第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P34

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-34-5] 内側膝蓋大腿靭帯再建術後における膝関節屈曲角度とCongruence angleの関係性についての検討

須貝勝, 井上元保, 安孫子修 (伊勢原協同病院)

キーワード:内側膝蓋大腿靭帯再建術, 膝ROM, Congruence angle

【はじめに,目的】

近年,膝蓋骨脱臼に対して内側膝蓋大腿靭帯(以下,MPFL)再建術が導入されており,概ね良好な結果が得られている。また,我々の先行研究より,術後早期からの膝関節屈曲可動域運動実施の妥当性及び安全性が示唆されている。一方,術後膝関節完全屈曲可動域(以下,膝ROM)獲得日数には個人差があり,その原因については明らかではない。今回,当院におけるMPFL再建術後の膝関節完全屈曲可動域獲得日数,ならびに膝蓋骨脱臼の指標であるCongruence angleとの関係性について調査を行った。その結果を踏まえた上で,膝ROM獲得の予後推測について検討したので報告する。



【方法】

対象は2006年12月~2014年8月までに当院にて人工靭帯(LK-15)を用いMPFL再建術を施行した反復性膝蓋骨脱臼患者のうち,経過を追うことができた21例24膝(平均年齢27.00(±9.80)歳,男性2名2膝,女性19名22膝)である。方法は,膝ROM獲得日,術前及び術後1年後の単純X線画像からCongruence angle(正常値-6±11°)を測定した。次に膝ROM獲得日の平均値より早期屈曲角度獲得群(以下,早期群)と遅延屈曲角度獲得群(以下,遅延群)に分類し,各群の術前及び術後1年後のCongruence angleを比較した。統計処理はt検定,ピアソンの相関係数を用いた。



【結果】

膝ROM獲得日は平均89.71(±30.55)日であった。Congruence angleは,術前では,平均20.56(±22.47)°であったが,術後1年後では平均-1.83(±17.96)°と正常化した。次に,膝ROM獲得日の早期群,遅延群とCongruence angleとの関係性については,早期群は17例,平均58.53(±18.76)日,Congruence angleは,術前では,平均18.74(±19.59)°であったが,術後1年後では-1.71(±16.50)°であった。一方,遅延群は7例,平均165.43(±77.43)日,Congruence angleは,術前では,各平均25.00(±30.19)°であったが,術後1年後では平均-2.14(±19.95)°であった。術前術後のCongruence angleと膝屈曲ROMとの相関については明らかな有意差を認めなかった。



【結論】

術前術後のCongruence angleと膝ROM改善には明らかな関連がみられなかった。膝蓋大腿関節における膝蓋骨内側支持機構については,機能解剖学的および生体力学的研究からMPFLが第一制御因子と証明されている。一方,外側支持機構については,外側広筋,腸脛靱帯,外側膝蓋支帯などが挙げられる。このため,MPFL再建術により膝蓋骨アライメントが矯正されることで腸脛靭帯や外側広筋の過緊張が生じ,膝ROM改善に影響を与えると考えた。したがって,MPFL再建術後の理学療法は,膝蓋骨支持機構及び膝蓋骨脱臼の病態を理解した上で,再建靱帯へのストレスを考慮して実施する必要がある。本研究においては,術前Congruence angleが膝ROM獲得を予後推測する指標は明らかとなかったが,今後研究を重ねて,新たな指標を提示していきたい。