[P-MT-22-1] Cine MRIを用いた肩関節回旋運動中における動的安定性の定量的解析
キーワード:肩関節動的安定性, MRI, 時系列解析
【はじめに,目的】
広い関節可動域を有する肩甲上腕関節の動的安定性は他関節よりも重要であり,回旋筋腱板はその中心的役割を担う。回旋筋腱板機能の理学療法評価は,上肢の機能的動作に多く含まれる肩関節回旋運動を用いる。動的安定性評価は,理学療法士の徒手による主観的な所見に依存しており,客観的な動的安定性の指標として,継時的に肩関節回旋運動を視覚的に定量化した研究はこれまでにない。本研究では,健常な肩甲上腕関節回旋運動中の動的安定性を継時的に画像所見により視覚的にとらえ,関節の回旋軸逸脱方向・距離,逸脱が生じる際の肩甲上腕関節回旋角度を定量化したことによって,動的不安定性の評価基準となる健常な基礎データを構築することを目的とする。
【方法】
対象は,頸椎・胸椎・肩関節に現病歴が無く,MRI撮像の禁忌に該当する症状や既往歴を有さない健常肢12関節(男性6名,29.50±4.99歳)とした。対象者は,オープンMRI内にて背臥位,肩関節ゼロポジションと0°内転位の2肢位をとった。肩関節自動回旋運動は電子メトロノーム音に合わせ,15回/分の回旋速度で実施した。この時の撮像面は関節窩を垂直に通るように調整した軸位断から,2画像/秒の撮像速度で撮像した。得られた画像と肩関節回旋角度が一致するようにMRI撮像中のモニターと被検者頭側に設置したMRI室内のビデオカメラから動作中の映像を同時に撮影した。MRI画像はパソコンへ取り込んだ後,軸位断における関節窩中央より上腕骨頭と回旋軸の変位の方向・距離,関節窩に対する上腕骨回旋軸の角度を算出した。
【結果】
各被検者において,0°内転位でのMRI画像上とビデオ上の回旋運動角度には高い相関が得られた(r=0.82 ~ 0.98)。0°内転位において上腕骨頭は,外旋位から内旋運動中に関節窩最大前後径の2.97 ~9.14%の範囲で関節窩中央より前方へ変位した。ゼロポジションでは外旋位と内旋位の中間域において関節窩最大前後径の約3%の上腕骨頭前方変位がみられ,内旋最終域付近では約0.5%の後方変位がみられた。関節窩に対する上腕骨回旋軸の角度は前後方向へ約3°の変化がみられ,最大内旋位と外旋―内旋中間域では回旋軸は前方へ傾斜した。関節窩上の上腕骨回旋軸は,外旋最終位において,関節窩前後径のほぼ中央に位置するが,中間域においては,前方約2%,後方約4%の間を動揺していた。
【結論】
Cine MRIを用いたゼロポジションと0°内転位の2肢位において動的安定性を定量的に解析したところ,0°内転位では上腕骨頭の転がりと滑り運動は同調しておらず,中間域では前方への変位が主となる肢位がみられた。ゼロポジションでの中間域では,上腕骨頭の前方変位と回旋軸の前後方向の変位がみられた。
広い関節可動域を有する肩甲上腕関節の動的安定性は他関節よりも重要であり,回旋筋腱板はその中心的役割を担う。回旋筋腱板機能の理学療法評価は,上肢の機能的動作に多く含まれる肩関節回旋運動を用いる。動的安定性評価は,理学療法士の徒手による主観的な所見に依存しており,客観的な動的安定性の指標として,継時的に肩関節回旋運動を視覚的に定量化した研究はこれまでにない。本研究では,健常な肩甲上腕関節回旋運動中の動的安定性を継時的に画像所見により視覚的にとらえ,関節の回旋軸逸脱方向・距離,逸脱が生じる際の肩甲上腕関節回旋角度を定量化したことによって,動的不安定性の評価基準となる健常な基礎データを構築することを目的とする。
【方法】
対象は,頸椎・胸椎・肩関節に現病歴が無く,MRI撮像の禁忌に該当する症状や既往歴を有さない健常肢12関節(男性6名,29.50±4.99歳)とした。対象者は,オープンMRI内にて背臥位,肩関節ゼロポジションと0°内転位の2肢位をとった。肩関節自動回旋運動は電子メトロノーム音に合わせ,15回/分の回旋速度で実施した。この時の撮像面は関節窩を垂直に通るように調整した軸位断から,2画像/秒の撮像速度で撮像した。得られた画像と肩関節回旋角度が一致するようにMRI撮像中のモニターと被検者頭側に設置したMRI室内のビデオカメラから動作中の映像を同時に撮影した。MRI画像はパソコンへ取り込んだ後,軸位断における関節窩中央より上腕骨頭と回旋軸の変位の方向・距離,関節窩に対する上腕骨回旋軸の角度を算出した。
【結果】
各被検者において,0°内転位でのMRI画像上とビデオ上の回旋運動角度には高い相関が得られた(r=0.82 ~ 0.98)。0°内転位において上腕骨頭は,外旋位から内旋運動中に関節窩最大前後径の2.97 ~9.14%の範囲で関節窩中央より前方へ変位した。ゼロポジションでは外旋位と内旋位の中間域において関節窩最大前後径の約3%の上腕骨頭前方変位がみられ,内旋最終域付近では約0.5%の後方変位がみられた。関節窩に対する上腕骨回旋軸の角度は前後方向へ約3°の変化がみられ,最大内旋位と外旋―内旋中間域では回旋軸は前方へ傾斜した。関節窩上の上腕骨回旋軸は,外旋最終位において,関節窩前後径のほぼ中央に位置するが,中間域においては,前方約2%,後方約4%の間を動揺していた。
【結論】
Cine MRIを用いたゼロポジションと0°内転位の2肢位において動的安定性を定量的に解析したところ,0°内転位では上腕骨頭の転がりと滑り運動は同調しておらず,中間域では前方への変位が主となる肢位がみられた。ゼロポジションでの中間域では,上腕骨頭の前方変位と回旋軸の前後方向の変位がみられた。