第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P17

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-17-2] 難治性凍結肩に対する超音波ガイド下腕神経叢ブロックによる非観血的授動術の臨床経過

大城竜樹1, 八木正義1, 朴基彦2 (1.やぎ整形外科クリニック, 2.ぱくペインクリニック)

Keywords:凍結肩, 超音波ガイド, 非観血的授動術

【はじめに,目的】

近年,難治性の凍結肩に対して超音波ガイド下C5・C6ブロック後に非観血的授動術(以下,徒手授動術)が行われており,良好な治療成績が報告されている。徒手授動術では関節包を断裂させ肩関節の可動域拡大と除痛を目的に行われている治療であるが,麻酔下で可動域が確保されていても麻酔覚醒後に可動域制限や疼痛の残存する症例も存在する。そのため理学療法に難渋する症例に対しては複数回の徒手授動術が必要となる場合もある。今回,難治性凍結肩に対する徒手授動術の臨床経過を報告するとともに,複数回の徒手授動術が必要となった症例の背景について調査を行った。

【方法】

対象は2013年4月から2015年4月の期間に,当院で難治性の凍結肩と診断され,ペインクリニックで徒手授動術を施行し,術後6ヶ月以上観察できた18例20肩(男性4肩・女性16肩・平均年齢52歳)とした。既往歴として糖尿病が2例にみられた。平均罹病期間は5.6か月であった。徒手授動術後の理学療法としては,週1~2回肩関節周囲筋の筋スパズムや柔軟性の改善,肩甲骨運動などの自主トレーニングを指導した。調査項目は,術前および最終観察時点での①自動拳上角度,②下垂位外旋角度,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績評価基準(以下,JOA)の③JOA疼痛,④JOA可動域,⑤JOA日常生活動作(以下,JOA日常生活)である。統計はt検定を行い,P<0.05以下を有意とした。

【結果】

全症例の臨床経過について自動拳上角度は術前90.3±34.2°,最終159.3±24.6°であった。下垂位外旋角度は術前11.0±14.3°,最終37.1±13.0°であった。JOA疼痛は,術前6.6±6.4,最終24.7±2.5点であった。JOA可動域は,術前10.9±4.7点,最終23.4±4.8点であった。JOA日常生活は,術前3.1±2.0点,最終9.0±5.1点と有意な改善を認めた。

20肩のうち1回の徒手授動術では十分な改善が得られず2回の徒手授動術を行った症例は8肩であった。1回の徒手授動術を行った症例(1回群:12肩)と,2回の徒手授動術を行った症例(2回群:8肩)との患者の背景を比較すると,性別や罹病期間には差を認めなかったが,2回群には2例の糖尿病の合併を認めた。臨床経過を比較すると1回群と2回群でも最終調査時の自動拳上角度(1回群:157.8±19.4°,2回群:155.0±30.2°)や臨床成績(JOA疼痛・可動域・日常生活)には有意差を認めなかった。しかし,術前の自動拳上角度について,2回群(79±36°)が1回群(102±34°)に比べて有意に可動域制限が高度であった。

【結論】

・難治性凍結肩に対する徒手授動術は疼痛および可動域の改善が得られ,良好な治療成績が得られた。

・1回の徒手授動術で十分な改善が得られない場合,2度の徒手授動術を行うことによって良好な経過が得られた。

・糖尿病の合併や,徒手授動術前に高度な可動域制限を有する症例は複数回の徒手授動術が必要となる場合があり,注意して理学療法を進めていく必要がある。