第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P20

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-20-5] 心理的要因の違いが腰痛の分類に与える影響

藤井瞬1,2, 斎藤潤3, 中野元博3, 小野玲2 (1.神戸国際大学リハビリテーション学部理学療法学科, 2.神戸大学大学院保健学研究科, 3.中野整形外科運動器リハビリテーションクリニック)

Keywords:心理的要因, Mechanical Diagonosis and Therapy, 非特異的腰痛

【はじめに】腰痛を大きく分類すると自己管理可能なものと自己管理不可能でものに分けられると言われている。この自己管理な腰痛は非特異的腰痛とされ原因不明とされ,心理社会的要因を含む複合的な要因が重複していることは既に周知の事であり,現在も様々な方法で対応が考えられている。そのため腰痛を分類し,正確にその症状をマネージメントすることが求められている。その腰痛分類システムの一つがMechanical Diagnosis and Therapy(以下MDT)であり,腰痛のセルフマネージメントに重きを置いた分類体系である。MDTでは主観的評価と客観的評価に基づいて運動方向を決定するDirectional Preference(以下DP)の発見が重要であり,セルフマネージメントには必要不可欠な指標が存在する。DPの判断において,臨床上早期に発見できる群(以下DP群)と発見できない群(以下No-DP群)が存在する。しかし,No-DP群において複数回評価を継続するとDPが明確になる場合が存在する。これは評価の一部を患者様の主観的評価に依存するため,身体的要因以外にも心理的要因も考慮する必要があると考える。そのため心理的要因の違いがDPの明確な群と明確でない群において生じているかの調査を実施した。

【方法】非特異的腰痛を呈する腰痛患者24名を対象とした。Cred.MDTを持つDr.またはPTがMDT評価を実施しDPを確認した。また身体的要因および心理的要因の調査として初回評価時にOswestry Disability Index(以下ODI),Pain Self-Efficacy Questionnaire(以下PSEQ),Tampa scale for kinesiophobia(TSK)を使用した。各項目を両群間で比較検討した。統計解析はEZRのMann-WhitenyのU検定およびt検定を用い有意水準は5%未満とした。

【結果】各群の対象者はDP群18名,No-DP群6名であった。両群比較において,年齢はDP群58.1±15.7歳,No-DP群54.3±18.2歳,性別(男性)はDP群55.5%,No-DP群16.7%,ODIはDP群34.0±20.5%,No-DP群は29.0±12.3%,PSEQはDP群35.7±13.9点,No-DP群は34.2±6.8点でありいずれも有意差は認められなかった。TSKはDP群37.0±5.1点,No-DP群は42.8±5.6点であり有意差を認めた(<0.05)。

【結論】今回の調査では腰痛の障害度や痛みに関する自己効力感はDPの判定に影響がなかった。今回の調査では心理的要因である運動恐怖感のみに有意差が見られたことから,運動恐怖感が高ければDPの判断を不明瞭にすることが示唆された。これはMDT評価時に腰椎に対して最終可動域まで機械的負荷を加えることが出来ないためにうまく反応が出せずNo-DPと判断してしまう可能性があると考えられる。そのためMDTは一回の評価ではなく複数回の評価にてDPを判断する必要があると考えられる。