第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P21

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-21-4] 人工膝関節置換術後患者の階段降段能力に関わる機能の検討

石井達也, 岡田裕太, 西岡幸哉, 篠田祐介, 田中沙織, 根岸沙也加, 平井美紀, 安原康平 (医療法人社団愛友会上尾中央総合病院診療技術部リハビリテーション技術科)

Keywords:人工膝関節置換術, 階段, 機能評価

【はじめに,目的】

人工膝関節置換術(以下TKA)施行患者において,階段降段は難易度が高く,早期の獲得が困難な症例を多く経験する。当院ではTKA術後患者に対し,ROM,筋力以外に俊敏性,協調性の機能を評価しており,階段降段とその機能の関連性を明らかにすることは有益な情報となり得ると考える。そこで今回,TKA術後患者の膝関節機能が階段降段の獲得に及ぼす影響を検討した。

【方法】

対象は平成26年10月から平成27年7月の間,当院でTKAを施行し,退院後初回の外来リハビリテーション時(術後36.6±7.8日)に測定が可能であった患者26例(男性3例,女性23例,平均年齢73.2±6.5歳)とした。測定項目は,階段降段,膝関節屈伸可動域,膝関節屈伸筋力,10m歩行,俊敏性の評価として,10秒間にスクワットが何回できるかを測定するクイックスクワット(以下QS),協調性の評価として,片脚で可能な限り膝関節を屈曲するシングルスクワットの角度(以下SS)とした。筋力はアイソフォースGT-360(オージー技研)で測定し,膝関節屈曲60°での等尺性筋力を体重で除した値を用いた。階段降段は,訓練用階段(酒井医療SP-150 高さ20.0cm 幅22.0cm)で測定した。一足一段で降段し,1.痛みなし,2.痛みあり,3.努力性,4.不可の四段階で分類し,1・2を可能群,3・4を困難群とした。可能群と3.努力性は,動作の著しい左右差をもって区別した。両群間の各測定項目の比較を対応のないt検定にて行い,有意差があったものに対し,その関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。統計学的処理にはSPSS Statistics Ver.21を使用した。

【結果】

可能群14例(73.4±7.5歳),困難群12例(73.0±5.6歳)であり,年齢の有意差は認めなかった。両群における評価結果はそれぞれ,伸展ROMが-3.9±4.9度,-4.6±4.5度,屈曲ROMが120.0±9.4度,114.2±15.2度,伸展筋力が0.96±0.32Nm/kg,0.81±0.28Nm/kg,屈曲筋力が0.55±0.17Nm/kg,0.39±0.15Nm/kg(p<0.05),10m歩行時間が8.8±1.1秒,10.1±2.5秒,QSが9.9±2.3回,8.4±3.0回,SSが64.3±9.2度,56.7±7.5度(p<0.05)であった。両群間で屈曲筋力,SSに有意差を認めた。また,屈曲筋力とSSの間には中等度の正の相関(r=0.61,p<0.01)を認めた。

【結論】

階段降段には荷重下での膝関節屈曲が重要であり,SSはその能力を反映する評価であると考えられる。また,屈曲筋力とSSに相関を認めたことから,SSには伸展筋力だけでなく,屈曲筋力が重要である事が示唆された。よって,SSは協調性の評価として妥当であると考えられる。しかし,SSでは前額面のアライメントや,他関節の影響を考慮していないため,今後それらを含め検討する必要がある。本研究の問題点として対象者数が少ないことや,階段降段に主観的な評価を用いていることが挙げられる。今後の課題として,対象者を増やし,SSのカットオフ値を求めることや,患者の主観的評価を用いて考察することが挙げられる。