第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P33

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-33-1] 超高齢者における大腿骨近位部骨折後の退院先と身体機能改善の関係

大岡恒雄1,2, 浦辺幸夫2, 前田慶明2, 島俊也1, 鈴木雄太1, 白川泰山1 (1.マッターホルンリハビリテーション病院, 2.広島大学大学院医歯薬保健学研究科)

Keywords:超高齢者, 大腿骨近位部骨折, 退院先

【はじめに,目的】

超高齢社会の到来により,当院では85歳あるいは90歳以上のいわゆる超高齢者の大腿骨近位部骨折患者の術後の理学療法の機会が増加している。これまで大腿骨近位部骨折患者の退院先や身体機能改善に関する報告がなされているが,超高齢者での報告は少ない。

本研究は,90歳以上の対象が他の年齢層と比較しどのような違いがあるかを明らかにし,効果的な理学療法の一助になることを目的とした。




【方法】

対象は,平成24年6月1日~平成27年8月1日の3年2カ月の期間,当院にて手術後に入院治療した80歳以上の大腿骨近位部骨折患者女性92名とした。対象を80歳から5歳ごとに3群に分けた(80~84歳群28名,85~89歳群32名,90歳以上群32名)。各群で受傷前の生活場所と退院先,年齢,身長,体重,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),在院日数,入・退院時の10m歩行時間および術測の等尺性膝伸展筋力,機能的自立度評価表(FIM)を調査した。統計学的分析は,各群の調査項目の比較に一元配置分散分析を行った。危険率は5%未満を有意とした。




【結果】

80~84歳群の受傷前の生活場所は自宅25名(91%),施設3名(9%)であり,退院先は自宅24名(86%),施設3名(11%),転院1名(3%),死亡0名であった。85~89歳群では同様に自宅31名(97%),施設1名(3%)であり,退院先は自宅22名(69%),施設9名(28%),転院1名(3%),死亡0名であった。90歳以上群では同様に自宅29名(89%),施設3名(11%)であり,退院先は自宅15名(47%),施設13名(41%),転院1名(3%),死亡3名(9%)であった。

体重(kg)は(80~84歳群,85~89歳群,90歳以上群),46.3±9.3,43.5±5.8,39.8±7.8であった。入院時10m歩行時間(秒)は15.1±8.0,21.6±13.3,30.1±14.6であり,退院時は10.4±3.5,14.6±6.5,19.1±8.9であった。入院時術測等尺性膝伸展筋力(N/kg)は2.2±0.6,1.7±0.6,1.5±0.5であり,退院時は2.7±0.7,2.3±0.8,2.3±0.7であった。入院時FIM(点)は92.8±16.7,84.5±23.0,70.6±18.2であり,退院時は105.7±16.8,94.3±18.7,83.6±20.5であった。

80~84歳群と85~89歳群では入・退院時の術測等尺性膝伸展筋力に有意差がみられた(p<0.05)。85~89歳群と90歳以上群では入・退院時の10m歩行時間と入院時FIMに有意差がみられた(p<0.05)。80~84歳群と90歳以上群では体重,入・退院時の10m歩行時間,入・退院時の術測等尺性膝伸展筋力,入・退院時のFIMに有意差がみられた(p<0.05)。




【結論】

80~84歳群は,入院時から85~89歳群の退院時の歩行,下肢筋力,日常生活動作能力をすでに有しており自宅復帰率は高かった。90歳以上群の自宅復帰率は80~84歳群と比べ約39%低く,85~89歳群では約22%低かった。90歳以上群では退院までに歩行,下肢筋力,FIMの向上に向けた理学療法を提供し,それらの機能の改善が自宅復帰の可否に影響すると考える。