第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P21

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-21-5] TKA術後3ヶ月における階段昇降動作に関わる因子の検討

齋藤学1, 川井誉清1, 山本晋士2, 神川康也3 (1.松戸整形外科病院リハビリテーションセンター, 2.松戸整形外科病院人工関節センター, 3.松戸整形外科病院関節外科センター)

Keywords:TKA術後, 階段昇降動作, 準WOMAC

【目的】当院では人工膝関節置換術(以下,TKA)を行った患者に対し,術前,退院時(術後3週),術後3ヶ月において日本語版膝機能評価表(以下,準WOMAC)を用いた患者の主観的な評価を行っている。TKA術後機能において挙げられる問題点の一つとして階段昇降動作があるが,この階段昇降動作と術前・退院時での準WOMACの各項目との関連性について述べた報告はみられない。そこで本研究では,術後3ヶ月における階段昇降動作に影響する準WOMACをはじめとした術前・退院時因子とそれら因子の影響度合い,その組み合わせを見つけ出すことを目的とした。

【方法】対象は当院において変形性膝関節症と診断され,平成26年5月から平成27年5月に片側TKAを施行した48名(男性9名,女性39名,平均年齢74.8±5.8歳)とした。ただし,両側および既に片側TKAを施行している者は除外した。階段昇降動作は術後3ヶ月時点での術側JOAスコアにおける疼痛・階段昇降能力が20点以上の者を可能(以下,可能群),20点未満の者を不可能(以下,困難群)とした。評価項目は,年齢,BMI,糖尿病の有無,術前・退院時の術側膝関節可動域(屈曲,伸展),術前・退院時の準WOMAC疼痛項目と機能項目,疼痛点,機能点,総合点,術前・退院時のJOAスコア各項目と総合点とした。統計学的処理はSPSS Ver.17.0 for Windowsを用い,評価項目を独立変数,一足一段の階段昇降動作の可否を従属変数としてロジスティック回帰分析を行い,有意水準は5%とした。

【結果】階段昇降動作の可否について可能群は33名,困難群は15名であった。術後3ヶ月における一足一段の階段昇降動作の可否と関わりが強い項目は,BMI(オッズ比:1.23),術前の準WOMAC健側膝疼痛点+機能点(オッズ比:1.09),術前の準WOMAC総合点(オッズ比:1.06),退院時の術側膝関節屈曲可動域(オッズ比:1.07)の4項目であった。得られた回帰式の判別的中率は70.8%であった。

【結論】妹尾らは変形性膝関節症患者の階段昇降能力に膝関節可動域が強く影響していたと報告しており,階段昇降能力における膝関節可動域の重要性は高く,本研究においても退院時の術側膝関節屈曲可動域が抽出される結果となった。術前の可動域ではなく退院時の可動域が抽出された理由として,谷口らはTKA術後3週と術後3ヶ月の膝関節可動域に中程度の相関を示したと報告があり,本研究においても同様の傾向が見られたと考える。そのため,退院時の可動域が良好な患者が術後3ヶ月においても良好な可動域となり,階段昇降能力に好影響を与えたと考えられる。また,準WOMACは非術側膝関節の状態も含めた評価法であり,術前における非術側膝関節の疼痛や機能低下がある場合は,術側と併せて症状の改善を目指すことが術後の階段昇降能力の向上につながると考えられる。