[P-MT-31-2] 人工膝関節全置換術後における外来理学療法の目標達成度について
~活動と参加に着目して~
キーワード:人工膝関節全置換術, 外来理学療法, 目標達成度
【はじめに】
人工膝関節全置換術(TKA)後の入院理学療法期間は短縮傾向にあり,退院後は短期間で効果的な外来理学療法の介入が求められる。しかし,TKA後の外来理学療法の介入効果に関する報告は少ない。そこで,本研究では,TKA患者において活動と参加に着目した1か月間の外来理学療法介入による目標達成度と身体機能の変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,初回TKAを施行し退院後に外来理学療法を継続した9名(66.5±7.8歳,男性2名,女性7名,入院術後日数24.4±10.2日)とした。除外基準は,退院後に外来理学療法を行わなかった者とした。評価は,目標達成度(実行度,満足度),膝関節角度,膝伸展筋力体重比,10m歩行,Timed up & Go test(TUG),日本語版膝機能評価法(準WOMAC)の下位尺度である疼痛と膝関節機能とし,外来理学療法初回時と1か月後に評価を行った。目標達成度は10段階とし,実行度,満足度についてそれぞれ評価した。目標の設定は,退院して1~4日後の外来初回時に「退院後に困難と感じたこと」を自由に記載させ,その内容から活動・参加に着目した2~3項目を選び,お互いに目標を共有し設定した。理学療法介入は,通常の理学療法に加え目標を意識した介入を週に2回,1か月間行った。統計解析には,時期の比較には対応のあるt検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
設定された目標項目の内訳は,自転車走行6名,公共交通機関の利用4名,長距離歩行4名,スムーズな階段昇降3名,買い物2名,仕事復帰2名であった(複数回答含む)。目標達成度の結果(初回時,1か月後)は,実行度(2.3±1.9,7.3±2.3),満足度(2.4±2.1,7.2±2.3)であり,1か月後に有意に改善が認められた。その他の項目で有意差が認められたものは,筋力(Nm/kg)(0.2±0.1,0.3±0.1),10m歩行(秒)(11.1±2.0,8.7±2.0),TUG(秒)(11.4±1.8,8.7±1.4)であった。
【結論】
外来における理学療法では,漫然とした機能改善だけでなく活動や参加に着目した理学療法が重要であると言われている。本研究の結果より,1か月という短期間の外来理学療法においても,活動と参加に着目した外来理学療法の目標達成度が有意に改善することが明らかとなった。これは,患者と理学療法士の間で目標を共有した上で介入したことが一つの要因だと考える。また,1か月の外来理学療法により,筋力,10m歩行時間,TUGが有意に改善されたことから,これらの項目は,入院の期間だけでなく,退院後の1か月でさらに改善すると考えられる。本研究は外来理学療法を実施する際の目標設定において,患者の満足できる要因を把握した上で,活動や参加に着目して介入することの重要性を示唆した研究である。今後,長期的な目標達成度の推移を検討するとともに,術後早期に得られた身体機能を在宅から社会生活へどのように生かし拡大していくのか,行動変容も含めた介入が課題である。
人工膝関節全置換術(TKA)後の入院理学療法期間は短縮傾向にあり,退院後は短期間で効果的な外来理学療法の介入が求められる。しかし,TKA後の外来理学療法の介入効果に関する報告は少ない。そこで,本研究では,TKA患者において活動と参加に着目した1か月間の外来理学療法介入による目標達成度と身体機能の変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,初回TKAを施行し退院後に外来理学療法を継続した9名(66.5±7.8歳,男性2名,女性7名,入院術後日数24.4±10.2日)とした。除外基準は,退院後に外来理学療法を行わなかった者とした。評価は,目標達成度(実行度,満足度),膝関節角度,膝伸展筋力体重比,10m歩行,Timed up & Go test(TUG),日本語版膝機能評価法(準WOMAC)の下位尺度である疼痛と膝関節機能とし,外来理学療法初回時と1か月後に評価を行った。目標達成度は10段階とし,実行度,満足度についてそれぞれ評価した。目標の設定は,退院して1~4日後の外来初回時に「退院後に困難と感じたこと」を自由に記載させ,その内容から活動・参加に着目した2~3項目を選び,お互いに目標を共有し設定した。理学療法介入は,通常の理学療法に加え目標を意識した介入を週に2回,1か月間行った。統計解析には,時期の比較には対応のあるt検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
設定された目標項目の内訳は,自転車走行6名,公共交通機関の利用4名,長距離歩行4名,スムーズな階段昇降3名,買い物2名,仕事復帰2名であった(複数回答含む)。目標達成度の結果(初回時,1か月後)は,実行度(2.3±1.9,7.3±2.3),満足度(2.4±2.1,7.2±2.3)であり,1か月後に有意に改善が認められた。その他の項目で有意差が認められたものは,筋力(Nm/kg)(0.2±0.1,0.3±0.1),10m歩行(秒)(11.1±2.0,8.7±2.0),TUG(秒)(11.4±1.8,8.7±1.4)であった。
【結論】
外来における理学療法では,漫然とした機能改善だけでなく活動や参加に着目した理学療法が重要であると言われている。本研究の結果より,1か月という短期間の外来理学療法においても,活動と参加に着目した外来理学療法の目標達成度が有意に改善することが明らかとなった。これは,患者と理学療法士の間で目標を共有した上で介入したことが一つの要因だと考える。また,1か月の外来理学療法により,筋力,10m歩行時間,TUGが有意に改善されたことから,これらの項目は,入院の期間だけでなく,退院後の1か月でさらに改善すると考えられる。本研究は外来理学療法を実施する際の目標設定において,患者の満足できる要因を把握した上で,活動や参加に着目して介入することの重要性を示唆した研究である。今後,長期的な目標達成度の推移を検討するとともに,術後早期に得られた身体機能を在宅から社会生活へどのように生かし拡大していくのか,行動変容も含めた介入が課題である。