[P-MT-31-4] 人工膝関節全置換術患者における片脚立位動作課題時の膝周囲筋の同時収縮について
Keywords:人工膝関節全置換術, 片脚立位動作, 同時収縮
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(膝OA)は高齢者に多く,膝関節を構成する組織の退行変性を基盤に発症する疾患である。重篤な膝OAに対しては主に疼痛除去と機能改善を目的とした人工膝関節全置換術(TKA)が施行される。これまで,膝OA患者の筋活動に関して,歩行周期において外側広筋と大腿二頭筋の同時収縮が増加することが報告されている。ある局所の障害では筋協調性を変化させることで動作時の姿勢安定性を供給している可能性が推察される。これまで膝OA患者の膝関節周囲筋の同時収縮についての報告は散見されるものの,TKA後の膝関節周囲筋の同時収縮について姿勢制御課題を用いた検討は見られない。本研究の目的は,片脚立位動作課題を用いて,TKA患者の膝関節周囲筋の同時収縮について検討することである。
【方法】
対象はTKA後4週が経過した女性7名(平均年齢69.0±7.0歳,身長151.3±7.3cm,体重59.5±4.4kg)と対照群として健常高齢女性7名(平均年齢67.6±6.3歳,身長159.3±7.5cm,体重59.3±10.3kg)とした。
施行動作は,両上肢を対側に位置させた両脚立位を開始肢位とし,合図とともに下肢を挙上させ片脚立位となる動作とし,3秒間片脚立位姿勢を保持させた。TKA患者は術側および非術側,対照群は利き足について測定を実施した。同時収縮の測定は,Noraxon社製筋電計を使用し,導出筋は外側広筋と大腿二頭筋とした。片脚立位動作を姿勢移行時(移行時)と片脚立位保持時(保持時)に区分し,それぞれの区間における同時収縮についてKellisらの方法に準じて,次の式からco-contraction index(以下CI)について算出した。CI=外側広筋peak時における大腿二頭筋の筋活動/外側広筋の筋活動+大腿二頭筋の筋活動。
統計学的分析として,TKA患者の術側,非術側および対照群のCIの比較に一元配置分散分析および多重比較としてBonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
TKA患者の術側,非術側および対照群の比較について,移行時では各群間におけるCIに有意な差が認められなかった。保持時の各群のCIにおいて,術側(39.0±16.6%)が対照群(19.3±8.5%)と比較して有意に高値を示した(P<0.05)。その他の群間に有意な差は認められなかった。
【結論】
本研究結果から,TKA患者の術側は対照群と比較して,保持時のCIが有意に高くなることが観察された。瀬戸川らは膝OA群の歩行時膝周囲筋のCIを分析し,立脚中期では健常群と比較して膝OA群で有意にCIが増大すると述べている。TKA患者の術側では片脚立位動作での膝関節の不安定性を代償するために,ハムストリングスの活動を増加させることで関節安定性を供給し,姿勢制御の安定化を図っている可能性が示唆された。今後は症例数を増やすとともに,歩行などの動作時におけるより詳細な検討が必要である。
変形性膝関節症(膝OA)は高齢者に多く,膝関節を構成する組織の退行変性を基盤に発症する疾患である。重篤な膝OAに対しては主に疼痛除去と機能改善を目的とした人工膝関節全置換術(TKA)が施行される。これまで,膝OA患者の筋活動に関して,歩行周期において外側広筋と大腿二頭筋の同時収縮が増加することが報告されている。ある局所の障害では筋協調性を変化させることで動作時の姿勢安定性を供給している可能性が推察される。これまで膝OA患者の膝関節周囲筋の同時収縮についての報告は散見されるものの,TKA後の膝関節周囲筋の同時収縮について姿勢制御課題を用いた検討は見られない。本研究の目的は,片脚立位動作課題を用いて,TKA患者の膝関節周囲筋の同時収縮について検討することである。
【方法】
対象はTKA後4週が経過した女性7名(平均年齢69.0±7.0歳,身長151.3±7.3cm,体重59.5±4.4kg)と対照群として健常高齢女性7名(平均年齢67.6±6.3歳,身長159.3±7.5cm,体重59.3±10.3kg)とした。
施行動作は,両上肢を対側に位置させた両脚立位を開始肢位とし,合図とともに下肢を挙上させ片脚立位となる動作とし,3秒間片脚立位姿勢を保持させた。TKA患者は術側および非術側,対照群は利き足について測定を実施した。同時収縮の測定は,Noraxon社製筋電計を使用し,導出筋は外側広筋と大腿二頭筋とした。片脚立位動作を姿勢移行時(移行時)と片脚立位保持時(保持時)に区分し,それぞれの区間における同時収縮についてKellisらの方法に準じて,次の式からco-contraction index(以下CI)について算出した。CI=外側広筋peak時における大腿二頭筋の筋活動/外側広筋の筋活動+大腿二頭筋の筋活動。
統計学的分析として,TKA患者の術側,非術側および対照群のCIの比較に一元配置分散分析および多重比較としてBonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
TKA患者の術側,非術側および対照群の比較について,移行時では各群間におけるCIに有意な差が認められなかった。保持時の各群のCIにおいて,術側(39.0±16.6%)が対照群(19.3±8.5%)と比較して有意に高値を示した(P<0.05)。その他の群間に有意な差は認められなかった。
【結論】
本研究結果から,TKA患者の術側は対照群と比較して,保持時のCIが有意に高くなることが観察された。瀬戸川らは膝OA群の歩行時膝周囲筋のCIを分析し,立脚中期では健常群と比較して膝OA群で有意にCIが増大すると述べている。TKA患者の術側では片脚立位動作での膝関節の不安定性を代償するために,ハムストリングスの活動を増加させることで関節安定性を供給し,姿勢制御の安定化を図っている可能性が示唆された。今後は症例数を増やすとともに,歩行などの動作時におけるより詳細な検討が必要である。