[P-MT-20-1] 慢性腰痛患者における立位,座位,四這い姿勢での腰椎前後屈時の腰痛および可動域の特徴
キーワード:腰痛, 姿勢, 評価
【はじめに,目的】
腰痛患者の症状には多様性があるため,腰痛発現運動方向によるタイプ分類に基づいて治療することが推奨されている。臨床場面における腰痛発現運動方向の確認は立位で実施される事が多いが,立位での体幹前後屈はバランスが取りにくく,隣接関節での代償運動も生じやすいことから腰痛を再現しにくいことを経験する。
一方,立位にくらべて座位や四つ這い位では支持基底面が広く代償運動も生じにくいため,より腰部に焦点を当てた評価が可能になると考えられる。また立位での前後屈に加えて,姿勢や重力負荷の異なる座位や四つ這い位での評価を併せて行う事で,より詳細な臨床推論が可能になると考えられる。
しかしこれまでに,立位,座位,四つ這い位における腰椎前後屈時の腰痛および腰椎可動域(以下ROM)の特徴についての報告は見当たらないため,本研究において検討することを目的とした。
【方法】
対象はX線画像上にて骨折や変形の所見がなく3ヶ月以上症状が持続している慢性腰痛患者14名(男性5名,女性9名,平均年齢43.77±14.71歳)とした。
被験者が立位,座位,四つ這い位の各姿勢において腰椎前後屈を行った際の疼痛の程度を100mm Visual Analog Scale(以下VAS),ROMをYoudasらの方法を改変して測定した。ROMの測定方法は,各姿勢における腰椎前後屈時に,市販の自在曲線定規40cm(シンワ製)を棘突起上に密着させ,脊柱曲線および触診にて確認した第12胸椎(以下T12)と第2仙椎棘突起(以下S2)の位置を紙面にトレースし,紙面上の脊柱曲線のT12を通る接線とS2を通る接線の成す角を腰椎ROMとして算出した。
統計解析は,腰椎前後屈時のVASおよび腰椎ROMの姿勢間における差について,Kruskal-Wallis testおよび事後検定としてSteel-Dwass testを実施した(P<0.05)。また腰椎前後屈のそれぞれにおいて,最大疼痛誘発姿勢が立位以外であった人数の割合について算出した。
【結果】
前屈時においては,VAS平均値は立位27.46±19.19mm,座位32.69±20.79mm,四つ這い位6.69±7.69mmとなり四這い位が他の姿勢より有意に小さく,ROM平均値は立位22.69±9.94°,座位23.38±9.12°,四つ這い位18.38±6.12°となり差はなかった。後屈時においては,VAS平均値は立位38.15±20.85mm,座位15.38±19.15mm,四つ這い位33.38±16.52mmとなり座位が他の姿勢より有意に小さく,ROM平均値は立位40.31±10.31°,座位29.84±8.77°,四つ這い位30.30±7.8°となり立位が他の姿勢より有意に大きかった。最大疼痛誘発姿勢が立位以外であった人数の割合は前屈時50%,後屈時29%であった。
【結論】
本研究の結果から,腰椎前後屈動作時に姿勢の違いによって疼痛や可動域に変化がみられたことや,立位以外の方が疼痛の程度が大きい患者がいたことから,立位に加えて座位と四這い位も併せて腰椎前後屈の評価を行うことは,腰痛症状の臨床推論過程において有用であることが示唆された。
腰痛患者の症状には多様性があるため,腰痛発現運動方向によるタイプ分類に基づいて治療することが推奨されている。臨床場面における腰痛発現運動方向の確認は立位で実施される事が多いが,立位での体幹前後屈はバランスが取りにくく,隣接関節での代償運動も生じやすいことから腰痛を再現しにくいことを経験する。
一方,立位にくらべて座位や四つ這い位では支持基底面が広く代償運動も生じにくいため,より腰部に焦点を当てた評価が可能になると考えられる。また立位での前後屈に加えて,姿勢や重力負荷の異なる座位や四つ這い位での評価を併せて行う事で,より詳細な臨床推論が可能になると考えられる。
しかしこれまでに,立位,座位,四つ這い位における腰椎前後屈時の腰痛および腰椎可動域(以下ROM)の特徴についての報告は見当たらないため,本研究において検討することを目的とした。
【方法】
対象はX線画像上にて骨折や変形の所見がなく3ヶ月以上症状が持続している慢性腰痛患者14名(男性5名,女性9名,平均年齢43.77±14.71歳)とした。
被験者が立位,座位,四つ這い位の各姿勢において腰椎前後屈を行った際の疼痛の程度を100mm Visual Analog Scale(以下VAS),ROMをYoudasらの方法を改変して測定した。ROMの測定方法は,各姿勢における腰椎前後屈時に,市販の自在曲線定規40cm(シンワ製)を棘突起上に密着させ,脊柱曲線および触診にて確認した第12胸椎(以下T12)と第2仙椎棘突起(以下S2)の位置を紙面にトレースし,紙面上の脊柱曲線のT12を通る接線とS2を通る接線の成す角を腰椎ROMとして算出した。
統計解析は,腰椎前後屈時のVASおよび腰椎ROMの姿勢間における差について,Kruskal-Wallis testおよび事後検定としてSteel-Dwass testを実施した(P<0.05)。また腰椎前後屈のそれぞれにおいて,最大疼痛誘発姿勢が立位以外であった人数の割合について算出した。
【結果】
前屈時においては,VAS平均値は立位27.46±19.19mm,座位32.69±20.79mm,四つ這い位6.69±7.69mmとなり四這い位が他の姿勢より有意に小さく,ROM平均値は立位22.69±9.94°,座位23.38±9.12°,四つ這い位18.38±6.12°となり差はなかった。後屈時においては,VAS平均値は立位38.15±20.85mm,座位15.38±19.15mm,四つ這い位33.38±16.52mmとなり座位が他の姿勢より有意に小さく,ROM平均値は立位40.31±10.31°,座位29.84±8.77°,四つ這い位30.30±7.8°となり立位が他の姿勢より有意に大きかった。最大疼痛誘発姿勢が立位以外であった人数の割合は前屈時50%,後屈時29%であった。
【結論】
本研究の結果から,腰椎前後屈動作時に姿勢の違いによって疼痛や可動域に変化がみられたことや,立位以外の方が疼痛の程度が大きい患者がいたことから,立位に加えて座位と四這い位も併せて腰椎前後屈の評価を行うことは,腰痛症状の臨床推論過程において有用であることが示唆された。