第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P17

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-17-6] 外傷性肘関節内側側副靭帯損傷後,異所性骨化が出現し,異所骨摘出術を受けた10歳代前半男性の理学療法

症例報告

湯澤洋紀1, 彦田直1, 山内弘喜1, 服部惣一2 (1.亀田メディカルセンターリハビリテーション室, 2.亀田メディカルセンタースポーツ医学科)

Keywords:異所性骨化, 内側側副靭帯損傷, ROM

【はじめに,目的】異所性骨化(以下HO)とは筋,筋膜,関節包,靭帯など軟部組織に起こる異常骨化である。原疾患は,外傷や神経障害疾患,脳損傷や熱傷が報告されているが,機序は不明である。HOの予防・治療として,抗炎症剤,放射線照射が有効とされている。摘出術を行うこともあるが,一定数再発することが報告されている。HOが出現した場合のリハビリテーションについてのコンセンサスは得られておらず,また,青年期にHOが出現した場合のリハビリテーションに関する報告は少ない。

今回,外傷による肘内側側副靭帯損傷後に,HOが出現し,保存療法に反応せず,異所骨摘出術を受けた14歳男性に対する理学療法を経験する機会を得たので報告する。


【方法】症例は14歳男性。趣味は柔道,スケートボード。20XX年10月,柔道で倒れた後,四つ這いで上から乗り掛かられ受傷。MRI,CT,エコーにて右肘内側側副靭帯断裂と診断され,5週間外固定施行。受傷6週目より,ヒンジ付き装具へ変更し,理学療法(以下PT)開始。PT開始時の肘関節可動域(R/L)は屈曲110°/145°,伸展-45°/20°。愛護的他動可動域練習を中心としたPTを週1回行い,自主練習は,ヒンジ付き装具を装着した状態で肘関節可動域練習を指導。受傷後13週のCTにて内側側副靭帯内,上腕三頭筋腱内にHOが認められ,薬物療法開始。PT継続したが,伸展可動域改善せず,受傷後20週で異所骨摘出術施行。術前の肘関節可動域は屈曲140°/145°,伸展-35°/20°。術中所見は,全身麻酔下での右肘関節伸展可動域は-30°。異所骨は後斜走繊維(以下POL)との癒着が強く,POLから全周性に剥離し,摘出された。POLは星状に裂け,修復困難だった。摘出後は右肘伸展0°が確認された。上腕三頭筋腱内の異所骨は摘出されなかった。青年期であることが考慮され,再発予防を目的とした放射線照射は行われなかった。


【結果】術翌日より肘関節,前腕の自動運動を開始。医師指示により肘関節の他動運動は禁忌。PT場面以外は弾性包帯を装着。術後4週からOKCでの前腕屈筋群の筋力練習を開始。術後13週からCKCでの上肢筋力練習,肘関節他動運動開始。術後15週から装具装着下にてスケートボード復帰。右上肢MMT4-5であったが,肩伸展位での肘伸展は,最終域まで自動運動困難だった。肩伸展位での肘伸展筋力練習をOKC,CKCで継続。術後20週で肩伸展位での肘伸展は,最終域まで自動運動可能となった。テーピング装着下にて柔道復帰。術後24週で柔道完全復帰し,PTは終了。術後24週での肘関節可動域は屈曲140°/145°,伸展0°/20°。術後24週までの間に,HO再発は認めなかった。


【結論】肘関節内側側副靭帯損傷後,HOを呈した症例を経験した。保存療法に反応せず,異所骨摘出術が施行された。異所骨摘出後は,損傷組織の治癒過程を考慮したリハビリテーションプログラムを立案実施し,柔道復帰した。術後6ヶ月までの経過観察でHO再発は認めなかった。