[P-MT-19-2] 末期変形性膝関節症患者における歩行時の体幹側方動揺と関連因子の検討
Keywords:変形性膝関節症, 体幹側方動揺, 関連因子
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下,膝OA)患者の跛行は,立脚期に体幹側方動揺がみられるようなDuchenne徴候様の跛行を呈す症例もしばし見受けられる。
本研究の目的は,膝OA患者における歩行時の体幹側方動揺(以下,跛行)と身体的因子の関係性を明らかにすることである。
【方法】
本研究は,末期膝OA患者125名を対象とした横断的研究である。なお,調査項目の漏れや同意を得られなかったものは除外した。調査項目は,跛行の有無,年齢,BMI,膝屈曲可動域,下肢荷重率,股外転筋力,股内転筋力,股内外転筋比,膝伸展筋力,歩行時痛,立位FTA,最大歩行速度,5回反復立ち座りテスト,階段昇降能力とした。跛行の有無の判定は,10m自由歩行において,セラピストが目視にて判別した。なお,跛行を認めた群を跛行群,認めなかった群を非跛行群とし,2群に群分けした。
統計学的処理は,跛行群の身体的特徴の検討にはMann-WhitneyのU検定を用いて2群間における各調査項目の比較を行い,跛行の有無に関わる因子の検討には跛行の有無を従属変数,各調査項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
跛行の有無に関する対象者の内訳は,跛行群47名(男性5名,女性42名,平均年齢73.6±8.7歳),非跛行群78名(男性4名,女性74名,平均年齢74.5±7.1歳)であった。
2群間における各調査項目の比較の結果,BMIでは,非跛行群24.7kg/m2(22.4-26.5)に対して跛行群が26.3kg/m2(23.9-28.0)と有意に高く,FTAについては,非跛行群183°(178-187)に対して,跛行群185°(183-190)と有意に大きかった(p<0.01)。その他の項目では有意差は認めなかった。ロジスティック回帰分析の結果,跛行の有無に影響する変数として,BMI(OR比:1.17,95%信頼区間:1.02~1.35,p<0.05)とFTA(OR比:1.10,95%信頼区間:1.02~1.18,P<0.01)が選択された(尤度比検定:P<0.05)。
【結論】
今回の結果から,跛行群の特徴として,BMIが高く,その値も25kg/m2以上と日本肥満学会の定める肥満基準(2000年)で肥満の域に足していること,更に,FTAが大きかったことから膝の変形もより重度であることが示唆された。
跛行に影響する因子の検討において,歩行時の体幹側方動揺への影響が推察される股外転筋力は選択されず,FTAが選択されたことから,内反膝変形の程度がその原因として考えられた。すなわち体幹を側方へ傾斜させることによって荷重軸を外方化させ,内反膝変形によって生じる外部膝内反モーメントを減少させようとする特異的な姿勢戦略の結果であると考えられた。さらにBMIも選択されたことから,末期膝OA患者における歩行時の体幹側方動揺の出現には,内反膝変形の程度だけでなく,肥満の影響も大きいことが示唆された。
変形性膝関節症(以下,膝OA)患者の跛行は,立脚期に体幹側方動揺がみられるようなDuchenne徴候様の跛行を呈す症例もしばし見受けられる。
本研究の目的は,膝OA患者における歩行時の体幹側方動揺(以下,跛行)と身体的因子の関係性を明らかにすることである。
【方法】
本研究は,末期膝OA患者125名を対象とした横断的研究である。なお,調査項目の漏れや同意を得られなかったものは除外した。調査項目は,跛行の有無,年齢,BMI,膝屈曲可動域,下肢荷重率,股外転筋力,股内転筋力,股内外転筋比,膝伸展筋力,歩行時痛,立位FTA,最大歩行速度,5回反復立ち座りテスト,階段昇降能力とした。跛行の有無の判定は,10m自由歩行において,セラピストが目視にて判別した。なお,跛行を認めた群を跛行群,認めなかった群を非跛行群とし,2群に群分けした。
統計学的処理は,跛行群の身体的特徴の検討にはMann-WhitneyのU検定を用いて2群間における各調査項目の比較を行い,跛行の有無に関わる因子の検討には跛行の有無を従属変数,各調査項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
跛行の有無に関する対象者の内訳は,跛行群47名(男性5名,女性42名,平均年齢73.6±8.7歳),非跛行群78名(男性4名,女性74名,平均年齢74.5±7.1歳)であった。
2群間における各調査項目の比較の結果,BMIでは,非跛行群24.7kg/m2(22.4-26.5)に対して跛行群が26.3kg/m2(23.9-28.0)と有意に高く,FTAについては,非跛行群183°(178-187)に対して,跛行群185°(183-190)と有意に大きかった(p<0.01)。その他の項目では有意差は認めなかった。ロジスティック回帰分析の結果,跛行の有無に影響する変数として,BMI(OR比:1.17,95%信頼区間:1.02~1.35,p<0.05)とFTA(OR比:1.10,95%信頼区間:1.02~1.18,P<0.01)が選択された(尤度比検定:P<0.05)。
【結論】
今回の結果から,跛行群の特徴として,BMIが高く,その値も25kg/m2以上と日本肥満学会の定める肥満基準(2000年)で肥満の域に足していること,更に,FTAが大きかったことから膝の変形もより重度であることが示唆された。
跛行に影響する因子の検討において,歩行時の体幹側方動揺への影響が推察される股外転筋力は選択されず,FTAが選択されたことから,内反膝変形の程度がその原因として考えられた。すなわち体幹を側方へ傾斜させることによって荷重軸を外方化させ,内反膝変形によって生じる外部膝内反モーメントを減少させようとする特異的な姿勢戦略の結果であると考えられた。さらにBMIも選択されたことから,末期膝OA患者における歩行時の体幹側方動揺の出現には,内反膝変形の程度だけでなく,肥満の影響も大きいことが示唆された。