第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P27

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-27-6] 超高齢者の急速破壊型股関節症に対して人工股関節全置換術を行い,自宅退院が可能となった一例

吉川咲子1, 長正則1, 上地あゆみ1, 三箇島吉統2 (1.医療法人社団仁成会高木病院リハビリテーション科, 2.医療法人社団仁成会高木病院整形外科)

Keywords:急速破壊型股関節症, THA, 超高齢者

【はじめに】

急速破壊型股関節症(RDC)は,6ヵ月~1年以内の短期間に急激な股関節破壊をきたす原因不明の疾患群である。RDCに対する理学療法領域の報告は,国内外を含めて稀である。今回,RDCに対して人工股関節全置換術(THA)を施行し,自宅退院が可能となった超高齢者の一例を経験したので報告する。

【方法】

超高齢者のRDCに対し,手術前後のリハビリテーションの効果を評価・検討した。

症例は93歳男性。息子と2人暮らしであった。元々,歩行・ADLは自立していた。平成27年2月頃より右股関節痛が出現し歩行能力が低下したため,5月8日に当院を受診し,RDCと診断された。6月15日,手術目的で入院となり,同日理学療法(PT)・作業療法(OT)を開始した。6月17日,THAを施行した。術後1日目より全荷重可能となり,ROM拡大,筋力強化,車椅子乗車,脱臼予防指導を含めての日常生活動作(ADL)練習を開始した。術後7日目より歩行練習を開始し,術後30日目に自宅退院となった。

【結果】

術前,JOA score13点。右股関節ROMは屈曲70°,伸展-20°,外転25°。右股関節周囲は動作時痛強くMMT測定困難。左下肢MMT4∼5レベル。夜間痛強く,睡眠に支障あり。右股関節荷重時痛強く,歩行困難。移動は車椅子を使用し,免荷での移乗。FIM運動項目は52点で移乗・移動を中心にADL全般で介助が必要な状態。MMSE27点。

退院時,JOA score71点。右股関節ROMは屈曲105°,伸展10°,外転30°。MMT(右/左)大・中臀筋3/4,腸腰筋・大腿四頭筋・ハムストリングス4/5。運動時・荷重時痛,夜間痛は消失。手すり片手支持歩行および歩行器歩行自立。FIM運動項目72点。移動・更衣(下半身)において著しい改善あり。

【結論】

RDCは疼痛の程度が強く,運動時だけでなく安静時にも存在することが特徴である。本症例においても,荷重時痛および夜間痛によりROM制限だけでなく歩行やADLに支障をきたしていた。THA後,疼痛の改善および下肢筋力強化に伴い荷重がスムーズに行えるようになり,トイレまでの移動・トイレ動作が可能となった。また股関節の可動域の改善により,本人の希望であった更衣(下半身)が自立し,ADLにおいても高い満足感が得られた。

本症例は93歳と超高齢であったが,PT・OTの多職種介入でせん妄および認知面の低下を防止し,モチベーションを保てた。また元々の機能が高く罹患期間が短期であったことから,運動機能の低下が少なく,スムーズな自宅退院が可能になった。

今回の経験から,RDCに対するTHA後のPTは,疼痛,ROM,下肢筋力の改善の点で優位である可能性が示唆された。しかし,脱臼率の高さも指摘されており,脱臼防止肢位のコンプライアンスが重要である。今後症例を重ね,更なる検討をしていきたい。