[P-MT-37-1] 大腿骨近位部骨折受傷患者の受傷前歩行能力再獲得を阻害する身体機能の検討
リハビリテーション・データベース協議会(JARD)登録データを用いた分析
Keywords:大腿骨近位部骨折, 日本リハビリテーション患者データベース, 歩行能力再獲得
【はじめに,目的】
大腿骨近位部骨折(以下,PFF)患者の活動目標は,受傷前歩行能力の再獲得(以下,歩行再獲得)である。大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドラインによると歩行再獲得に影響する主な因子は年齢,受傷前の歩行能力,認知症の程度が関与するとされている。しかし,上記因子の他に,PFF患部外の身体機能の状態により歩行予後が変化するなど,PFF患者では個別性が高く予後予測が困難な症例を多く経験する。そこで,本研究は日本リハビリテーション患者データベース(以下,DB)を用いて,歩行再獲得を阻害する機能的因子を検討することを目的とした。
【方法】
DB大腿骨頚部骨折登録データ(2014年5月版)16施設,2311名のうち,選択基準を満たし,欠損値や異常値を除外した403名を分析対象とした。選択基準は「転入院」,「入院病棟が回復期病棟」,「在院日数が10日以上90日以下」,「年齢が65歳以上」,「PFF受傷前歩行可能」とした。分析対象者の移動能力を,1:独歩,2:杖/伝い歩き,3:歩行器,4:歩行不能とし,移動能力を点数化した。退院時と受傷前の屋内移動能力から,歩行再獲得できたか判断した。目的変数を歩行再獲得とし,説明変数に年齢,性別,認知症の有無,退院時FIM,退院時下肢筋力(以下,下肢筋力),退院時膝関節拘縮(以下,膝拘縮)の有無,退院時足関節拘縮(以下,足拘縮)の有無,退院時バランス能力障害(以下,バランス障害)の有無としたポアソン回帰分析を行った。統計解析は,SPSS ver19を用い,相対リスク比と95%信頼区間(以下,RR,95%CI)を求めた。
【結果】
対象者データにおける歩行再獲得できた割合は190名(47%)であった。ポアソン回帰分析の結果,歩行再獲得を阻害する因子として足拘縮あり3.81(95%CI 1.08-13.38 p=0.037),下肢筋力低下1.56(95%CI 1.21-2.00 p=0.01),バランス障害あり1.34(95%CI 1.01-1.78 p=0.041),膝拘縮あり1.27(95%CI 0.95-1.68 p=0.105)であった。
【結論】
今回用いた登録データに基づけば,歩行再獲得できた割合は47%であり,諸家の報告と概ね一致した。歩行再獲得を阻害する因子には足拘縮,下肢筋力,バランスが関与し,中でも足拘縮ありが相対リスクで最も関与する因子としてあげられた。歩行時の足関節の働きとして,主に床からの衝撃緩衝作用,重心前方推進作用があるとされる。PFF患者における足拘縮は,上記能力を制限することで,支持脚としての機能回復が困難となり,歩行再獲得を阻害する因子となることが推察される。本研究の限界として,多施設共同データベースを用い,登録データに基づく検討を行ったため,PFF受傷と足拘縮の関係性や,股関節機能について詳細に検討できていない。しかし,本研究は,PFF患者が歩行再獲得するために必要なPFF患部外の身体機能を考慮した理学療法を再考するための一助となると考える。なお,本研究の内容・結論はJARDの見解ではなく,発表者の見解である。
大腿骨近位部骨折(以下,PFF)患者の活動目標は,受傷前歩行能力の再獲得(以下,歩行再獲得)である。大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドラインによると歩行再獲得に影響する主な因子は年齢,受傷前の歩行能力,認知症の程度が関与するとされている。しかし,上記因子の他に,PFF患部外の身体機能の状態により歩行予後が変化するなど,PFF患者では個別性が高く予後予測が困難な症例を多く経験する。そこで,本研究は日本リハビリテーション患者データベース(以下,DB)を用いて,歩行再獲得を阻害する機能的因子を検討することを目的とした。
【方法】
DB大腿骨頚部骨折登録データ(2014年5月版)16施設,2311名のうち,選択基準を満たし,欠損値や異常値を除外した403名を分析対象とした。選択基準は「転入院」,「入院病棟が回復期病棟」,「在院日数が10日以上90日以下」,「年齢が65歳以上」,「PFF受傷前歩行可能」とした。分析対象者の移動能力を,1:独歩,2:杖/伝い歩き,3:歩行器,4:歩行不能とし,移動能力を点数化した。退院時と受傷前の屋内移動能力から,歩行再獲得できたか判断した。目的変数を歩行再獲得とし,説明変数に年齢,性別,認知症の有無,退院時FIM,退院時下肢筋力(以下,下肢筋力),退院時膝関節拘縮(以下,膝拘縮)の有無,退院時足関節拘縮(以下,足拘縮)の有無,退院時バランス能力障害(以下,バランス障害)の有無としたポアソン回帰分析を行った。統計解析は,SPSS ver19を用い,相対リスク比と95%信頼区間(以下,RR,95%CI)を求めた。
【結果】
対象者データにおける歩行再獲得できた割合は190名(47%)であった。ポアソン回帰分析の結果,歩行再獲得を阻害する因子として足拘縮あり3.81(95%CI 1.08-13.38 p=0.037),下肢筋力低下1.56(95%CI 1.21-2.00 p=0.01),バランス障害あり1.34(95%CI 1.01-1.78 p=0.041),膝拘縮あり1.27(95%CI 0.95-1.68 p=0.105)であった。
【結論】
今回用いた登録データに基づけば,歩行再獲得できた割合は47%であり,諸家の報告と概ね一致した。歩行再獲得を阻害する因子には足拘縮,下肢筋力,バランスが関与し,中でも足拘縮ありが相対リスクで最も関与する因子としてあげられた。歩行時の足関節の働きとして,主に床からの衝撃緩衝作用,重心前方推進作用があるとされる。PFF患者における足拘縮は,上記能力を制限することで,支持脚としての機能回復が困難となり,歩行再獲得を阻害する因子となることが推察される。本研究の限界として,多施設共同データベースを用い,登録データに基づく検討を行ったため,PFF受傷と足拘縮の関係性や,股関節機能について詳細に検討できていない。しかし,本研究は,PFF患者が歩行再獲得するために必要なPFF患部外の身体機能を考慮した理学療法を再考するための一助となると考える。なお,本研究の内容・結論はJARDの見解ではなく,発表者の見解である。