[P-MT-36-1] 安静座位における脊柱アライメントが立ち上がり動作に与える影響
キーワード:立ち上がり, 脊柱アライメント, 三次元動作解析
【はじめに,目的】
脊柱アライメントの差異が立ち上がり動作時の体幹および下肢の運動に及ぼす影響についての報告はみられない。本研究では,安静座位での脊柱アライメントが立ち上がり動作に与える影響について分析・検討した。
【方法】
対象は,体幹・下肢の整形外科疾患の既往を有さない若年健常者13名とした。脊柱アライメントの測定には,SPINAL MOUSE(Index社)を用いた。算出項目は,安静座位での胸椎後弯角,腰椎後弯角とした(後弯が正の値)。体幹・下肢の運動計測には,三次元動作分析装置(VICON社)および床反力計(AMTI社)を用いた。赤外線反射マーカの貼付はPlug-in-Gait Full body modelに準じて行った。なお解析対象は,離殿から質量中心鉛直方向移動速度が最大値を示す時点までとした。
パラメータとしては,最大股・膝関節伸展モーメント,股・膝関節伸展の角力積を算出した。また,膝関節伸展モーメントが最大を示した時点での膝関節モーメントアームを算出した。さらには,体幹前傾角,胸部屈曲角,骨盤前傾角,股関節屈曲角を求めた。
安静座位における脊柱アライメントと,体幹・下肢の各パラメータの関係については,Spearman順位相関係数を用いて分析を行った(有意水準5%未満)。
【結果】
腰椎後弯角と最大膝関節伸展モーメントでの胸部屈曲角で正の相関(離殿時:r=0.637,p<0.194,最大膝関節伸展モーメント時:r=0.676,p<0.011)を認めた。最大膝関節伸展モーメントと胸椎後弯角(r=0.553,p<0.05),腰椎後弯角(r=0.560,p<0.046)で負の相関を認めた。膝関節屈曲モーメントアームと腰椎後弯角で負の相関(r=0.643,p<0.018)を認めた。腰椎後弯角と膝関節伸展モーメントの角力積において負の相関(r=0.577,p=0.039)を認めた。
【考察】
腰椎後弯角が大きい対象者ほど,上部体幹を主に使用する運動戦略をとっていた。胸部屈曲優位な運動戦略をとる要因として,腰椎後弯に伴う骨盤の後傾が考えられる。しかし,安静座位時の腰椎後弯角と立ち上がり動作開始時の骨盤前傾角との間には有意な相関はみられなかった。つまり,立ち上がり動作開始時に腰椎後弯角が大きい対象者ほど,骨盤後傾角が大きいことが考えられる。また,胸部屈曲運動優位に体幹前傾運動を行う場合,脊柱が後弯し骨盤前傾運動が阻害されることが考えられる。これらのことから,腰椎後傾角が大きな場合には骨盤前傾を伴う体幹前傾運動が困難となり,胸部屈曲優位な運動戦略をとる可能性が示唆される。
【結論】
加齢変化に伴い脊椎の可動性が低下した症例や,脊椎固定術を施行している症例において,立ち上がり動作が困難なことが多いように思われる。このような症例に対して立ち上がり動作を指導する場合には,動作開始時の肢位において腰椎後弯角を減少させることや,骨盤前傾運動を意識させることにより,身体重心を前方へ移動させることを指導することが重要である。
脊柱アライメントの差異が立ち上がり動作時の体幹および下肢の運動に及ぼす影響についての報告はみられない。本研究では,安静座位での脊柱アライメントが立ち上がり動作に与える影響について分析・検討した。
【方法】
対象は,体幹・下肢の整形外科疾患の既往を有さない若年健常者13名とした。脊柱アライメントの測定には,SPINAL MOUSE(Index社)を用いた。算出項目は,安静座位での胸椎後弯角,腰椎後弯角とした(後弯が正の値)。体幹・下肢の運動計測には,三次元動作分析装置(VICON社)および床反力計(AMTI社)を用いた。赤外線反射マーカの貼付はPlug-in-Gait Full body modelに準じて行った。なお解析対象は,離殿から質量中心鉛直方向移動速度が最大値を示す時点までとした。
パラメータとしては,最大股・膝関節伸展モーメント,股・膝関節伸展の角力積を算出した。また,膝関節伸展モーメントが最大を示した時点での膝関節モーメントアームを算出した。さらには,体幹前傾角,胸部屈曲角,骨盤前傾角,股関節屈曲角を求めた。
安静座位における脊柱アライメントと,体幹・下肢の各パラメータの関係については,Spearman順位相関係数を用いて分析を行った(有意水準5%未満)。
【結果】
腰椎後弯角と最大膝関節伸展モーメントでの胸部屈曲角で正の相関(離殿時:r=0.637,p<0.194,最大膝関節伸展モーメント時:r=0.676,p<0.011)を認めた。最大膝関節伸展モーメントと胸椎後弯角(r=0.553,p<0.05),腰椎後弯角(r=0.560,p<0.046)で負の相関を認めた。膝関節屈曲モーメントアームと腰椎後弯角で負の相関(r=0.643,p<0.018)を認めた。腰椎後弯角と膝関節伸展モーメントの角力積において負の相関(r=0.577,p=0.039)を認めた。
【考察】
腰椎後弯角が大きい対象者ほど,上部体幹を主に使用する運動戦略をとっていた。胸部屈曲優位な運動戦略をとる要因として,腰椎後弯に伴う骨盤の後傾が考えられる。しかし,安静座位時の腰椎後弯角と立ち上がり動作開始時の骨盤前傾角との間には有意な相関はみられなかった。つまり,立ち上がり動作開始時に腰椎後弯角が大きい対象者ほど,骨盤後傾角が大きいことが考えられる。また,胸部屈曲運動優位に体幹前傾運動を行う場合,脊柱が後弯し骨盤前傾運動が阻害されることが考えられる。これらのことから,腰椎後傾角が大きな場合には骨盤前傾を伴う体幹前傾運動が困難となり,胸部屈曲優位な運動戦略をとる可能性が示唆される。
【結論】
加齢変化に伴い脊椎の可動性が低下した症例や,脊椎固定術を施行している症例において,立ち上がり動作が困難なことが多いように思われる。このような症例に対して立ち上がり動作を指導する場合には,動作開始時の肢位において腰椎後弯角を減少させることや,骨盤前傾運動を意識させることにより,身体重心を前方へ移動させることを指導することが重要である。