[P-MT-36-4] 腰椎椎間板ヘルニアに対し,腰椎牽引療法を含む保存的治療により短期的改善する症例の特徴
前向き研究による検討
キーワード:腰椎椎間板ヘルニア, 腰椎牽引療法, 前向き研究
【はじめに,目的】
本邦の腰痛診療ガイドラインにおいて,腰椎牽引療法は腰痛患者全般に対して有効である可能性は低いとされ,坐骨神経痛を有する患者に対しては相反するエビデンスが複数存在し,一定の結論に至っていないとされている。海外では腰下肢痛を有する患者の中で牽引療法により効果のある者を予測するClinical Prediction Rule(以下,CPR)が作成されたが,本邦における検証はされていない。本研究の目的は,腰椎椎間板ヘルニア(以下,LDH)を要する患者に対し,牽引療法を含む保存的治療により短期的に改善が得られる者と得られない者を比較検討することである。
【方法】
当院にてLDHの診断を受け,医師より新規に腰椎牽引療法が処方された者のうち,本研究の参加に同意した36名を対象とした。対象者の平均年齢は46.6±14.8歳,男性24名,女性12名であった。牽引療法は腰椎牽引装置(ミナト医科学,TC-30D)を用い,股関節60°屈曲仰臥位,体重の30%の牽引力,15秒牽引3秒休止,15分間という条件で実施した。理学療法は牽引療法のみを2週間実施し,内服・注射の併用は可とした。腰痛疾患特異的QOL尺度であるOswestry Disability Index(以下,ODI)のスコアについて初診時と2週間後を比較し,初診ODIの30%以上改善した場合を改善群,30%未満を非改善群と分類した。性別,年齢など基礎情報,ヘルニアの高位や形態など画像所見,内服・注射の併用状況,初診時のODI・恐怖回避思考(Fear Avoidance Beliefs Questionnaire;FABQ)などのスコア,初診時の理学療法評価(ROM,反復運動検査など),計39項目について群間の差を検討した。統計解析は連続尺度については2標本t検定およびMann-WhitneyのU検定,名義尺度についてはχ2乗検定およびFisherの正確確率検定を実施した。有意水準は5%とし,解析にはR2.8.1(CRAN,freeware)を使用した。
【結果】
2週後の改善群13名,非改善群23名となった。統計的有意差のあった項目は,明確な受傷機転あり/なし(改善群:非改善群=9名/4名:8名/15名),症状の持続期間(中央値7日:15日),腰痛の既往10回以上/未満(2名/11名:13名/10名)の3項目であった。
【結論】
明確な受傷機転があり,症状の持続期間が短く,腰痛の既往が10回未満の症例は牽引療法を含む保存的治療により短期的にQOLが改善する者が多い可能性が示された。今回はサンプルサイズが小さいため二変量解析を実施したが,変数間の独立性が保証されていない点と,多重検定という問題点がある。今後対象者を増やし多変量解析の実施を予定しており,内服の併用なども交絡因子と考えて調整すれば牽引療法の効果を予測するCPRが作成可能と考えている。
本邦の腰痛診療ガイドラインにおいて,腰椎牽引療法は腰痛患者全般に対して有効である可能性は低いとされ,坐骨神経痛を有する患者に対しては相反するエビデンスが複数存在し,一定の結論に至っていないとされている。海外では腰下肢痛を有する患者の中で牽引療法により効果のある者を予測するClinical Prediction Rule(以下,CPR)が作成されたが,本邦における検証はされていない。本研究の目的は,腰椎椎間板ヘルニア(以下,LDH)を要する患者に対し,牽引療法を含む保存的治療により短期的に改善が得られる者と得られない者を比較検討することである。
【方法】
当院にてLDHの診断を受け,医師より新規に腰椎牽引療法が処方された者のうち,本研究の参加に同意した36名を対象とした。対象者の平均年齢は46.6±14.8歳,男性24名,女性12名であった。牽引療法は腰椎牽引装置(ミナト医科学,TC-30D)を用い,股関節60°屈曲仰臥位,体重の30%の牽引力,15秒牽引3秒休止,15分間という条件で実施した。理学療法は牽引療法のみを2週間実施し,内服・注射の併用は可とした。腰痛疾患特異的QOL尺度であるOswestry Disability Index(以下,ODI)のスコアについて初診時と2週間後を比較し,初診ODIの30%以上改善した場合を改善群,30%未満を非改善群と分類した。性別,年齢など基礎情報,ヘルニアの高位や形態など画像所見,内服・注射の併用状況,初診時のODI・恐怖回避思考(Fear Avoidance Beliefs Questionnaire;FABQ)などのスコア,初診時の理学療法評価(ROM,反復運動検査など),計39項目について群間の差を検討した。統計解析は連続尺度については2標本t検定およびMann-WhitneyのU検定,名義尺度についてはχ2乗検定およびFisherの正確確率検定を実施した。有意水準は5%とし,解析にはR2.8.1(CRAN,freeware)を使用した。
【結果】
2週後の改善群13名,非改善群23名となった。統計的有意差のあった項目は,明確な受傷機転あり/なし(改善群:非改善群=9名/4名:8名/15名),症状の持続期間(中央値7日:15日),腰痛の既往10回以上/未満(2名/11名:13名/10名)の3項目であった。
【結論】
明確な受傷機転があり,症状の持続期間が短く,腰痛の既往が10回未満の症例は牽引療法を含む保存的治療により短期的にQOLが改善する者が多い可能性が示された。今回はサンプルサイズが小さいため二変量解析を実施したが,変数間の独立性が保証されていない点と,多重検定という問題点がある。今後対象者を増やし多変量解析の実施を予定しており,内服の併用なども交絡因子と考えて調整すれば牽引療法の効果を予測するCPRが作成可能と考えている。