第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P15

2016年5月28日(土) 11:40 〜 12:40 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-15-2] 脊椎圧迫骨折における圧潰の経時的変化と影響因子の検討

中村裕輔1, 土井知哉1, 大渕康平1, 小川洋史1, 田中久友1, 西芳徳1, 鏑木誠2 (1.西整形外科医院, 2.熊本保健科学大学)

キーワード:脊椎圧迫骨折, 圧潰, リハビリテーション

【はじめに,目的】

先行研究では椎体圧潰の要因は検討されているが,経時的変化に関するデータは少ない。そこで今回入院中の圧潰の経時的変化,またそれに及ぼす影響因子を入院時に得られるデータから検討したのでここに報告する。

【方法】

2011年から2015年までの当院脊椎圧迫骨折入院患者160例中,新規の1椎体の骨折かつ10週の経過を評価できた65例65椎体(平均年齢79.9±10.6歳,男性15名,女性50名)を対象とした。当院では入院患者に早期から軟性コルセットを作成し,理学療法士の動作指導のもと早期離床を行っている。圧潰の進行は各週のX線で前・中・後の椎体の高さを測定し10週間の比較を行った。統計解析方法は,まず,前・中・後圧潰の進行率について一元配置分散分析を行い,Tukey法による多重比較法を用いて比較した。その後,1週目と比較して最初に有意に圧潰が進行した週の進行率を目的変数とし,MRI分類,受傷起点,骨量,後彎角,進行率分類(進行率の低い順に第3腰椎から第5腰椎,第8胸椎から第10胸椎,第11胸椎から第2腰椎に分類し,順番に1から3のダミー変数を振り分けた)を説明変数として変数増加法による重回帰分析を行った。有意水準は,0.05%未満とした。

【結果】

進行率の一元配置分散分析について,前・中・後圧潰のすべてに有意差が認められた。また,前・中・後圧潰のすべてのTukey法による多重比較法において,1週目と比較して4週目が最初に有意に圧潰が進行した。

そこで4週目の進行率を目的変数として重回帰分析を行った結果,前・中・後圧潰すべての重回帰式の当てはまりは有意であった(p<0.05)が,前・中・後圧潰それぞれのR2は0.14,0.26,0.13と低く,重回帰式を用いた予測は困難であった。しかし,標準化偏回帰係数による影響度を与える変数は,前・中・後圧潰のすべてにおいて受傷起点・MRI分類・骨量が選択され,進行率分類は前・中圧潰,後彎角は中圧潰にて選択された。

【結論】

脊椎圧迫骨折入院患者において椎体の圧潰は4週目より優位に圧潰が進行しやすい傾向にあり,10週目においても圧潰の進行がみられる症例も観察された。圧潰のタイプを問わず影響を与える因子としては受傷起点・MRI分類・骨量が挙げられた。また進行率分類からみると前・中の圧潰が多く,後彎角は中圧潰が認められると増大する傾向にあった。圧潰が進行することで転倒のリスクや偽関節に至るケースも増加する報告もあるため,脊椎圧迫骨折後患者は,圧潰が進行しやすい時期,因子をチームスタッフで把握し未然に防げるように患者個々に合わせた治療を組み立てることが大切だと考えられる。