[P-MT-16-4] 人工股関節全置換術後における外来リハビリテーション継続の必要性が高い症例の特徴
―退院後に生活動作満足度が向上する症例の分析から―
Keywords:患者満足度, 外来, 人工股関節全置換術
【はじめに,目的】
人工股関節全置換術(THA)後の入院期間は短縮傾向にあるが,医療費増大に伴い,退院後も外来リハを行う必要性が高い症例を見極める必要がある。当院では患者の希望や動作能力,生活背景を踏まえた上で外来リハの継続を判断しているが,基準は不明確である。本研究では,退院後の外来リハを実施し術後5か月にかけて患者満足度の向上が顕著であった症例の機能的特徴を明らかにし,外来リハ継続の必要性の高い症例を判断する際の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は本学附属4病院にて変股症の診断を受け,後方進入法の初回片側THAを施行し退院後外来リハを行った症例のうち,術後合併症・中枢性疾患の既往がある者を除外した159例(男性23例,女性136例,平均年齢64歳)とした。
評価時期は退院時と術後5か月とし,評価項目は基礎項目として,年齢,性別,BMI,入院期間,反対側の罹患の有無,身体機能項目として,術側及び非術側の外転トルク体重比(Nm/kg),歩行速度(m/s),5m歩行歩数(歩),股関節複合的可動性(踵引き寄せ距離),疼痛,生活動作満足度を測定した。外転トルクはHand-held Dynamometerを用いベルト固定法にて等尺性筋力を計測した。踵引き寄せ距離は,一側下肢を開排し踵が動いた移動距離を対側の内外果中央からASISの距離で除した値である。疼痛は,股関節部の疼痛をVisual Analogue Scale(mm)を用い,0(全く痛くない)~100(耐えられないほど痛い),満足度も0(最も不満足)~100(最も満足)にて自己記入式にて実施した。さらにTHA患者における17項目の生活動作問診票を用い,1(できない/していない)~5(楽にできる)各5段階の計85点で合計点を算出した。次に,退院時と術後5か月時の生活動作満足度の変化量を算出し,その三分位数を元に上位1/3を向上群,他の症例を通常群と設定し以下の統計処理を行った。統計解析では正規性を検定した上,全項目においてt検定あるいはMann-WhitneyのU検定にて群間の差を比較した。統計ソフトはSPSS(Ver22.0)を使用し,有意水準を5%とした。
【結果】
通常群は104例,向上群は55例であった。退院時に群間の差を認めた項目は,疼痛VAS(通常/向上群,25±22/35±24mm),問診票におけるトイレ動作,靴下着脱,歩行および合計点(54±12/50±11)であり,いずれも向上群が低値であった。5か月時に差を認めた項目は術側外転筋トルク(63±32/75±31Nm/kg),問診票における車の乗降動作,脱臼予防動作,合計点(67±13/70±12)で向上群が高値であった。
【結論】
退院時の疼痛の値が高く日常生活の基本動作に難渋している症例は,外来リハを実施することで満足度の向上が期待できると考える。5か月時には筋力が有意に高値となっており,退院後の改善と捉えられる。各患者の改善時期の違いを考慮しつつ,疼痛や日常生活能力を鑑み,退院後の外来リハの必要性を判断するのが望ましい。
人工股関節全置換術(THA)後の入院期間は短縮傾向にあるが,医療費増大に伴い,退院後も外来リハを行う必要性が高い症例を見極める必要がある。当院では患者の希望や動作能力,生活背景を踏まえた上で外来リハの継続を判断しているが,基準は不明確である。本研究では,退院後の外来リハを実施し術後5か月にかけて患者満足度の向上が顕著であった症例の機能的特徴を明らかにし,外来リハ継続の必要性の高い症例を判断する際の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は本学附属4病院にて変股症の診断を受け,後方進入法の初回片側THAを施行し退院後外来リハを行った症例のうち,術後合併症・中枢性疾患の既往がある者を除外した159例(男性23例,女性136例,平均年齢64歳)とした。
評価時期は退院時と術後5か月とし,評価項目は基礎項目として,年齢,性別,BMI,入院期間,反対側の罹患の有無,身体機能項目として,術側及び非術側の外転トルク体重比(Nm/kg),歩行速度(m/s),5m歩行歩数(歩),股関節複合的可動性(踵引き寄せ距離),疼痛,生活動作満足度を測定した。外転トルクはHand-held Dynamometerを用いベルト固定法にて等尺性筋力を計測した。踵引き寄せ距離は,一側下肢を開排し踵が動いた移動距離を対側の内外果中央からASISの距離で除した値である。疼痛は,股関節部の疼痛をVisual Analogue Scale(mm)を用い,0(全く痛くない)~100(耐えられないほど痛い),満足度も0(最も不満足)~100(最も満足)にて自己記入式にて実施した。さらにTHA患者における17項目の生活動作問診票を用い,1(できない/していない)~5(楽にできる)各5段階の計85点で合計点を算出した。次に,退院時と術後5か月時の生活動作満足度の変化量を算出し,その三分位数を元に上位1/3を向上群,他の症例を通常群と設定し以下の統計処理を行った。統計解析では正規性を検定した上,全項目においてt検定あるいはMann-WhitneyのU検定にて群間の差を比較した。統計ソフトはSPSS(Ver22.0)を使用し,有意水準を5%とした。
【結果】
通常群は104例,向上群は55例であった。退院時に群間の差を認めた項目は,疼痛VAS(通常/向上群,25±22/35±24mm),問診票におけるトイレ動作,靴下着脱,歩行および合計点(54±12/50±11)であり,いずれも向上群が低値であった。5か月時に差を認めた項目は術側外転筋トルク(63±32/75±31Nm/kg),問診票における車の乗降動作,脱臼予防動作,合計点(67±13/70±12)で向上群が高値であった。
【結論】
退院時の疼痛の値が高く日常生活の基本動作に難渋している症例は,外来リハを実施することで満足度の向上が期待できると考える。5か月時には筋力が有意に高値となっており,退院後の改善と捉えられる。各患者の改善時期の違いを考慮しつつ,疼痛や日常生活能力を鑑み,退院後の外来リハの必要性を判断するのが望ましい。