[P-MT-16-1] 当院における人工股関節全置換術(THA)術後2週クリニカルパスにおける自宅退院の可否に影響する因子の検討
―歩行能力と主観的評価に着目して―
Keywords:THA, 転帰先, 主観的評価
【はじめに,目的】
近年,変形性股関節症(以下OA)に対する人工股関節置換術(以下THA)の在院期間は短縮し,当院でも術後2週間以内での退院,転院とするクリニカルパスが運用されている。しかし,最適な転帰先の判断を早期から行うことは容易でなく,その科学的根拠も十不十分である。THA術後の在院日数に影響を及ぼす因子として,杖歩行開始日など歩行能力の関連が報告されているが,特定の在院期間での転帰先の選択に関わる因子の検討も,パスを運用する各施設においては必要である。さらに,生活環境の異なる各患者において,機能的・能力的評価のみでは退院可否の判断は難しく,近年注目されている患者立脚型の評価も重要と考える。
本研究の目的は,約2週間の在院期間で自宅退院可能な群(自宅群)とリハビリ目的で転院を行った群(転院群)における基本的属性,術前の歩行能力や主観的患者満足度,術後経過などを比較し,転帰先を判断する一助とすることである。
【方法】
対象は2014年8月~2015年9月にOAに対し片側初回THA(全例前側方侵入)を施行し,理学療法を実施した35例(71.2±11.5歳,女性32例,男性3例)とし,後方視的に診療記錄を調査し自宅群19例,転院群16例の2群に分類した。検討項目:下記の1)-3)の各項目を2群間で比較した。1)基本的属性:性別,年齢,経過に影響を与えた合併症・既往の有無,術前歩行能力(補助具使用有無),術後他疾患発症有無,退院時歩行能力(T-cane獲得有無)。2)術前測定項目:TUG,10m歩行速度,JHEQ満足度及び各スコア。3)術後PTの進捗状況:手術~離床,~歩行練習開始,~病棟歩行開始,~T-cane獲得までの各期間。統計学的検討には,t-test,χ2検定,Kruskal-Wallis検定を使用し,危険率5%未満を有意とした。
【結果】(転院群,退院群の順に表記)
1)術前歩行能力(p<0.05)及び退院時歩行能力(p<0.01)においてのみ有意差が認められ,自宅群で歩行能力が高かった。2)10m歩行速度(20.3,11.9:p<0.05),TUG(19.0,11.9:p<0.05),JHEQ満足度(90.1,74.4:p<0.05),動作(2.1,6.4:p<0.01)においてのみ有意差が認められた。3)病棟歩行開始(7.0日,3.6日:p<0.01),T字杖歩行獲得(16.9日,6.8日:p<0.01)でのみ有意差を認めた。
【結論】
10m歩行やTUGから自宅群は術前歩行能力が高く,術後の進捗状況においても病棟歩行開始日数やT-cane自立日数が早期で,THA後の在院日数にT-cane開始日が影響するとの過去の報告を支持する結果となった。また,自宅群で術前のJHEQ満足度が高く,動作スコアも良好という結果となり,術前歩行能力や身体機能が良好でも生活環境によりADLが制限されるケースを考慮すると,満足度などの主観的評価も有益な情報になると思われる。今後は,術前身体機能にも注目して検討を進め,若年スタッフにも早期から適切な転帰先を判断する有益な情報を還元できるよう取り組みたい。
近年,変形性股関節症(以下OA)に対する人工股関節置換術(以下THA)の在院期間は短縮し,当院でも術後2週間以内での退院,転院とするクリニカルパスが運用されている。しかし,最適な転帰先の判断を早期から行うことは容易でなく,その科学的根拠も十不十分である。THA術後の在院日数に影響を及ぼす因子として,杖歩行開始日など歩行能力の関連が報告されているが,特定の在院期間での転帰先の選択に関わる因子の検討も,パスを運用する各施設においては必要である。さらに,生活環境の異なる各患者において,機能的・能力的評価のみでは退院可否の判断は難しく,近年注目されている患者立脚型の評価も重要と考える。
本研究の目的は,約2週間の在院期間で自宅退院可能な群(自宅群)とリハビリ目的で転院を行った群(転院群)における基本的属性,術前の歩行能力や主観的患者満足度,術後経過などを比較し,転帰先を判断する一助とすることである。
【方法】
対象は2014年8月~2015年9月にOAに対し片側初回THA(全例前側方侵入)を施行し,理学療法を実施した35例(71.2±11.5歳,女性32例,男性3例)とし,後方視的に診療記錄を調査し自宅群19例,転院群16例の2群に分類した。検討項目:下記の1)-3)の各項目を2群間で比較した。1)基本的属性:性別,年齢,経過に影響を与えた合併症・既往の有無,術前歩行能力(補助具使用有無),術後他疾患発症有無,退院時歩行能力(T-cane獲得有無)。2)術前測定項目:TUG,10m歩行速度,JHEQ満足度及び各スコア。3)術後PTの進捗状況:手術~離床,~歩行練習開始,~病棟歩行開始,~T-cane獲得までの各期間。統計学的検討には,t-test,χ2検定,Kruskal-Wallis検定を使用し,危険率5%未満を有意とした。
【結果】(転院群,退院群の順に表記)
1)術前歩行能力(p<0.05)及び退院時歩行能力(p<0.01)においてのみ有意差が認められ,自宅群で歩行能力が高かった。2)10m歩行速度(20.3,11.9:p<0.05),TUG(19.0,11.9:p<0.05),JHEQ満足度(90.1,74.4:p<0.05),動作(2.1,6.4:p<0.01)においてのみ有意差が認められた。3)病棟歩行開始(7.0日,3.6日:p<0.01),T字杖歩行獲得(16.9日,6.8日:p<0.01)でのみ有意差を認めた。
【結論】
10m歩行やTUGから自宅群は術前歩行能力が高く,術後の進捗状況においても病棟歩行開始日数やT-cane自立日数が早期で,THA後の在院日数にT-cane開始日が影響するとの過去の報告を支持する結果となった。また,自宅群で術前のJHEQ満足度が高く,動作スコアも良好という結果となり,術前歩行能力や身体機能が良好でも生活環境によりADLが制限されるケースを考慮すると,満足度などの主観的評価も有益な情報になると思われる。今後は,術前身体機能にも注目して検討を進め,若年スタッフにも早期から適切な転帰先を判断する有益な情報を還元できるよう取り組みたい。