第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P15

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-15-3] 脊椎圧迫骨折の発症初期の身体活動量が腰背部痛やADLの改善におよぼす影響

片岡英樹1,2, 池本竜則3, 吉村彩菜1, 後藤響1,2, 渋谷美帆子1, 山下潤一郎1, 坂本淳哉4, 中野治郎4, 沖田実2 (1.長崎記念病院リハビリテーション部, 2.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科リハビリテーション科学講座運動障害リハビリテーション学分野, 3.愛知医科大学運動療育センター, 4.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科理学・作業療法学講座理学療法学分野)

Keywords:脊椎圧迫骨折, 活動量, ADL

【はじめに,目的】高齢者に多い脊椎圧迫骨折(vertebral compression fracture;以下,VCF)は,急性腰背部痛を主訴としADLを低下させる脆弱性骨折の一つである。VCFの発症後は保存療法が施行されることが多く一定期間の安静後,体幹装具を装着して離床を図り,リハビリテーションを進めるのが一般的である。一方,明らかな組織損傷を認めない非特異的急性腰背部痛において,発症初期にベッド上安静とするよりも普段の活動を維持する方が痛みや運動機能面の改善が得られやすいとしたエビデンスが示されている(Cochrane Database Syst Rev. 2010)。したがって,VCF患者においても発症初期に活動量を高く保つ方が,腰背部痛やADLの改善に好影響をもたらすと考えられるが,この点に関して検討した報告はない。そこで,本研究では新鮮VCFを呈した高齢患者を対象に,発症初期の活動量が腰背部痛やADLの改善に与える影響を検討した。

【方法】対象は新鮮VCFにて当院に入院となり,保存療法が施行された患者の内,除外基準を満たし,かつ以下の方法による活動量の計測が可能であった43例(81.6±7.5歳)とした。活動量は単軸活動量計(Lifecorder GS,Suzuken)を装着して計測し,入院後一週間の1~3Metsの一日平均活動時間(早期活動時間)を算出した。また,安静時・動作時の腰背部痛はverbal rating scale(VRS)を用い,入院時(baseline;BL),2週目(2w),4週目(4w)に評価し,VRS変化量を算出した。具体的には,「(BL~2wのVRS変化量)=(2wのVRS)-(BLのVRS)」であり,2w~4w,BL~4wについても同様に算出した。さらに,ADLはfunctional independence measureの運動項目(mFIM,満点:91点)を用いてBL,2w,4wに評価し,ADLの改善の指標にmFIM改善率を用いた(Koh GC-H, et al., 2013)。具体的には,「(BL~2wのmFIM改善率)=(2wのmFIM得点-BLのmFIM得点)/(91-BLのmFIM得点)×100」であり,2w~4w,BL~4wについても同様に算出した。そして,BL~2w,2w~4w,BL~4wの腰背部痛の変化量ならびにmFIM改善率と早期活動時間との関連性をSpearmanの順位相関係数にて検討した。

【結果】安静時VRS変化量はBL~2wで早期活動時間と弱い負の相関を認め(r=-0.315,p=0.04),2w~4wならびにBL~4wでは有意な相関は認められなかった。一方,動作時VRS変化量は,各期間において早期活動時間との有意な相関は認められなかった。次に,mFIM改善率はBL~2w(r=0.436,p=0.004),BL~4w(r=0.467,p=0.003)で早期活動時間との有意な正の相関を認め,2w~4wでは有意な相関を認めなかった。

【結論】VRS変化量の結果からVCFの発症初期の活動量が高いほうが安静時の腰背部痛が早期に軽減しやすいことが示唆された。また,mFIM改善率の結果からVCFの発症初期の活動量が高いほうが,ADLが早期に改善し,これが長期的にみたADLの改善にも影響しているものと考えられた。以上のことから,VCFのような明らかな組織損傷を認める場合でも発症初期の活動量を高く保つことは腰背部痛やADLの改善における重要ポイントになると推察される。