[P-MT-40-3] 外側円板状半月損傷に対する半月板部分切除術前後の歩行解析
キーワード:外側円板状半月, 半月板部分切除術, 歩行解析
【はじめに,目的】
外側円板状半月(DLS)はアジア地域で多くみられ,健常な半月板に比べて組織学的に脆弱であるとされている。損傷したDLSに対しては半月板部分切除術(PM)が施行されることが多いが,術後の膝関節外側関節面の軟骨損傷や,術後長期における膝関節の関節症変化が生じるとされている。この原因の一つとして,DLS患者では静的な膝関節外反角度が健常者より小さく,半月板部分切除術後に健常者より増加することが関与するとされている。しかし,歩行などの動作中における膝関節運動から,PM後に生じる膝関節負荷の変化は検討されていない。
本研究では,DLS損傷患者における半月板部分切除術前後の歩行時膝関節運動を測定することを目的とした。
【方法】
広島大学病院整形外科にてDLS損傷と診断され,PMを施行された男性1名(DLS群)を対象とし,術前時,術後3ヶ月時(3M),6ヶ月時(6M)に歩行解析を行った。DLS群は不完全型外側円板状半月であり半月板前方に損傷が認められたが自覚される損傷機転は無かった。また下肢にDLS以外の整形外科的疾患の既往は無かった。術後の疼痛については良好な成績が得られた(KOOS pain score 3M:78 6M:100)。関節可動域制限は無く,著明な膝伸展筋力の低下もみられなかった(60°/sec 等速性筋力6M:術側244.3Nm/kg 非術側289.3 Nm/kg)。また,対照群として健常若年者11名を採用した。課題動作は10mの快適速度歩行とし,測定肢はDLS損傷側,対照群はランダムに決定した下肢側とした。歩行解析には赤外線カメラ16台を用いた三次元動作解析装置(Vicon Motion systems社,UK)と床反力計(AMTI社,USA)を用いた。反射マーカーをPoint cluster法を参考に骨盤と下肢に計54個貼付し,得られたマーカー座標より運動学データ(膝関節屈曲角度,内外反角度)を算出した。運動学データは1歩行周期を時系列で100%正規化し,Perryらの方法を参考に歩行周期を各相で区分し,それぞれの平均値を算出した。
【結果】
術前時及び術後3ヶ月時における荷重応答期~立脚中期では,DLS群は対照群に比べて膝関節屈曲角度が減少していたが,術後6ヶ月時では対照群と類似した膝関節屈曲運動がみられた。術前時では歩行周期全体を通してDLS群は対照群に比べて膝関節内反位を示したが,術後3ヶ月時では歩行周期全体を通して膝関節外反位を示した。術後6ヶ月時において,荷重応答期~立脚中期では,DLS群は対照群に比べて膝関節内反位となっていた。
【結論】
DLM群の術後3ヶ月時の歩行において膝関節が外反位を呈した要因として,DLMに対するPMが影響したと考えられる。術後6ヶ月時では荷重応答期~立脚中期での膝関節屈曲角度が増加することで膝関節側方安定性が低下したため,荷重応答期~立脚中期において膝関節内反位を示したと考えられる。
本研究より,DLS損傷者におけるPM術後3ヶ月時の歩行では,膝関節外側への負荷が増大している可能性が示された。
外側円板状半月(DLS)はアジア地域で多くみられ,健常な半月板に比べて組織学的に脆弱であるとされている。損傷したDLSに対しては半月板部分切除術(PM)が施行されることが多いが,術後の膝関節外側関節面の軟骨損傷や,術後長期における膝関節の関節症変化が生じるとされている。この原因の一つとして,DLS患者では静的な膝関節外反角度が健常者より小さく,半月板部分切除術後に健常者より増加することが関与するとされている。しかし,歩行などの動作中における膝関節運動から,PM後に生じる膝関節負荷の変化は検討されていない。
本研究では,DLS損傷患者における半月板部分切除術前後の歩行時膝関節運動を測定することを目的とした。
【方法】
広島大学病院整形外科にてDLS損傷と診断され,PMを施行された男性1名(DLS群)を対象とし,術前時,術後3ヶ月時(3M),6ヶ月時(6M)に歩行解析を行った。DLS群は不完全型外側円板状半月であり半月板前方に損傷が認められたが自覚される損傷機転は無かった。また下肢にDLS以外の整形外科的疾患の既往は無かった。術後の疼痛については良好な成績が得られた(KOOS pain score 3M:78 6M:100)。関節可動域制限は無く,著明な膝伸展筋力の低下もみられなかった(60°/sec 等速性筋力6M:術側244.3Nm/kg 非術側289.3 Nm/kg)。また,対照群として健常若年者11名を採用した。課題動作は10mの快適速度歩行とし,測定肢はDLS損傷側,対照群はランダムに決定した下肢側とした。歩行解析には赤外線カメラ16台を用いた三次元動作解析装置(Vicon Motion systems社,UK)と床反力計(AMTI社,USA)を用いた。反射マーカーをPoint cluster法を参考に骨盤と下肢に計54個貼付し,得られたマーカー座標より運動学データ(膝関節屈曲角度,内外反角度)を算出した。運動学データは1歩行周期を時系列で100%正規化し,Perryらの方法を参考に歩行周期を各相で区分し,それぞれの平均値を算出した。
【結果】
術前時及び術後3ヶ月時における荷重応答期~立脚中期では,DLS群は対照群に比べて膝関節屈曲角度が減少していたが,術後6ヶ月時では対照群と類似した膝関節屈曲運動がみられた。術前時では歩行周期全体を通してDLS群は対照群に比べて膝関節内反位を示したが,術後3ヶ月時では歩行周期全体を通して膝関節外反位を示した。術後6ヶ月時において,荷重応答期~立脚中期では,DLS群は対照群に比べて膝関節内反位となっていた。
【結論】
DLM群の術後3ヶ月時の歩行において膝関節が外反位を呈した要因として,DLMに対するPMが影響したと考えられる。術後6ヶ月時では荷重応答期~立脚中期での膝関節屈曲角度が増加することで膝関節側方安定性が低下したため,荷重応答期~立脚中期において膝関節内反位を示したと考えられる。
本研究より,DLS損傷者におけるPM術後3ヶ月時の歩行では,膝関節外側への負荷が増大している可能性が示された。