第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P22

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-22-3] 反復性肩関節脱臼の外旋可動域に影響を与える因子の検討

身体機能と関節構造の破綻の有無に着目して

勝木秀治, 榊原俊亮, 戸渡敏之 (関東労災病院中央リハビリテーション部)

Keywords:反復性肩関節脱臼, 外旋可動域, 身体機能特性

【はじめに,目的】反復性肩関節脱臼では,Bankart lesionに代表される関節構造の破綻により肩関節の前方不安定性を呈しやすい。このため,上腕骨頭関節面が肩関節の前方を向く,外旋運動において不安定性や可動域制限が出現しやすい。しかし,臨床では,不安定性が少なく,外旋可動域の制限が少ない症例も散見される。そこで今回,反復性肩関節脱臼の外旋可動域に影響を与える因子と考えられる関節構造の破綻の有無と,身体機能特性として利き手・非利き手および肩甲骨アライメントを調査し,これらの因子と外旋可動域との関連を調査した。


【方法】対象疾患は一側の反復性肩関節脱臼とした。本研究の対象は,2013年11月から2015年10月の期間に当院で肩関節脱臼制動術を施行され,筆者がリハビリを担当し,術前理学療法を行った45名(男性40名,女性5名,年齢27.3±12.9歳)とした。調査項目は,(1)患側・健側の肩関節外旋可動域(第1肢位,第2肢位),(2)関節構造の破綻の有無,(3)利き手・非利き手,(4)肩甲骨アライメントとした。(1)外旋可動域の計測は,計測姿勢は背臥位とし,強い不安定性を有さない範囲での最大可動域とした。(2)関節構造の破綻の有無は,手術記録よりBankart lesion,Hill-Suchs lesion,SLAP lesionの有無について調査した。(3)利き手・非利き手は,患側が利き手か非利き手かを調査した。(4)肩甲骨アライメントは,上肢下垂位での自然立位における健側を基準とした相対評価として,患側肩甲骨の(a)挙上・下制,(b)前傾・後傾,(c)上方回旋・下方回旋,(d)内転・外転,(e)内旋・外旋の5つの項目を調査した。統計分析は,統計ソフト(SPSS statistics23 for Windows)を使用し,t検定ならびにχ2検定,一元配置分散分析,多重比較を用いて(1)と(2)~(4)の関連を調査した。有意水準は5%とした。


【結果】(1)外旋可動域と(2)関節構造の破綻の有無には有意な関連はなかった。(1)外旋可動域と(3)利き手・非利き手の関連では,患側が利き手の場合に第1肢位,第2肢位ともに外旋可動域が有意に大きい結果となった(P<0.05)。(1)外旋可動域と(4)肩甲骨アライメントの関連では,(c),(d)に有意な関連があった。患側肩甲骨が上方回旋位の場合,第1肢位の外旋可動域が有意に大きい結果となった(P<0.05)。患側肩甲骨が外転位の場合,第2肢位の外旋可動域が有意に大きい結果となった(P<0.05)。


【結論】今回の結果,関節の不安定性に大きく影響すると考えられる関節構造の破綻の有無は外旋可動域とは関連を認めなかった。また,身体機能特性としては,利き手・非利き手,肩甲骨アライメントともに有意な関連を示した。特に,反復性肩関節脱臼の外旋可動域は利き手・非利き手の影響が大きいと考えられた。今回の結果を踏まえると,術後の外旋可動域の目標値は利き手・非利き手などを考慮して決定していく必要があると考える。