[P-MT-14-5] 地域高齢女性の歩行開始時におけるCOPの移動と脊柱アライメントの関連性
Keywords:高齢者, 姿勢, 足圧中心
【はじめに,目的】
歩行開始時は,足圧中心(以下,COP)が振り出す側の足部後方へ瞬間的に移動する現象(以下,逆応答現象)によって,両脚支持から単脚支持への切り替え,および前方への推進を行っているとされる。
しかし,高齢者は歩行開始時におけるCOPの円滑な移動が困難になり,歩行開始時の1歩目が出にくくなることが示唆されている。また,加齢による姿勢変化が,歩行能力に影響を与えることが報告されており,高齢者の姿勢は歩行開始時のCOP移動にも関与することが予想される。しかし,本邦では高齢者が歩行開始する際のCOP移動と姿勢変化の関連性についての報告は少ない。本研究では,高齢女性の姿勢と歩行開始時にみられるCOP移動との関連性について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は地域在住の高齢女性33名(年齢72.0±6.7歳,身長152.4±7.6cm,体重52.8±10.3kg),日常生活動作が自立しており,過去1年以内に転倒歴のない者とした。
被験者は,目線の高さで2m前方を見ながら静止立位をとり,足部の位置を両側内果間の幅を10cmに統一した。姿勢の評価として,スパイナルマウス(Idiag AG)を用いてC7からS3までの脊柱アライメントを計測し,Th1とS3を結んだ線の傾斜角(脊柱傾斜角),胸椎後彎角,腰椎前彎角,仙骨傾斜角を算出した。重心動揺計(ZEBRIS)による評価は,10秒の静止立位をとった後に,右足から踏み出して前方へ2m歩行する条件とし,サンプリング周波数100Hzで計測を行った。計測によって得られたデータより,逆応答現象時の前後方向および,左右方向におけるCOP移動の最大振幅,COP移動時の平均速度を算出した。
統計処理として,脊柱アライメントとCOP移動についての値に対してPearsonの積率相関分析を行った(p<0.05)。統計ソフトはIBM SPSS 19を使用した。
【結果】
静止立位時の脊柱アライメントは脊柱傾斜角(1.9±4.4°),胸椎後彎角(42.5±7.7°),腰椎前彎角(-9.9±12.4°),仙骨傾斜角(0.8±8.1°)であった。また,逆応答現象時の前後方向COP最大振幅(20.3±9.4mm),左右方向COP最大振幅(22.7±8.8mm),後方向平均速度(14.0±6.8mm/s),右方向平均速度(16.4±6.5mm/s)であった。
逆応答現象時の仙骨傾斜角に対して,前後方向COP最大振幅(r=0.475),後方向平均速度(r=0.651)で,それぞれ正の相関がみられた。脊柱傾斜角に対して前後方向COP最大振幅(r=0.519),後方向平均速度(r=0.770)で,それぞれ正の相関がみられた。
【結論】
仙骨傾斜角および脊柱傾斜角の変化が,歩行開始時の前後方向COP移動距離と後方へのCOP移動速度に影響を与える可能性が考えられた。歩行開始時の円滑なCOP移動を行う上で,姿勢変化の影響を考慮する必要性が示唆された。
歩行開始時は,足圧中心(以下,COP)が振り出す側の足部後方へ瞬間的に移動する現象(以下,逆応答現象)によって,両脚支持から単脚支持への切り替え,および前方への推進を行っているとされる。
しかし,高齢者は歩行開始時におけるCOPの円滑な移動が困難になり,歩行開始時の1歩目が出にくくなることが示唆されている。また,加齢による姿勢変化が,歩行能力に影響を与えることが報告されており,高齢者の姿勢は歩行開始時のCOP移動にも関与することが予想される。しかし,本邦では高齢者が歩行開始する際のCOP移動と姿勢変化の関連性についての報告は少ない。本研究では,高齢女性の姿勢と歩行開始時にみられるCOP移動との関連性について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は地域在住の高齢女性33名(年齢72.0±6.7歳,身長152.4±7.6cm,体重52.8±10.3kg),日常生活動作が自立しており,過去1年以内に転倒歴のない者とした。
被験者は,目線の高さで2m前方を見ながら静止立位をとり,足部の位置を両側内果間の幅を10cmに統一した。姿勢の評価として,スパイナルマウス(Idiag AG)を用いてC7からS3までの脊柱アライメントを計測し,Th1とS3を結んだ線の傾斜角(脊柱傾斜角),胸椎後彎角,腰椎前彎角,仙骨傾斜角を算出した。重心動揺計(ZEBRIS)による評価は,10秒の静止立位をとった後に,右足から踏み出して前方へ2m歩行する条件とし,サンプリング周波数100Hzで計測を行った。計測によって得られたデータより,逆応答現象時の前後方向および,左右方向におけるCOP移動の最大振幅,COP移動時の平均速度を算出した。
統計処理として,脊柱アライメントとCOP移動についての値に対してPearsonの積率相関分析を行った(p<0.05)。統計ソフトはIBM SPSS 19を使用した。
【結果】
静止立位時の脊柱アライメントは脊柱傾斜角(1.9±4.4°),胸椎後彎角(42.5±7.7°),腰椎前彎角(-9.9±12.4°),仙骨傾斜角(0.8±8.1°)であった。また,逆応答現象時の前後方向COP最大振幅(20.3±9.4mm),左右方向COP最大振幅(22.7±8.8mm),後方向平均速度(14.0±6.8mm/s),右方向平均速度(16.4±6.5mm/s)であった。
逆応答現象時の仙骨傾斜角に対して,前後方向COP最大振幅(r=0.475),後方向平均速度(r=0.651)で,それぞれ正の相関がみられた。脊柱傾斜角に対して前後方向COP最大振幅(r=0.519),後方向平均速度(r=0.770)で,それぞれ正の相関がみられた。
【結論】
仙骨傾斜角および脊柱傾斜角の変化が,歩行開始時の前後方向COP移動距離と後方へのCOP移動速度に影響を与える可能性が考えられた。歩行開始時の円滑なCOP移動を行う上で,姿勢変化の影響を考慮する必要性が示唆された。