第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P34

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-34-2] 大腿四頭筋腱断裂術後の理学療法経験

中川裕大, 市田貴久 (京都民医連中央病院)

Keywords:大腿四頭筋腱断裂, 理学療法, 関節可動域

【はじめに,目的】

大腿四頭筋腱断裂は膝伸展機構損傷の中でも稀である。今回,基礎疾患に痛風を持ち,介達外力により大腿四頭筋腱断裂をきたした症例の一次修復術後の理学療法を経験したので報告する。


【方法】

55歳男性。事務職。身長171cm,体重87kg,BMI29.7。既往歴に痛風。公園内の川の土手を降りようとジャンプして,着地の際に受傷。左大腿四頭筋腱断裂の診断にて受傷3日目に腱縫合術施行。膝蓋骨上縁の剥離骨折を伴った大腿四頭筋腱完全断裂,内側・外側広筋の部分断裂を認めた。大腿四頭筋腱と膝蓋骨の断面には白色沈着物を認めた。糸付きアンカー2本を膝蓋骨に打ち1本につきマットレス縫合2ヶ所の全4ヶ所で腱縫合。内側・外側広筋は吸収糸にて縫合した。


【結果】

術翌日より膝装具にて伸展位固定し,完全免荷での松葉杖歩行開始。術後3日目より疼痛のない範囲で筋組織,膝関節周囲軟部組織,膝蓋骨モビライゼーション,セッティング運動開始。術後8日目に退院。職場復帰され,以降週1回の外来理学療法継続となった。退院時の荷重量はタッチゲイトであった。術後3週より1/3荷重開始。5週より2/3荷重開始し,角度調節機能付き膝装具にて屈曲45°に調整。以降,週に15°ずつ屈曲角度を拡大した。術後7週より全荷重開始。9週で独歩可能となり10週よりスクワット,ランジなど荷重位運動開始。術後11週で支柱付サポーターに変更。術後16週よりジャンプ,ジョギングなどの高負荷運動開始。術後18週でサポーター除去となった。膝関節屈曲ROMの推移は術後6週で50°,10週130°,19週145°となり22週目には正座可能となった。筋力は徒手筋力計測器μTasF-1にて測定し筋力体重比(kgf/kg×100%)を算出。術後10週で27.6,27週62.4,57週100.4と健側比87%まで改善。階段降段時にわずかに不安感の訴えがあるが日常生活には支障ないレベルとなった。


【結論】

大腿四頭筋腱断裂は,慢性腎不全,糖尿病,関節リウマチ,痛風などの基礎疾患を有する患者に発生しやすい。さらに,加齢や肥満も腱の脆弱性をきたす危険因子と報告されている。病理検査は行っていないが本症例もそれらの要因に介達外力が加わり発生したものと考えられる。腱縫合術後は再断裂を防止しながら腱機能を獲得するという相反する治療が必要であるため腱の縫合強度や修復過程を考慮して運動療法を行う必要がある。一次修復術に加え自家腱や人工靭帯による補強術を行うことで早期関節可動域練習が可能となるとの報告もあるが本症例は一次修復術後,約5週間の膝伸展位固定を行った。拘縮が懸念される中で良好な関節可動域が得られたのは筋組織や膝周囲軟部組織の柔軟性,膝蓋骨可動性低下に留意しアプローチを行ったためと考える。また,比較的早期荷重できたため筋収縮が促せたことも要因と考える。筋力は約1年で健側とほぼ同等まで改善したが各種運動の開始時期や頻度,負荷量については検討が必要であると考えられた。