[P-MT-15-4] 骨粗鬆症リエゾンサービスにおける椎体骨折患者に対する理学療法の検討
キーワード:骨粗鬆症リエゾンサービス, 椎体骨折, ロコモティブシンドローム
【はじめに,目的】
当院では2015年4月より骨粗鬆症リエゾンサービス(以下OLS)を開始した。携わる職種は医師,看護師,理学療法士,作業療法士のみであるが,今後,多職種による協働ができるよう模索している段階である。その中で,骨粗鬆症の治療を継続している患者に対して理学療法を実施し,機能に合わせたプロトコールを継続するシステムを導入したので若干の考察を加え報告する。
【方法】
2015年4月~9月までに,外来にてOLSを受けることに同意された椎体骨折患者を対象とした。対象は15名で,年齢80±4.6才,男性2名,女性13名であり,全例,発症から6ヶ月以上経過していた。体格指数(BMI)は23.2±3.1kg/m2でやせ型ではないが,FOSTAはいずれも高リスクを呈しており-5.8±1.3であった。ロコモ25では35.9±25.5点で要介護のリスクが高い重症度を示した。評価項目は身体機能面として形態測定とパーフォーマンステストを実施し,また,ADL,精神面としての評価を加え,それらに基づいて理学療法を実施した。
実施した運動療法は,脊柱の可動性を出し,体幹の安定性を高め,機能に合わせて支持基底面は広いものから段階的に進めた。プロトコールは脊柱アライメントに応じて選択し,歩行へと結びつけることで,活動性に改善が図られるように組み立てた。
【結果】
実施頻度は平均月1~2回であり,調査期間中に転倒による骨折が1件あった。アライメントは,Wall-Occiput distanceで胸腰椎部円背が上位胸椎円背より大きく平均4.2cmの差を生じた。歩行能力は比較的良好で,10m歩行速度9.7±3.8秒,Timed Up and Go Testは11.3±3.7秒だった。バランス能力として開眼片脚立位保持は右13.1±25.8秒,左7.1±15.1秒と左右差を生じた。Functional Reach Testは25±5.7cm,2ステップ値は0.9±0.2であった。Functional Independence Measure(以下FIM)は121.3±11.1点,Mini Mental State Examinationは26.6±3.3点と,ADLは自立されているが認知症に対する注意が必要であった。また,Fall Efficacy ScaleとFIMの間に有意な相関がみられた(スピアマン同順位補正相関係数rs=0.57,危険率5%)。
脊柱可動性改善として,特に体幹伸展位の維持拡大を図った。患者に合わせて肢位を選択し,体幹筋力の強化を行った。座位での体幹伸展運動は腰椎前彎や骨盤後傾といった代償に配慮した。脊柱アライメントは椎体骨折による骨性の変形はあるとしても,筋性に姿勢をコントロールしている要素は大きく,運動療法前後で改善する傾向にあった。
【結論】
椎体骨折患者は,骨折の部位,椎体数等によりアライメントも変わり,加えて認知症の合併など心身機能は個人差が大きい。地域的にはロコモティブシンドロームに対して集団検診や運動教室が広まり効果が期待できるが,理学療法は心身機能によって個々に処方されることが望ましい。今後,その効果を判定し,心身機能の経年的な変化を追うことが課題である。
当院では2015年4月より骨粗鬆症リエゾンサービス(以下OLS)を開始した。携わる職種は医師,看護師,理学療法士,作業療法士のみであるが,今後,多職種による協働ができるよう模索している段階である。その中で,骨粗鬆症の治療を継続している患者に対して理学療法を実施し,機能に合わせたプロトコールを継続するシステムを導入したので若干の考察を加え報告する。
【方法】
2015年4月~9月までに,外来にてOLSを受けることに同意された椎体骨折患者を対象とした。対象は15名で,年齢80±4.6才,男性2名,女性13名であり,全例,発症から6ヶ月以上経過していた。体格指数(BMI)は23.2±3.1kg/m2でやせ型ではないが,FOSTAはいずれも高リスクを呈しており-5.8±1.3であった。ロコモ25では35.9±25.5点で要介護のリスクが高い重症度を示した。評価項目は身体機能面として形態測定とパーフォーマンステストを実施し,また,ADL,精神面としての評価を加え,それらに基づいて理学療法を実施した。
実施した運動療法は,脊柱の可動性を出し,体幹の安定性を高め,機能に合わせて支持基底面は広いものから段階的に進めた。プロトコールは脊柱アライメントに応じて選択し,歩行へと結びつけることで,活動性に改善が図られるように組み立てた。
【結果】
実施頻度は平均月1~2回であり,調査期間中に転倒による骨折が1件あった。アライメントは,Wall-Occiput distanceで胸腰椎部円背が上位胸椎円背より大きく平均4.2cmの差を生じた。歩行能力は比較的良好で,10m歩行速度9.7±3.8秒,Timed Up and Go Testは11.3±3.7秒だった。バランス能力として開眼片脚立位保持は右13.1±25.8秒,左7.1±15.1秒と左右差を生じた。Functional Reach Testは25±5.7cm,2ステップ値は0.9±0.2であった。Functional Independence Measure(以下FIM)は121.3±11.1点,Mini Mental State Examinationは26.6±3.3点と,ADLは自立されているが認知症に対する注意が必要であった。また,Fall Efficacy ScaleとFIMの間に有意な相関がみられた(スピアマン同順位補正相関係数rs=0.57,危険率5%)。
脊柱可動性改善として,特に体幹伸展位の維持拡大を図った。患者に合わせて肢位を選択し,体幹筋力の強化を行った。座位での体幹伸展運動は腰椎前彎や骨盤後傾といった代償に配慮した。脊柱アライメントは椎体骨折による骨性の変形はあるとしても,筋性に姿勢をコントロールしている要素は大きく,運動療法前後で改善する傾向にあった。
【結論】
椎体骨折患者は,骨折の部位,椎体数等によりアライメントも変わり,加えて認知症の合併など心身機能は個人差が大きい。地域的にはロコモティブシンドロームに対して集団検診や運動教室が広まり効果が期待できるが,理学療法は心身機能によって個々に処方されることが望ましい。今後,その効果を判定し,心身機能の経年的な変化を追うことが課題である。