[P-MT-33-3] 大腿骨近位部骨折患者の術前栄養状態と術後ADLの関連
キーワード:大腿骨近位部骨折, 栄養, ADL
【はじめに,目的】
急性期病院では入院患者の多くが栄養障害を認めることが報告されている。また,先行研究では高齢者の大腿骨近位部骨折では約半数の患者で受傷時から低栄養を認めたという報告もある。その一方,術前の栄養状態と術後ADLや身体機能などのリハビリテーションアウトカムとの関連性について多角的に評価した研究は少ない。そこで今回は,大腿骨近位部骨折で入院した患者の術前栄養状態を評価し,術後のADL,身体機能の改善との関連について検討した。
【方法】
対象は平成27年7月1日から10月10日の期間に当院で大腿骨近位部骨折の手術を施行した65歳以上の患者52名のうち,術後免荷期間を要した9名と認知機能が低下し評価困難であった20名を除いた患者23名(男性4名,女性19名,平均79.9歳)とした。簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional AssessmentⓇ-Short Form:以下MNA-SF)を用いて術前に栄養良好群(12-14points),リスク群(8-11points),低栄養群(0-7points)に分類し,年齢,性別,術前臥床期間,術前の血清アルブミン値(以下Alb),退院時歩行自立度,術後1週から2週のBMIとFIM運動項目および握力の変化量を比較した。統計解析は,SPSS statistics20(IBM)を使用して3群間の比較に一元配置分散分析を実施し,有意差が認められた項目に対して多重比較法(Tukey HSD法)を実施,また全対象者における各項目の関連をピアソンの相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
MNA-SFの平均得点は10.5±3.36点で栄養良好群(10名43%,平均年齢75.2歳),リスク群(7名30%,平均年齢83.5歳),低栄養群(6名,26%,平均年齢83.5歳)であった。群間比較の結果FIM変化量に関して栄養良好群がリスク群に対して,リスク群が低栄養群に対して有意な増大を認めた。歩行自立度に関して栄養良好群が低栄養群に対し有意に高かった。Albに関して栄養良好群がリスク群に対して有意に高い値を示した。また,各項目の相関に関して,MNA-SFはFIM変化量(r=0.45,P=0.029)と歩行自立度(r=0.55,P=0.006)において,歩行自立度はFIM変化量(r=0.49,P=0.018)とAlb(r=0.57,P=0.004)に優位な相関関係を認め,MNA-SFはAlbと有意な相関傾向を認めた(r=0.41,P=0.051)。
【結論】
術前栄養状態が良好であれば術後FIMの改善が高いこと,歩行の介助量が軽減することから,ADLの改善に影響があると考える。術前の栄養状態が良好であることは術後に筋肉の同化が促され筋力改善に繋がり身体機能の改善に繋がったと考える。また,本研究結果は短期的なものであり,今後は長期的な変化を評価および検討していく必要があると考える。
急性期病院では入院患者の多くが栄養障害を認めることが報告されている。また,先行研究では高齢者の大腿骨近位部骨折では約半数の患者で受傷時から低栄養を認めたという報告もある。その一方,術前の栄養状態と術後ADLや身体機能などのリハビリテーションアウトカムとの関連性について多角的に評価した研究は少ない。そこで今回は,大腿骨近位部骨折で入院した患者の術前栄養状態を評価し,術後のADL,身体機能の改善との関連について検討した。
【方法】
対象は平成27年7月1日から10月10日の期間に当院で大腿骨近位部骨折の手術を施行した65歳以上の患者52名のうち,術後免荷期間を要した9名と認知機能が低下し評価困難であった20名を除いた患者23名(男性4名,女性19名,平均79.9歳)とした。簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional AssessmentⓇ-Short Form:以下MNA-SF)を用いて術前に栄養良好群(12-14points),リスク群(8-11points),低栄養群(0-7points)に分類し,年齢,性別,術前臥床期間,術前の血清アルブミン値(以下Alb),退院時歩行自立度,術後1週から2週のBMIとFIM運動項目および握力の変化量を比較した。統計解析は,SPSS statistics20(IBM)を使用して3群間の比較に一元配置分散分析を実施し,有意差が認められた項目に対して多重比較法(Tukey HSD法)を実施,また全対象者における各項目の関連をピアソンの相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
MNA-SFの平均得点は10.5±3.36点で栄養良好群(10名43%,平均年齢75.2歳),リスク群(7名30%,平均年齢83.5歳),低栄養群(6名,26%,平均年齢83.5歳)であった。群間比較の結果FIM変化量に関して栄養良好群がリスク群に対して,リスク群が低栄養群に対して有意な増大を認めた。歩行自立度に関して栄養良好群が低栄養群に対し有意に高かった。Albに関して栄養良好群がリスク群に対して有意に高い値を示した。また,各項目の相関に関して,MNA-SFはFIM変化量(r=0.45,P=0.029)と歩行自立度(r=0.55,P=0.006)において,歩行自立度はFIM変化量(r=0.49,P=0.018)とAlb(r=0.57,P=0.004)に優位な相関関係を認め,MNA-SFはAlbと有意な相関傾向を認めた(r=0.41,P=0.051)。
【結論】
術前栄養状態が良好であれば術後FIMの改善が高いこと,歩行の介助量が軽減することから,ADLの改善に影響があると考える。術前の栄養状態が良好であることは術後に筋肉の同化が促され筋力改善に繋がり身体機能の改善に繋がったと考える。また,本研究結果は短期的なものであり,今後は長期的な変化を評価および検討していく必要があると考える。