第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P16

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-16-2] 片側人工股関節全置換術後3週時の蹲踞動作獲得因子について

妹尾賢和, 平尾利行, 石垣直輝, 黒木聡 (医療法人社団紺整会船橋整形外科病院)

Keywords:DAA-THA, 蹲踞動作, 目標設定

【はじめに,目的】

当院では前方進入法人工股関節全置換術(DAA-THA)を施行しており,筋温存手術のため禁忌肢位が少なく,脱臼率も1%未満である。そのため,術後早期より多くの日常生活動作(ADL)の獲得が可能であり,当院では術後3週での蹲踞動作を許可しており,多くの症例で獲得が可能となっていることを経験する。しかし,蹲踞動作を獲得できない症例の要因は不明瞭である。本研究の目的は,THA術後3週時における蹲踞動作の実施率を調査し,更に蹲踞動作獲得に影響を及ぼす因子を明らかにすることである。

【方法】

2015年4月から8月に進行期,末期変形性股関節症を罹患し,初回片側THAを施行した71名(男性6名,女性65名)を対象とした。内訳は,年齢61.3(41-82)歳,身長157.1±7.2cm,体重56.4±8.3kgである。測定項目は,術後3週時の術側における股関節可動域(屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋),他動下肢伸展拳上角度(SLR),踵部臀部間距離(HBD),開排値(背臥位膝関節90°屈曲位で開排,腓骨頭から床への垂線の距離を棘果長で正規化),体重支持指数(WBI),蹲踞動作の可否である。本研究の蹲踞動作とは,股関節外転外旋位,足関節底屈位,両手は膝上,歩隔は両踵骨内側縁28cm以上のしゃがみ込み動作と定義し,坐骨部が膝関節裂隙より下にあれば獲得とした。統計学的処理は,目的変数を術後3週時の蹲踞動作獲得の可否,説明変数を術後3週での各測定項目とし,多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を用いて検討した。さらに,交絡因子として年齢,身長,体重を強制投入し,予測因子を検討した(p<0.05)。また,抽出された因子をROC曲線分析にて検討し,カットオフ値を算出した。なお,統計ソフトはR version 2.8.1を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

術後3週時の蹲踞動作獲得群58例(獲得率81.6%),非獲得群13例であった。多重ロジスティック回帰分析より,WBIと開排値が抽出された。オッズ比(下限-上限)は,WBIは1.15(1.06-1.26),開排値は0.86(0.75-0.99)であった(p<0.01)。それぞれのカットオフ値,感度,特異度,曲線下面積は,WBIでは36%,75%,79%,83%,開排値では0.24,64%,74%,71%であった。

【結論】

従来のTHAにおける報告では,しゃがみ込みや蹲踞動作の獲得に時間を要するという報告は散見されるが,当院が用いているDAA-THAにおける術後3週の蹲踞動作の獲得率は81.6%であった。DAA-THAは筋温存手術であるため,早期より積極的なリハビリテーションを展開可能であり,術後活動量の減少を最小限に抑えたことで高い術後3週蹲踞動作獲得率が得られたと考える。本研究より術後3週時のWBI36%以上,開排値0.24以下を術後早期リハビリテーションにおける目標とすることで,より高率な蹲踞動作獲得につながると考える。