第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P22

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-22-5] Motor Relearning Programを用いたアプローチ

下着着脱動作の獲得を目指して

花澤晃宏 (山口整形外科)

キーワード:Motor Relearning Program, Step, 下着着脱動作

【はじめに,目的】

Motor Relearning Program(以下MRP)は脳卒中後のリハビリにおいて身体機能,課題遂行能力の回復が従来の治療より効果的であるとRCT研究によって認められている(Chan DY,2006)。しかし,脳卒中においてはMRPを利用した研究は散見されるものの,整形外科領域において,その治療効果を示す研究は今のところ見受けられない。

そのため,今回は整形外科疾患において,MRPの「StepI~IV」に沿って治療を進めることで身体機能・課題遂行能力に向上に効果があるか検討した。

【方法】

77歳,女性,疾患名は右上腕骨頚部骨折。NEEDは下着の着脱動作。H25.11.24受傷,H26.1.9外来リハビリ開始(週1回)。2.20下着着脱動作練習開始,3.13下着着脱動作獲得。

評価はNumeric Rating Scale(以下NRS)は下着の着脱動作時に肩前方に4程度の伸張痛あり。下着着脱動作は仙骨レベルまで可能。ベッド-肩峰距離3.5指/2指,烏口突起-骨頭距離は右7mm/左4mm前方シフト,肩甲骨の前傾は右55°/左40°,可動域は2nd内旋45°/70°であった。MRPのSTEPI~IVの〈STEPI:動作分析〉〈STEPII:欠落要素の練習〉〈STEPIII:課題練習〉〈STEPIV:自主練〉に沿ってアプローチを進めた。

【結果】

3週間後にNRSは肩前方の伸張痛は消失し,ベッド-肩峰距離は2指/2指,烏口-骨頭距離は5mm前方シフト,肩甲骨の前傾は45°,可動域は2nd内旋70/70となり自己にて下着の着脱動作が可能となる。

【結論】

〈STEPI:動作分析〉では肩甲上腕関節の2nd内旋制限。結帯動作時に上腕骨頭の前方シフト,肩甲帯の前傾が過剰にみられた。〈STEPII:欠落要素の練習〉では2nd内旋,上腕骨頭の後方シフト,肩甲帯の後傾の改善を目指した。〈STEPIII:課題練習〉実際の下着の着脱動作を部分練習~全体練習と進め運動パターンの改善を図った。〈STEPIV:自主練〉学習の定着のため自宅にて2nd内旋,壁を背にした結帯動作の自動介助運動を行った。今回は〈STEPI〉では問題点を推論し,〈STEPII〉ではimpairmentレベルの改善を図り,〈STEPIII〉では運動パターンの改善を図り,〈STEPIV〉の自主練で日常への学習の転移を図った。このように,MRPは各STEPを計画的に行うことで整形疾患においても身体機能・課題遂行能力の回復に有効であると考えられる。しかし,他の運動療法との比較検討はできていないため有用性は明らかにできていない。今後は比較検討を進め有用性を明らかにする必要がある。