第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P13

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-13-5] 高齢入院患者の歩行自立度と身体能力認識の誤差について

~転倒受傷した運動器疾患患者を対象として~

久住治彦, 原泰裕, 半沢嘉基, 大友将男, 宮負ちなみ, 岩佐健示, 市川健太, 西郡亨 (医療法人社団愛友会津田沼中央総合病院リハビリテーション科)

Keywords:転倒, 身体能力認識, 歩行自立度

【はじめに,目的】

高齢者の転倒の要因として,内的要因(障害物をまたげるかの判断等)が注目され,自身の身体能力と身体能力認識の誤差が大きいほど,強い転倒リスクになると報告されている。転倒受傷により入院に至った高齢者では,入院生活の少ない活動量を手掛かりに,急激に低下した身体能力を適切に認識することは難しい課題であり,身体能力の低下を認知できるだけの身体活動が不足していると考える。以上から,身体活動量と身体能力認識に関する要因を分析する事は,退院後の転倒予防策を講じる上で重要と考える。そこで本研究では,入院生活中の活動量の一要因として歩行自立度に着目し,歩行自立群・非自立群の身体能力認識の誤差を比較する事を研究目的とした。


【方法】

対象はH27.7.11~H27.10.7に転倒によりA病院へ入院となった65歳以上の運動器疾患を有する入院高齢患者で,①リハビリテーションを処方,②改訂 長谷川式簡易知能評価スケール21点以上,③脳血管疾患の既往が無い,④Functional reach test(以下FRT)が介助無しで測定可能の4要件を満たす9名とした。情報収集として,主病名・年齢・歩行自立度の3項目を調査した。身体能力認識の誤差はFRT実測値と予測値との差の絶対値を使用した。予測値の測定には予行練習を行わず,検査者のデモンストレーションにて説明を実施し,可能な限り前方にリーチした際に届くと予測される位置を回答させた。測定順序は予測・実測の順で行った。対象者を歩行自立群(FIM6点以上)・非自立群(FIM5点以下)に群分けし,各群のFRT実測値と予測値の誤差を比較した。統計学的手法は対応のないt検定を用い,解析にはR2.8.1を使用した(有意水準5%)。


【結果】

対象者9名のうち,歩行自立群4名・非自立群5名であった。FRTの実測値は自立群18.4±7.6cm,非自立群10.7±3.3cmであり,自立群において有意に大きかった(p<0.05)。FRT実測値と予測値の誤差は自立群6.3±5.7cm,非自立群1.8±2.2cmと2群で有意差はなかった(p=0.06)。


【結論】

健常高齢者を対象とした先行研究では,身体能力認識の誤差は6.5cmを境として,良好に転倒の有無を判別する事が可能と報告している。我々の仮説では入院中の活動量に比例して,身体能力認識の誤差は軽減されると考えたが,非自立群(1.8cm)よりも自立群(6.3cm)の平均値がそれに近い値となった。また,FRTでは自立群が有意に大きい結果となり,歩行自立群は転倒による身体能力の低下,リハビリによる身体能力の向上と短期間における身体能力の変化を適切に認知できず,活動量増加にあわせて身体能力認識の誤差が大きくなる可能性が示唆された。研究意義として転倒受傷した高齢入院患者の身体能力認識と歩行自立度を比較した報告は少なく,退院後の転倒予防の一助になると考えられる。