第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P38

Sun. May 29, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-38-1] 超音波診断装置を用いて臨床治療の効果を探る

(筋膜リリースの有効性の検討)

真栄田健人1, 川津学1, 田中和哉2 (1.医療法人椎原会有馬病院, 2.帝京科学大学医学部理学療法学科)

Keywords:羽状角, 筋厚, 筋線維長

【はじめに,目的】

関節の制限や筋力低下,筋肉痛を生じる要因の1つに,コラーゲン線維が挙がる。不動が起こると筋肉内で不溶性コラーゲン含有量増加,架橋形成,形質膜の異常などが生じ,機能低下を来たす機序である。評価や治療で筋という単体からコラーゲン線維に視点を変え解釈すると,問題点が明確になり,治療に活かせることがある。筋膜治療手技に筋膜リリース(Myofascial Release:以下MFR)があり,竹井らは治療原理として交叉する線維の伸張と筋膜基質(細胞間物質)の粘稠度を変化させ,深筋膜の制限を解除すると述べ,実際に疼痛改善,関節可動性・筋出力向上など数多く実感する。しかし,MFR治療後,筋線維にどのような構造変化が起きているのか確認できていない。今回は,MFRの研究として報告が少ない羽状角,筋厚,筋線維長を超音波診断装置で解析し,治療効果の検証,結果における考察を行った。


【方法】

対象は運動器疾患のない男性11名(年齢28.0±10.1歳,身長169.9±6.5cm,体重63.7±8.7kg)の右大腿11肢。計測対象は内側広筋と外側広筋とし計測。計測肢位は安静背臥位にて股関節伸展0°,下腿をベッドから下垂させ,膝関節角度は下腿の自重のみで保持させた状態とした。筋膜治療としてMFRを採用。内側広筋を対象とし180秒実施。施行技術は,竹井らの先行研究を基に皮膚のたるみがなくなる程度の圧力(5~20g)を加えて伸張する手技を採用。下腿の自重による筋ストレッチ効果と区別するため,外側広筋はMFR非実施。計測場所は膝蓋骨近位端から10cm上部とし,その水平ラインから触診で大腿直筋を外した内側広筋部と外側広筋部を計測点とした。超音波画像診断装置(TOSHIBA社製Xario100)Bモード法を用いて羽状角と筋厚を計測。筋厚においては,筋膜同士の間を計測する方法,また底面膜×tanθ(羽状角)から三角関数を使用し,高さ(厚さ)を算出する方法を実施。筋線維長は筋厚/sinθ(羽状角)の式を採用。統計学的検討には,検者内信頼性は級内相関係数(以下ICC),対応のあるt検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした。


【結果】

ICCは,羽状角・筋厚,筋線維長と全ての条件で0.936以上と高値を示した。羽状角,筋厚,筋線維長全てで施行ありの内側広筋前後に有意差を認めた。筋厚評価で膜同士間の計測値からは,内側広筋前後で有意差が認められなかった。施行なしの外側広筋前後では全て有意差は認められなかった。


【結論】

今回の結果から2つ考えられる。1つは内側広筋部のMFR前後で全て有意差を示したことから,繊細な評価・治療がこの手技で行えるということ。筋厚では,算出上三角関数を利用することでMFRを行った筋線維部分の線維厚が明確に捉えやすかったのではないかと考える。もう1つは超音波診断装置を用い,信頼性が高いデータを簡便に確認できたということで,多くの臨床家がMFRにおいて研究していくキッカケなったと考える。