[P-MT-34-3] 両脚スクワットにおいて骨盤の前後傾が下肢回旋角度に与える影響
Keywords:スクワット, 骨盤傾斜角, 三次元動作解析
【はじめに,目的】
両脚スクワットは,前後方向に不安定な状況下で,骨盤の角度の安定性を高める能力を得るのに有効な運動として,下肢関節疾患や術後,あるいは転倒予防として臨床場面で頻用されている。運動連鎖に伴う平衡反応の程度によって,下肢関節の力学的負荷は大きく変化するといわれている。しかし,骨盤の肢位が下肢関節の回旋角度にどのように影響を及ぼすか明らかにされていない。本研究では,骨盤前傾位と後傾位でのスクワット動作が下肢関節の回旋角度に及ぼす影響について検討することを目的とした。
【方法】
対象は膝関節に外傷,手術の既往がない健常若年女性10名(21.5±0.7歳,全員右利き)であった。骨盤の肢位は前傾位と後傾位の2条件でスクワット動作を行った。スクワット動作について,被験者は肩幅に両足を開き,両腕を胸の前で組み,できるだけ前方を注視ながら,自分のペースで行った。スクワット施行中,検者は被験者の矢状面から骨盤の肢位を観察し,条件を満たしているかどうか,確認した。施行順序は被験者によってランダムに実施した。スクワット中の骨盤と利き足の下肢関節の角度について,三次元動作解析装置(VICON MX,Oxford Metrics社製)を用いて計測した。各条件3回施行し,平均値を採用した。膝関節屈曲15,30,45°時点の股関節・膝関節・足関節の回旋角度から回帰直線を描き,その傾きを求めた。統計学的手法としては,2条件の傾きについて,正規性が認められれば対応のあるt検定,正規性が認められなければWilcoxon符号付き順位検定を用いて5%水準にて有意判定を行った。
【結果】
膝関節45°屈曲位時点で骨盤後傾位が保たれていなかった2名のデータを除外し,被験者8名のデータを解析した。いずれの条件においても,膝関節が屈曲するにつれて股関節は内旋,足関節は外旋した。2条件の回帰曲線の傾きを比較した結果,後傾位に比べて骨盤前傾位では股関節回旋(p<0.01)の傾きが小さく,膝関節回旋(p<0.05)の傾きが有意に大きい結果となった。すなわち,骨盤後傾位でのスクワット動作では膝関節屈曲につれて股関節の内旋が大きく,膝関節の外旋が大きい結果となった。
【結論】
本結果より,骨盤の肢位によってスクワット動作中の膝関節屈曲に伴う股関節と膝関節の回旋する比率が異なることが明らかとなった。すなわち骨盤後傾位では大腿骨の内旋が大きくなる結果となった。これは後方に変位する重心を安定化させるための姿勢制御として起こっていることが予測された。すなわち,骨盤後傾による重心の後方化に対して,平衡反応として股関節の内旋を増大させることで股・膝関節の安定化を得ていると考える。本結果からスクワット動作を実施する際は骨盤の肢位を考慮して指導する必要があることが示唆された。今後は,性差や下肢関節疾患の影響を含めて分析を行う必要がある。
両脚スクワットは,前後方向に不安定な状況下で,骨盤の角度の安定性を高める能力を得るのに有効な運動として,下肢関節疾患や術後,あるいは転倒予防として臨床場面で頻用されている。運動連鎖に伴う平衡反応の程度によって,下肢関節の力学的負荷は大きく変化するといわれている。しかし,骨盤の肢位が下肢関節の回旋角度にどのように影響を及ぼすか明らかにされていない。本研究では,骨盤前傾位と後傾位でのスクワット動作が下肢関節の回旋角度に及ぼす影響について検討することを目的とした。
【方法】
対象は膝関節に外傷,手術の既往がない健常若年女性10名(21.5±0.7歳,全員右利き)であった。骨盤の肢位は前傾位と後傾位の2条件でスクワット動作を行った。スクワット動作について,被験者は肩幅に両足を開き,両腕を胸の前で組み,できるだけ前方を注視ながら,自分のペースで行った。スクワット施行中,検者は被験者の矢状面から骨盤の肢位を観察し,条件を満たしているかどうか,確認した。施行順序は被験者によってランダムに実施した。スクワット中の骨盤と利き足の下肢関節の角度について,三次元動作解析装置(VICON MX,Oxford Metrics社製)を用いて計測した。各条件3回施行し,平均値を採用した。膝関節屈曲15,30,45°時点の股関節・膝関節・足関節の回旋角度から回帰直線を描き,その傾きを求めた。統計学的手法としては,2条件の傾きについて,正規性が認められれば対応のあるt検定,正規性が認められなければWilcoxon符号付き順位検定を用いて5%水準にて有意判定を行った。
【結果】
膝関節45°屈曲位時点で骨盤後傾位が保たれていなかった2名のデータを除外し,被験者8名のデータを解析した。いずれの条件においても,膝関節が屈曲するにつれて股関節は内旋,足関節は外旋した。2条件の回帰曲線の傾きを比較した結果,後傾位に比べて骨盤前傾位では股関節回旋(p<0.01)の傾きが小さく,膝関節回旋(p<0.05)の傾きが有意に大きい結果となった。すなわち,骨盤後傾位でのスクワット動作では膝関節屈曲につれて股関節の内旋が大きく,膝関節の外旋が大きい結果となった。
【結論】
本結果より,骨盤の肢位によってスクワット動作中の膝関節屈曲に伴う股関節と膝関節の回旋する比率が異なることが明らかとなった。すなわち骨盤後傾位では大腿骨の内旋が大きくなる結果となった。これは後方に変位する重心を安定化させるための姿勢制御として起こっていることが予測された。すなわち,骨盤後傾による重心の後方化に対して,平衡反応として股関節の内旋を増大させることで股・膝関節の安定化を得ていると考える。本結果からスクワット動作を実施する際は骨盤の肢位を考慮して指導する必要があることが示唆された。今後は,性差や下肢関節疾患の影響を含めて分析を行う必要がある。