第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P18

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-18-1] 腰部脊柱管狭窄症患者の心理状態に影響を与える因子の検討

酒井淳子, 山本遼, 熊代功児 (倉敷中央病院リハビリテーション部)

Keywords:腰部脊柱管狭窄症, 心理, JOABPEQ

【はじめに,目的】

腰部脊柱管狭窄症(lumber canal stenosis:LCS)患者は,術前に抑うつがあると手術成績や術後満足度が低下すると報告されている。術前から心理社会的背景を考慮することは重要であり,患者立脚型のQOL評価として日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOA back pain evaluation questionnaire:JOABPEQ)が用いられている。JOABPEQの心理的障害に影響を与える因子に関する報告は散見されるが,身体・運動機能と心理的障害との関係は不明である。身体・運動機能が心理的障害にどう影響し,理学療法により改善可能な可変的要因が含まれるかを明らかにする必要がある。本研究ではLCS患者におけるJOABPEQの心理的障害に影響を与える因子を明らかにすることを目的とする。

【方法】

研究デザインは前向きコホート研究とした。対象は2014年7月から2015年8月の間に当院でLCSと診断され観血的治療の適応となった69名とした。このうち手術延期例1名,術後開始例1名,併存症による運動・感覚障害を有する症例3名,データ欠損1名を除く63名(男性37名,女性26名,平均年齢71.7±8.3歳)を分析対象とした。調査項目は,基本属性として,性別,年齢,BMI,医学的属性として,罹病期間,神経障害型式,身体機能として,股関節伸展可動域,股関節内転可動域,腰椎後弯可動性テスト(Posterior Lumber Flexibility test:PLFテスト),股関節外転筋力,運動機能として,30秒椅子立ち上がりテスト,片脚立位時間,10m歩行速度(最大・快適),6分間歩行距離,QOL評価として,JOABPEQの疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害の5項目及び腰痛VAS,殿部・下肢痛VAS,殿部・下肢のしびれVASとした。統計学的解析は従属変数をJOABPEQの心理的障害のスコアとした重回帰分析を用い,変数選択法はステップワイズ法により行った。それぞれの独立変数の有用性は標準偏回帰係数(β)により判定した。また,事前に単変量解析によって,変数選択を行い,有意水準が0.20を下回る独立変数のみを重回帰モデルに投入して分析を行った。統計ソフトはSPSSを使用し,有意水準は5%未満とした。

【結果】

心理的障害と関連を認めた項目は腰痛VAS,殿部・下肢痛VAS,殿部・下肢しびれVAS,PLFテスト,最大歩行速度であった(p<0.2)。これらの因子を投入した重回帰分析の結果,殿部・下肢しびれVAS(β=-0.299,p=0.012),PLFテスト(β=0.243,p=0.041),最大歩行速度(β=-0.242,p=0.042)であった。決定係数R2=0.23であった。

【結論】

LCS患者における心理的障害と身体・運動機能の独立した関係について縦断研究を行った。本研究の結果,LCS患者の心理的障害には,殿部・下肢のしびれ,腰椎後弯可動性,最大歩行速度が関連することが示唆された。本研究は心理的障害の改善を目的とした効果的な理学療法を展開していく上で,運動療法プログラムを決定する一助となると考える。