第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P32

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-32-1] 鏡視下腱板修復術後の筋力低下残存症例において困難となる日常生活動作の検討

清水康史1, 渡邉奈津希1, 島洋祐2, 小林尚史2 (1.KKR北陸病院リハビリテーション室, 2.KKR北陸病院整形外科)

Keywords:鏡視下腱板修復術, 筋力評価, 日常生活動作

【はじめに,目的】鏡視下腱板修復術は良好な術後成績が報告されているが,術前の筋萎縮,筋脂肪変性といった断裂腱の質や術後の再断裂によって,筋力低下の残存する症例にしばしば遭遇する。筋力低下が著しい場合,挙上や空間位保持能力の低下によって困難となる日常生活動作が生じるが,具体的な生活動作を検討した報告はない。本研究の目的は,腱板修復術後の筋力低下残存症例における患者立脚肩関節評価法(Shoulder 36 V.1.3:以下Sh36)の詳細な検討から困難となる生活動作を明らかにし,ADL指導の一助とすることである。


【方法】2011年4月~2014年10月に当院で鏡視下腱板修復術を施行し,筋力低下残存を認めた8例(筋力低下群:69.6±12.4歳,術後21.6±14.5か月,下垂位外旋筋力1.9±0.7kgf,外転筋力2.2±2.0kgf)を対象とした。筋力低下残存の定義としては,術後1年以上経過後における徒手筋力測定器を用いた筋力評価で下垂位外旋筋力が3kgf未満とした。断裂サイズは全例大~広範囲断裂であり,術後1年時のMRI評価でSugaya分類IV・Vの再断裂を4例に認めた。また同時期に鏡視下腱板修復術を行い,筋力低下を認めなかった10例をコントロール群(CON群:64.8±9.9歳,術後17.9±9.7か月,下垂位外旋筋力6.5±1.4kgf,外転筋力7.3±1.8kgf)とした。断裂サイズは中断裂以下8例,大~広範囲断裂2例であった。測定項目は,自動可動域(屈曲,下垂位外旋),他動可動域(屈曲,下垂位外旋,90°外転位内外旋),Sh36の各ドメインの点数および下位項目とした。統計学的解析は対応のないt検定を用い,有意水準は5%未満とした。


【結果】自動可動域(筋力低下群/CON群)において,屈曲(118.1±29.3°/139.5±15.5°)では有意差を認めなかったが,下垂位外旋(20.6±10.2°/47.5±13.8°)では筋力低下群がCON群よりも低値を示した。他動可動域において,屈曲(147.5±16.3°/156.0±9.4°),90°外転位内旋(23.8±13.6°/34.5±9.6°)では有意差を認めなかったが,下垂位外旋(38.8±8.3°/51.5±11.8°),90°外転位外旋(62.5±24.9°/84.5±8.0°)では筋力低下群がCON群よりも低値を示した。Sh36に関して,ドメインの比較では筋力,健康感,日常生活機能の領域で筋力低下群がCON群よりも低値を示した。さらに下位項目では「調味料に手を伸ばしてとる」,「頭より上の棚に皿を置く」,「目の高さの窓を拭く」,「つり革につかまる」などの項目で筋力低下群がCON群よりも低値を示した。


【結論】腱板修復術後の著明な筋力低下残存症例では,外旋lagが生じることで他動可動域においても外旋制限が残存し,生活動作においては目標物へのリーチ動作や挙上位で上肢を使用するような耐久性を要する動作が困難な動作として推測される。したがって,断裂サイズの大きな症例では外旋筋力と外旋可動域を獲得していくとともに,これらの動作に対するADL指導が重要であると考えられる。