg)。日整会点数は,疼痛20点,可動域(屈曲:11点,外転:4点),歩行能力15点,日常生活動作18点であった。病期分類は両側進行期レベルであった。
【方法】
計測はカメラ10台を用いた三次元動作解析装置Vicon MX-T40S(Vicon Motion Systems社製)と6枚の床反力計(AMTI社製)を用いた。直径9mmの反射マーカーを使用し身体33カ所に貼付した。得られたマーカ座標から8剛体リンクモデルを作成した。次に各セグメントのトルクパワーを算出し,歩行周期が100%となるよう正規化した。解析側は右下肢とし,床反力垂直成分が増大する荷重応答期(歩行周期0%~12%)におけるセグメントトルクパワーの平均値を算出した。次にEMG計測においてはTeleMyo DTS(Noraxon社製)を使用し,被検筋は中殿筋とした。電極貼付部位は腸骨稜と大転子を結んだ中点とし,十分な前処理後に電極間中心距離3.0cmで貼付した。また,フットスイッチを用いて1歩行周期を同定しながら計測を行った。得られたデータは,MATLAB R2015(Mathworks社製)を用いて連続wavelet変換(Gabor関数使用)を用いた時間周波数解析を行った。解析の周波数帯域は12.5~200Hzとした。解析の時間幅は0.05秒間隔で平均周波数(Mean power frequency:MPF)を算出した。そして,踵接地直後からのMPFの変化量を算出した。
【結果】
1.セグメントトルクパワー(w/kg)
健常者の場合,骨盤,大腿セグメントの平均トルクパワーは,それぞれ-0.11,0.001であった。OA患者の場合,それぞれ-0.14,-0.28であった。
2.MPF変化量(Hz)
健常者の場合,踵接地直後から歩行周期10%の間にMPFは15Hzの上昇が認められた。OA患者の場合,逆に16Hzの減少が認められた。
【考察及び結語】
健常者とOA患者の大腿セグメントパワーを比較すると,OA患者の方が,パワー値が大きい結果となった。これは,健常者に比べ大腿部の回転運動が大きい(不安定性)を示すものであり,股関節不安定性は大腿部に起因する可能性を示唆するものである。またMPFの上昇は,tye2線維の活動増加が報告されており,大腿部の不安定性が,type2線維の活動性低下にも影響している可能性が示唆された。
本研究の一部は,日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究C課題番号25350655)の採択を受けて実施した。
我々の研究グループは,これまで変形性股関節疾患(OA)患者の跛行に関する研究として,運動力学的視点から,骨盤帯と大腿骨のセグメントトルクパワーを算出し,両パワー値の極性をみることで,力学的エネルギーの流れを検討する研究を行ってきた。そして,健常者との比較において,骨盤帯と大腿骨でのエネルギーの流れが異なる事を昨年の同学会で報告した。今回は,さらに表面筋電図(EMG)を加え検討した。
【対象】
対象は健常成人(健常者)1名(女性,年齢:45歳,身長:162.0 cm,体重:58 kg)及び,両側OA患者1名(女性,年齢:49歳,身長:157.0 cm,体重:59 kg)。日整会点数は,疼痛20点,可動域(屈曲:11点,外転:4点),歩行能力15点,日常生活動作18点であった。病期分類は両側進行期レベルであった。
【方法】
計測はカメラ10台を用いた三次元動作解析装置Vicon MX-T40S(Vicon Motion Systems社製)と6枚の床反力計(AMTI社製)を用いた。直径9mmの反射マーカーを使用し身体33カ所に貼付した。得られたマーカ座標から8剛体リンクモデルを作成した。次に各セグメントのトルクパワーを算出し,歩行周期が100%となるよう正規化した。解析側は右下肢とし,床反力垂直成分が増大する荷重応答期(歩行周期0%~12%)におけるセグメントトルクパワーの平均値を算出した。次にEMG計測においてはTeleMyo DTS(Noraxon社製)を使用し,被検筋は中殿筋とした。電極貼付部位は腸骨稜と大転子を結んだ中点とし,十分な前処理後に電極間中心距離3.0cmで貼付した。また,フットスイッチを用いて1歩行周期を同定しながら計測を行った。得られたデータは,MATLAB R2015(Mathworks社製)を用いて連続wavelet変換(Gabor関数使用)を用いた時間周波数解析を行った。解析の周波数帯域は12.5~200Hzとした。解析の時間幅は0.05秒間隔で平均周波数(Mean power frequency:MPF)を算出した。そして,踵接地直後からのMPFの変化量を算出した。
【結果】
1.セグメントトルクパワー(w/kg)
健常者の場合,骨盤,大腿セグメントの平均トルクパワーは,それぞれ-0.11,0.001であった。OA患者の場合,それぞれ-0.14,-0.28であった。
2.MPF変化量(Hz)
健常者の場合,踵接地直後から歩行周期10%の間にMPFは15Hzの上昇が認められた。OA患者の場合,逆に16Hzの減少が認められた。
【考察及び結語】
健常者とOA患者の大腿セグメントパワーを比較すると,OA患者の方が,パワー値が大きい結果となった。これは,健常者に比べ大腿部の回転運動が大きい(不安定性)を示すものであり,股関節不安定性は大腿部に起因する可能性を示唆するものである。またMPFの上昇は,tye2線維の活動増加が報告されており,大腿部の不安定性が,type2線維の活動性低下にも影響している可能性が示唆された。
本研究の一部は,日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究C課題番号25350655)の採択を受けて実施した。