[P-MT-38-5] 頸椎モビライゼーション手技が頭頸部屈曲運動時の胸鎖乳突筋筋活動に与える影響
Keywords:頸椎, 徒手療法, 筋活動
【はじめに,目的】
頸部痛治療において頸椎のモビライゼーション(mobilization:以下mobi)の効果は多く報告されているが,介入が頸部筋に与える影響を調査した研究は少なく,頸部mobiの手技の違いで頸部筋活動の変化を比較した研究は渉猟する限りない。本研究の目的は,異なる頸椎mobi手技の介入前後で頭頸部屈曲運動時の胸鎖乳突筋(sternocleidomastoid:以下SCM)の筋活動を測定し,徒手介入がSCMの筋活動に与える影響を調査することである。
【方法】
対象は,頸部に整形外科的既往のない健常成人男性32名(平均年齢28.4歳)で,①徒手介入なし群9名,②頸椎離開mobi群7名,③頸椎屈曲mobi群9名,④頸椎離解mobi+頸椎屈曲mibi群7名に無作為に群分けし,属性として年齢,身長,体重,脊柱アライメントを調査した。脊柱アライメントは,Kueら(2009)の方法を参考に反射マーカーを体表9か所に貼付し,矢状面から座位と立位をデジタルビデオカメラ(Panasonic,HDC-SD200)で撮像し,二次元動作解析ソフト(DKH,Frame DIASIV)で脊柱角度を求めた。介入①は安静座位とし,②と③はC5/6部にKaltenborn-Evjenth ConceptのGradeIIIで10秒間3回を両側に行い,④は介入を②③の順で両方実施した。なお,介入前後の測定間隔は全ての群で6分間とした。頭頸部屈曲運動は,圧を確認できるStabilizer(Chattanooga group Inc)のカフを20mmHgの圧になるよう頸部下に入れ,そこから30mmHgの圧でカフを頸部で5秒間押す運動とした。運動中のSCM筋活動は,測定電極をSCM胸骨頭下位1/3に貼付し,無線筋電図(Nihon Kohden,WEB1000)にて測定した。また測定前に背臥位から後頭を2cm挙上させる頭部リフトを行い,その筋活動を100%Root Mean Square(以下RMS)とし,介入前後での運動時のSCM%RMSを求めた。統計解析は群間の属性及びSCM%RMS前後変化率については一元配置分散分析を行い,SCM%RMSについては群間と介入前後を二要因とした反復測定二元配置分散分析を行い,単純主効果及び主効果の検定は一元配置分散分析及び対応あるt検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
年齢,身長,体重,脊柱アライメント,SCM100%RMS,SCM%RMS前後変化率に群間差はなかった。頭頸部屈曲運動時のSCM%RMS(介入前/介入後)は①(16.8/16.7),②(21.3/18.0),③(24.8/21.2),④(25.8/15.3)であり単純主効果及び交互作用を認め,④の介入前後で有意な差があった。
【結論】
④の介入は頸椎離開mobiで関節包を緩めた後,頸椎屈曲mobiを行うことから,それらを単独に行うよりも頸椎の分節的な屈曲運動を促し,結果としてSCM筋活動を即時的に抑制したと考える。Jullら(2008)は,慢性頸部痛者は頭頸部屈曲運動時のSCM筋活動が大きいことからSCM筋活動を抑制した運動を推奨している。本研究の結果は,頭頸部屈曲運動を行う前に徒手介入を行うことで運動療法効果を高める可能性があることを示唆している。
頸部痛治療において頸椎のモビライゼーション(mobilization:以下mobi)の効果は多く報告されているが,介入が頸部筋に与える影響を調査した研究は少なく,頸部mobiの手技の違いで頸部筋活動の変化を比較した研究は渉猟する限りない。本研究の目的は,異なる頸椎mobi手技の介入前後で頭頸部屈曲運動時の胸鎖乳突筋(sternocleidomastoid:以下SCM)の筋活動を測定し,徒手介入がSCMの筋活動に与える影響を調査することである。
【方法】
対象は,頸部に整形外科的既往のない健常成人男性32名(平均年齢28.4歳)で,①徒手介入なし群9名,②頸椎離開mobi群7名,③頸椎屈曲mobi群9名,④頸椎離解mobi+頸椎屈曲mibi群7名に無作為に群分けし,属性として年齢,身長,体重,脊柱アライメントを調査した。脊柱アライメントは,Kueら(2009)の方法を参考に反射マーカーを体表9か所に貼付し,矢状面から座位と立位をデジタルビデオカメラ(Panasonic,HDC-SD200)で撮像し,二次元動作解析ソフト(DKH,Frame DIASIV)で脊柱角度を求めた。介入①は安静座位とし,②と③はC5/6部にKaltenborn-Evjenth ConceptのGradeIIIで10秒間3回を両側に行い,④は介入を②③の順で両方実施した。なお,介入前後の測定間隔は全ての群で6分間とした。頭頸部屈曲運動は,圧を確認できるStabilizer(Chattanooga group Inc)のカフを20mmHgの圧になるよう頸部下に入れ,そこから30mmHgの圧でカフを頸部で5秒間押す運動とした。運動中のSCM筋活動は,測定電極をSCM胸骨頭下位1/3に貼付し,無線筋電図(Nihon Kohden,WEB1000)にて測定した。また測定前に背臥位から後頭を2cm挙上させる頭部リフトを行い,その筋活動を100%Root Mean Square(以下RMS)とし,介入前後での運動時のSCM%RMSを求めた。統計解析は群間の属性及びSCM%RMS前後変化率については一元配置分散分析を行い,SCM%RMSについては群間と介入前後を二要因とした反復測定二元配置分散分析を行い,単純主効果及び主効果の検定は一元配置分散分析及び対応あるt検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
年齢,身長,体重,脊柱アライメント,SCM100%RMS,SCM%RMS前後変化率に群間差はなかった。頭頸部屈曲運動時のSCM%RMS(介入前/介入後)は①(16.8/16.7),②(21.3/18.0),③(24.8/21.2),④(25.8/15.3)であり単純主効果及び交互作用を認め,④の介入前後で有意な差があった。
【結論】
④の介入は頸椎離開mobiで関節包を緩めた後,頸椎屈曲mobiを行うことから,それらを単独に行うよりも頸椎の分節的な屈曲運動を促し,結果としてSCM筋活動を即時的に抑制したと考える。Jullら(2008)は,慢性頸部痛者は頭頸部屈曲運動時のSCM筋活動が大きいことからSCM筋活動を抑制した運動を推奨している。本研究の結果は,頭頸部屈曲運動を行う前に徒手介入を行うことで運動療法効果を高める可能性があることを示唆している。