第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P28

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-28-6] 人工膝関節置換術1週間クリニカルパスの実践報告

小澤翔太朗1, 添田航平1, 菊地薫2, 岩崎稔2, 安齋勇気2, 二瓶健司2 (1.三春町立三春病院, 2.公益財団法人星総合病院)

キーワード:TKA, クリニカルパス, 在院日数

【はじめに,目的】

人工膝関節置換術(TKA)後の早期運動療法が在院日数短縮に影響を与えることから,可及的早期に開始する有効性が指摘されている。術後翌日から運動療法を開始することは多くの病院で実践されているものの,我が国の在院日数は3週間で設定しているクリニカルパス(パス)がほとんどであり,欧米での1週間程度とは大きな開きが生じている。その理由として医療費の違いや包括的払い制度の普及化などが挙げられている。対象患者の早期QOL獲得や今後の医療情勢の流れからも,我が国における在院日数の更なる短縮が求められることは避けられない。そこで本研究はTKA 1週間のパスを作成し実際の症例で運用を進め,当地域においても実践可能かどうか検討することを目的とした。

【方法】

TKA 1週間パスは1日目に入院し2日目に手術施行,3日目から運動療法が開始となり7日目に自宅退院,そして退院当日から訪問リハビリテーション(リハ)を2週間継続して終了という在宅生活を含めた包括的な計画とした。症例は80代女性で独居,両側変形性膝関節症の診断で2015年6月に右TKA施行が決定した患者である。既往に当院で2014年6月に左TKAを施行しており,その際には3週間パスで自宅退院,術後28病日で独居再開に至っていた。この症例に対し前回手術の3週間パスを使用した結果と今回手術の1週間パスを使用した結果を用いて在宅生活での活動状況を比較検討した。評価項目はBarthel Index(BI),手段的日常生活活動(IADL),独居再開日とした。

【結果】

自宅での居住スペースが2階であったため階段昇降と独居可能な家事動作の再獲得を最終的な目標とし,入院中から在宅まで一貫したリハを展開した。手術翌日の1病日に運動療法を開始し,5病日には単独での四点杖歩行,見守りでの階段昇降が可能となり自宅退院に至った。その後,訪問リハを1日2回実施し8病日でT字杖歩行自立,9病日で階段昇降自立に至り,10病日に抜糸した以降は訪問リハを1日1回に減らし19病日で入浴が自立したため21病日で終了した。BIとIADLが入院前と同点数になったのは19病日で,前回に比べ9日間の短縮となった。また独居再開日は21病日で7日間の短縮となった。

【結論】

TKA 1週間パスを使用したことで,前回の手術と比較し早期に生活機能が再獲得され結果的に独居の再開も早まった。要因として退院後に自宅での住み慣れた環境下で動作練習を日常的に繰り返し実践でき,それを訪問で確認しながら行なえたことが挙げられる。また日数的な部分も含め明確な目標が掲げられたことで医療者側と患者側で統一した見解で進められたのも大きい。課題として入院費が高額療養費制度により同月であれば日数に関係なく同額のため,退院後の訪問費が上乗せされることで費用負担が増大することである。現実的には様々な難点もあるが患者側にとって有益性が高いため症例を積み重ねて検証していきたいと考える。