[P-MT-19-5] Total joint power flowでみた変形性膝関節症患者の異常歩行の分析
荷重応答期に着目して
キーワード:変形性膝関節症, 歩行, 重回帰分析
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下,膝OA)の主症状として歩行機能の低下がある。我々は先行研究においてTotal joint power flow(以下,TPF)でみた膝OA患者の歩行の力学的特徴は荷重応答期における股関節TPF(以下,LRHipTPF)と立脚終期における股関節TPF(以下,TStHipTPF)の極性変化であることを明らかにした。そこでこの極性変化の原因を明らかにすることで,治療介入すべき問題点が明確にできると考える。我々は,重回帰分析を用いてTStHipTPFに影響する因子を検討したところ立脚終期における負の足関節モーメントパワーが影響することを明らかにした。そこで本研究では重回帰分析を用いてLRHipTPFに影響する因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は両側膝OA患者12名(男性1名,女性11名,Kellgren-Lawrence分類GradeI:8名,GradeII:3名,GradeIII:1名)とした。4台のデジタルハイビジョンビデオカメラと1台の床反力計を用いて歩行解析を行い,歩行中の股,膝,足関節における関節角度,関節モーメント,関節モーメントパワー,隣接体節から受けるパワー,TPFを算出した。また,東大式ゴニオメータを用いて膝関節伸展可動域(以下,伸展ROM)を測定した。重回帰分析には膝OA患者の歩行時の股,膝,足関節の荷重応答期と立脚終期における関節角度,関節モーメント,関節モーメントパワー,TPFの各々最大値と最小値,伸展ROMを用いた。LRHipTPFの最小値を従属変数とし,その他の因子を独立変数とした。重回帰式に組み込む変数はステップワイズ法にて選択した。これらの重回帰分析にはSPSSを使用した。
【結果】
LRHipTPFを決定する独立変数として伸展ROMが採択された。LRHipTPFの対数(Y)を予測する重回帰式は,Y=-0.056×伸展ROM-0.270となった。重相関係数は0.812,決定係数は0.660,調整済み決定係数は0.622であった。
【結論】
LRHipTPFの最小値には伸展ROMが関与することが明らかになった。正常歩行では膝関節伸展位で初期接地し,荷重応答期に膝関節が約10°屈曲するため股関節可動域は変化しない。しかし,膝OA患者は重症度が増すほど初期接地での膝関節屈曲角度が増加する(倉林,2011)。膝関節屈曲位で初期接地を迎えることで,荷重応答期での膝関節屈曲運動は減少する。そのため,正常歩行にはみられない股関節伸展運動が出現し,LRHipTPFの極性変化が起こったと考えた。したがって,LRHipTPFを正常化するためには伸展ROM改善の必要性が示唆された。また,膝関節伸展制限が大きいほど膝関節内反角度,内反モーメントが増加する(中山ら,2012)との報告もあり,変形予防の観点からも伸展ROMの維持,改善は積極的に行うべきであると考える。
変形性膝関節症(以下,膝OA)の主症状として歩行機能の低下がある。我々は先行研究においてTotal joint power flow(以下,TPF)でみた膝OA患者の歩行の力学的特徴は荷重応答期における股関節TPF(以下,LRHipTPF)と立脚終期における股関節TPF(以下,TStHipTPF)の極性変化であることを明らかにした。そこでこの極性変化の原因を明らかにすることで,治療介入すべき問題点が明確にできると考える。我々は,重回帰分析を用いてTStHipTPFに影響する因子を検討したところ立脚終期における負の足関節モーメントパワーが影響することを明らかにした。そこで本研究では重回帰分析を用いてLRHipTPFに影響する因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は両側膝OA患者12名(男性1名,女性11名,Kellgren-Lawrence分類GradeI:8名,GradeII:3名,GradeIII:1名)とした。4台のデジタルハイビジョンビデオカメラと1台の床反力計を用いて歩行解析を行い,歩行中の股,膝,足関節における関節角度,関節モーメント,関節モーメントパワー,隣接体節から受けるパワー,TPFを算出した。また,東大式ゴニオメータを用いて膝関節伸展可動域(以下,伸展ROM)を測定した。重回帰分析には膝OA患者の歩行時の股,膝,足関節の荷重応答期と立脚終期における関節角度,関節モーメント,関節モーメントパワー,TPFの各々最大値と最小値,伸展ROMを用いた。LRHipTPFの最小値を従属変数とし,その他の因子を独立変数とした。重回帰式に組み込む変数はステップワイズ法にて選択した。これらの重回帰分析にはSPSSを使用した。
【結果】
LRHipTPFを決定する独立変数として伸展ROMが採択された。LRHipTPFの対数(Y)を予測する重回帰式は,Y=-0.056×伸展ROM-0.270となった。重相関係数は0.812,決定係数は0.660,調整済み決定係数は0.622であった。
【結論】
LRHipTPFの最小値には伸展ROMが関与することが明らかになった。正常歩行では膝関節伸展位で初期接地し,荷重応答期に膝関節が約10°屈曲するため股関節可動域は変化しない。しかし,膝OA患者は重症度が増すほど初期接地での膝関節屈曲角度が増加する(倉林,2011)。膝関節屈曲位で初期接地を迎えることで,荷重応答期での膝関節屈曲運動は減少する。そのため,正常歩行にはみられない股関節伸展運動が出現し,LRHipTPFの極性変化が起こったと考えた。したがって,LRHipTPFを正常化するためには伸展ROM改善の必要性が示唆された。また,膝関節伸展制限が大きいほど膝関節内反角度,内反モーメントが増加する(中山ら,2012)との報告もあり,変形予防の観点からも伸展ROMの維持,改善は積極的に行うべきであると考える。