第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P23

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-23-5] 栄養状態および足部痛が足内在筋筋厚と足趾屈曲筋力に及ぼす影響

糟谷明彦 (神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科)

Keywords:足部内在筋, 超音波, 栄養

【はじめに,目的】

近年,超音波画像診断装置による足内在筋の筋萎縮の評価が行われるようになってきている。筋萎縮に影響する要因として,加齢以外に,痛みや栄養状態が考えられる。高齢者が足部痛を有する割合は15~25%にのぼるとされることから,足内在筋の萎縮を評価する場合は足部痛の有無を考慮する必要性がある。また近年の高齢者の栄養状態に関する報告により,低栄養が筋力低下に関与し,機能低下を助長するとされている。しかし,足部痛および栄養状態と足内在筋萎縮との関連を調べた研究は行われていない。そこで本研究では,地域在住高齢者の足内在筋筋厚を超音波画像により評価し,足部痛および栄養状態との関連を明らかにすることを目的にとした。

【方法】

対象は地域在住高齢者92名(平均年齢72.4±7.6歳,男性34名,女性58名)とした。足趾筋力測定器(竹井機器社製)を使用し,端坐位にて右側の足趾屈曲筋力(kg)の測定を行った。超音波画像診断装置(GEヘルスケア社製)を使用し,右側の足内在筋(短趾屈筋,短母趾屈筋,母趾外転筋,小趾外転筋)と,参考としての大腿四頭筋の筋厚(cm)を測定した。栄養状態については簡易栄養状態評価法(MNA:mini nutritional assessment)を用いて評価を行った。MNAは6項目14点満点であり,点数が高いほど栄養状態が良好であることを示す。また,右足部痛の有無について聴取した。統計学的検定として,足部痛の有無による筋厚と足趾筋力の違いをt検定で比較した。また,性別を調整した上で年齢とMNAスコア,足趾筋力,筋厚との偏相関を調べた。次に,性別と年齢で調整した上でMNAスコアと足趾筋力,筋厚との偏相関を調査した。有意水準は5%未満とした。

【結果】

足部痛有りは68名,無し24名であり,筋厚および足趾筋力に足部痛の有無による有意差はなかった。性別を調整した偏相関分析では,年齢は足趾筋力(r=-0.45),大腿四頭筋筋厚(r=-0.36),小趾外転筋筋厚(r=-0.25)と有意な負の相関を示したが,MNAスコアとは相関を示さなかった。年齢と性別を調整した偏相関分析では,MNAスコアと足趾筋力(r=0.24),大腿四頭筋筋厚(r=0.28),短趾屈筋筋厚(r=0.21),母趾外転筋筋厚(r=0.30)に正の相関が認められた。また足趾筋力は短趾屈筋筋厚との間に有意な正の相関(r=0.25)を示したが,他の内在筋筋厚とは相関が認められなかった。

【結論】

本研究の結果,足内在筋の萎縮に対する足部痛による影響は小さいことが示唆された。また高齢者の足内在筋萎縮の要因は筋により異なり,小趾外転筋は主に加齢による影響,短趾屈筋筋厚と母趾外転筋筋厚は栄養状態による影響が大きいことが示唆された。一方,短母趾屈筋については加齢や栄養状態による萎縮が起こりにくい筋であることが考えられた。さらに,高齢期の足趾筋力低下には,短母趾屈筋よりも短趾屈筋の萎縮による影響が大きいことが明らかとなった。