[P-MT-18-4] 腰椎変性すべり症に対する運動療法における適切な運動方向と画像上のすべりの戻りとの関連性
Keywords:腰椎変性すべり症, 運動方向, 運動療法
【はじめに,目的】
腰椎変性すべり症に対する運動療法の効果に関する報告は少ない。また,腰椎変性すべり症は屈曲位や伸展位で画像上すべりが変化することがあるが,すべりの程度と症状との関連性に関しての報告は少ない。今回われわれは,腰椎変性すべり症に対する運動療法における適切な運動方向と画像上のすべりの戻りとの関連を調査した。
【方法】
当院にて運動療法を行った腰椎変性すべり症16例,男性2例,女性14例,年齢66.3±7.3歳を対象とした。後屈・前屈・側方の反復運動で症状が改善する運動方向を診断し,後屈改善型・前屈改善型・側方改善型に臨床分類して,運動処方を実施した。また,腰椎側面レントゲンを中間位・屈曲位・伸展位にて撮影し,Taillard測定法に準じてすべり率を測定した。中間位に対するすべりの戻り(5%以上)により伸展戻り型・屈曲戻り型・変化なし型に画像分類し,臨床分類に対する画像分類の関連性を検討した。疼痛は初回と6ヶ月後のVisual Analog Scale(以下VAS)・Roland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)・鎮痛剤使用の有無で評価した。介入効果判定には,ウィルコクソン順位和検定を使用し比較した。
【結果】
全例が前方すべりで,すべりの平均は20.4±6%であった。後屈改善型10例中,伸展戻り型3例・屈曲戻り型4例・変化なし型3例であった。前屈改善型5例中,伸展戻り型0例・屈曲戻り型1例・変化なし型4例であった。側方改善型1例中,伸展戻り型1例であった。VASは初回55.6±31点,6ヵ月32±29.7点と低下し(p<0.01),RDQは初回8.4±4.3点,6ヵ月2.7±3点と低下した(p<0.01)。鎮痛剤の使用は,初回8例,6ヵ月1例であった。
【結論】
VAS・RDQともに有意に改善し,鎮痛剤を使用しなくなった症例も7例あり,運動療法は有用と思われた。しかし,運動方向とすべりの戻りが一致する症例が4例,運動方向とすべりの戻りが一致しない症状が5例,変化なし型が7例であり,臨床分類と画像分類の間に明らかな関連性は認められなかった。また,後屈改善型が16例中10例と最も多く,腰椎変性すべり症に対する運動療法として,屈曲体操群・コントロール群に対し,伸展体操群の治療成績が優位に高い,という過去の報告と一致した。椎間板の髄核は伸展運動で前方に移動するという報告や,すべりが発生する症例には,椎間板変性が認められる,という報告から,後屈体操による髄核の前方への整復が疼痛軽減に働いたと考えられる。前屈改善型に関して,すべりは脊柱管や椎間孔を物理的に狭窄し,神経根を圧迫させるという報告や,屈曲運動は椎間孔の直径・脊柱管の容積が増大するという報告から,前屈体操により,椎間孔の直径・脊柱管の容積を増大させることが疼痛の軽減に働いたと考えられる。つまり,腰椎変性すべり症の運動療法による症状の改善は,すべりの戻りだけでは説明できず,椎間板やその他の要素が関連していることが示唆された。
腰椎変性すべり症に対する運動療法の効果に関する報告は少ない。また,腰椎変性すべり症は屈曲位や伸展位で画像上すべりが変化することがあるが,すべりの程度と症状との関連性に関しての報告は少ない。今回われわれは,腰椎変性すべり症に対する運動療法における適切な運動方向と画像上のすべりの戻りとの関連を調査した。
【方法】
当院にて運動療法を行った腰椎変性すべり症16例,男性2例,女性14例,年齢66.3±7.3歳を対象とした。後屈・前屈・側方の反復運動で症状が改善する運動方向を診断し,後屈改善型・前屈改善型・側方改善型に臨床分類して,運動処方を実施した。また,腰椎側面レントゲンを中間位・屈曲位・伸展位にて撮影し,Taillard測定法に準じてすべり率を測定した。中間位に対するすべりの戻り(5%以上)により伸展戻り型・屈曲戻り型・変化なし型に画像分類し,臨床分類に対する画像分類の関連性を検討した。疼痛は初回と6ヶ月後のVisual Analog Scale(以下VAS)・Roland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)・鎮痛剤使用の有無で評価した。介入効果判定には,ウィルコクソン順位和検定を使用し比較した。
【結果】
全例が前方すべりで,すべりの平均は20.4±6%であった。後屈改善型10例中,伸展戻り型3例・屈曲戻り型4例・変化なし型3例であった。前屈改善型5例中,伸展戻り型0例・屈曲戻り型1例・変化なし型4例であった。側方改善型1例中,伸展戻り型1例であった。VASは初回55.6±31点,6ヵ月32±29.7点と低下し(p<0.01),RDQは初回8.4±4.3点,6ヵ月2.7±3点と低下した(p<0.01)。鎮痛剤の使用は,初回8例,6ヵ月1例であった。
【結論】
VAS・RDQともに有意に改善し,鎮痛剤を使用しなくなった症例も7例あり,運動療法は有用と思われた。しかし,運動方向とすべりの戻りが一致する症例が4例,運動方向とすべりの戻りが一致しない症状が5例,変化なし型が7例であり,臨床分類と画像分類の間に明らかな関連性は認められなかった。また,後屈改善型が16例中10例と最も多く,腰椎変性すべり症に対する運動療法として,屈曲体操群・コントロール群に対し,伸展体操群の治療成績が優位に高い,という過去の報告と一致した。椎間板の髄核は伸展運動で前方に移動するという報告や,すべりが発生する症例には,椎間板変性が認められる,という報告から,後屈体操による髄核の前方への整復が疼痛軽減に働いたと考えられる。前屈改善型に関して,すべりは脊柱管や椎間孔を物理的に狭窄し,神経根を圧迫させるという報告や,屈曲運動は椎間孔の直径・脊柱管の容積が増大するという報告から,前屈体操により,椎間孔の直径・脊柱管の容積を増大させることが疼痛の軽減に働いたと考えられる。つまり,腰椎変性すべり症の運動療法による症状の改善は,すべりの戻りだけでは説明できず,椎間板やその他の要素が関連していることが示唆された。