[P-MT-39-4] 大腿骨近位部骨折術後における早期離床と血液生化学検査との関係性
Keywords:大腿骨近位部骨折, 早期離床, 血液生化学検査
【はじめに,目的】
高齢者の大腿骨近位部骨折は,転倒によって引き起こされ,要介護の原因の一つになる疾患である。したがって急性期から維持期までの幅広いリハビリテーションが必要である。急性期においては,リスク管理を行いながら早期離床することで,DVT,肺炎などの合併症予防,早期ADL向上,在院日数の短縮など,とても重要となってくる。離床に影響する因子として年齢,受傷前の歩行能力,認知機能の程度,栄養,炎症などの報告がある。しかし,離床と血液生化学検査(以下血液データ)との関連性の研究は少ない。そこで,今回,離床と血液データとの関連性を後方視的に調査・検討することを目的とした。
【方法】
対象は,平成26年1月から12月までに転倒受傷し当院で大腿骨近位部骨折に対して手術(人工骨頭挿入術または観血的骨接合術)を施行された75歳以上の女性69名の症例とした。このうち手術後2日以内(平均1.7日)に離床できた群を2日以内群(40名,平均年齢85.5±5.7歳),手術後3日以上7日以内(平均3.8日)に離床できた群を3日以上群(29名,平均年齢85.0±5.9歳)として2群に分けた。各症例の離床開始日は,Op後から数えて端座位から車椅子移乗を行った日とした。当院では,人工骨頭挿入術に対して2日目にドレーン抜去し離床開始の許可となる為,2日以内群・3日以上群に分けた。この2群の手術後の総タンパク(以下TP),アルブミン(以下Alb),CRP,白血球数(以下WBC),赤血球数(以下RBC),ヘモグロビン(以下Hb)について検討した。統計学的検討として対応のないT検定を使用して,有意水準は0.05未満とした。
【結果】
手術後2日以内群の平均値と標準偏差値は,TP 5.78±0.52,Alb 2.88±0.3,CRP 6.7±3.66,WBC 8.44±2.69,RBC 3.27±0.7,Hb10.05±1.97であった。3日以上群は,TP 5.51±0.50,Alb 2.62±0.42,CRP 9.22±3.75,WBC 8.05±2.49,RBC 2.85±0.65,Hb 11.5±14.9であった。また,2群間で有意差がみられたのは,TPとAlbとCRPとRBCであり,AlbとCRPにおいてP<0.001での優位差がみられた。
【結論】
本研究結果から離床と血液データとの関連性については,2日以内に離床できた群での栄養状態の一指標であるTP・Alb,炎症症状のCRP,そして貧血症状のRBCに有意差がみられた。このことは今後,離床開始の状態を把握する上での一因の可能性が示された。しかし,栄養面においてAlbは半減期が21日である為,術後の栄養状態よりは,受傷前からの栄養状態になる。また,食事摂取量や食形態等合わせて評価する必要がある。炎症症状におけるCRPにおいても視診触診や主観的疼痛スケールなどとの関係性も先行研究より散見されている為,総合的な評価が必要である。今回の研究は,後方視的調査である為,今後離床における他の要因との関係性も調査し,患者像の把握を他職種間で共有化できるように,より一層チームとして離床に努めていき前向き研究に繋げていきたい。
高齢者の大腿骨近位部骨折は,転倒によって引き起こされ,要介護の原因の一つになる疾患である。したがって急性期から維持期までの幅広いリハビリテーションが必要である。急性期においては,リスク管理を行いながら早期離床することで,DVT,肺炎などの合併症予防,早期ADL向上,在院日数の短縮など,とても重要となってくる。離床に影響する因子として年齢,受傷前の歩行能力,認知機能の程度,栄養,炎症などの報告がある。しかし,離床と血液生化学検査(以下血液データ)との関連性の研究は少ない。そこで,今回,離床と血液データとの関連性を後方視的に調査・検討することを目的とした。
【方法】
対象は,平成26年1月から12月までに転倒受傷し当院で大腿骨近位部骨折に対して手術(人工骨頭挿入術または観血的骨接合術)を施行された75歳以上の女性69名の症例とした。このうち手術後2日以内(平均1.7日)に離床できた群を2日以内群(40名,平均年齢85.5±5.7歳),手術後3日以上7日以内(平均3.8日)に離床できた群を3日以上群(29名,平均年齢85.0±5.9歳)として2群に分けた。各症例の離床開始日は,Op後から数えて端座位から車椅子移乗を行った日とした。当院では,人工骨頭挿入術に対して2日目にドレーン抜去し離床開始の許可となる為,2日以内群・3日以上群に分けた。この2群の手術後の総タンパク(以下TP),アルブミン(以下Alb),CRP,白血球数(以下WBC),赤血球数(以下RBC),ヘモグロビン(以下Hb)について検討した。統計学的検討として対応のないT検定を使用して,有意水準は0.05未満とした。
【結果】
手術後2日以内群の平均値と標準偏差値は,TP 5.78±0.52,Alb 2.88±0.3,CRP 6.7±3.66,WBC 8.44±2.69,RBC 3.27±0.7,Hb10.05±1.97であった。3日以上群は,TP 5.51±0.50,Alb 2.62±0.42,CRP 9.22±3.75,WBC 8.05±2.49,RBC 2.85±0.65,Hb 11.5±14.9であった。また,2群間で有意差がみられたのは,TPとAlbとCRPとRBCであり,AlbとCRPにおいてP<0.001での優位差がみられた。
【結論】
本研究結果から離床と血液データとの関連性については,2日以内に離床できた群での栄養状態の一指標であるTP・Alb,炎症症状のCRP,そして貧血症状のRBCに有意差がみられた。このことは今後,離床開始の状態を把握する上での一因の可能性が示された。しかし,栄養面においてAlbは半減期が21日である為,術後の栄養状態よりは,受傷前からの栄養状態になる。また,食事摂取量や食形態等合わせて評価する必要がある。炎症症状におけるCRPにおいても視診触診や主観的疼痛スケールなどとの関係性も先行研究より散見されている為,総合的な評価が必要である。今回の研究は,後方視的調査である為,今後離床における他の要因との関係性も調査し,患者像の把握を他職種間で共有化できるように,より一層チームとして離床に努めていき前向き研究に繋げていきたい。