[P-MT-41-3] ウォーキングによって人の体力は向上するのか?
慢性疼痛症候群でのウォーキング検証
キーワード:ウォーキング, 体力, 慢性疼痛
【はじめに,目的】
厚生労働省は,健康づくりのための運動として一日一万歩を目標としたウォーキングの実施を推奨している。しかし,人それぞれが様々な身体環境を有する中で,一日一万歩といった漠然とした目標が,万人に共通する適切な目標であるとは言いがたい。我々は,人の体力評価として体重支持指数(Weight Bearing Index:WBI)を用いてリハビリテーションを実施している。WBIとは,ヒトの重力に対する運動機能の高さを表す指標であり,疾患・年齢・性別に左右されることのない絶対体力指数であるとされている。そこで,WBIにて慢性疼痛患者の体力を評価し,ウォーキング実施前後のWBIにて比較検証を行なった。
【方法】
慢性疼痛患者30名(男性:6名,女性:24名,平均年齢:66.7±9.7歳)を対象とした。体力評価にはBIODEX社製system3を用いて膝関節の等尺性最大伸展筋力(ft-lbs)を測定し,体重比の百分率で算出したWBI(ft-lbs/Kg)を用いた。一日の歩数管理にはエステラ社製3D加速度センサー無線通信歩数計を用い,1ヶ月間のウォーキング状況を管理してウォーキング実施前後のWBIを比較した。統計学的手法にはWilcoxon符号付順位和検定を用い,有意水準5%未満とした。また,ウォーキング実施状況に応じて対象を5群に分類(0歩~4000歩:A,4001歩~6000歩:B,6001歩~8000歩:C,8001歩~10000歩:D,10001歩~:E)し,それぞれのWBI改善率(実施後WBI/実施前WBI)の傾向をみた。対象者には本研究の主旨を口頭および文書にて十分に説明し,同意を得た者を対象とした。
【結果】
対象者の実施前WBI83.0±21.2,実際ウォーキング歩数6874.5±3183.8歩,実施後WBI78.1±22.1であった。全体の比較では,ウォーキング実施前後のWBIに統計学的有意差は認められなかった。5群のWBI改善率は,A:102%,B:98%,C:96%,D:88%,E:85%と,ウォーキング実施歩数が多いほどWBIは低下を示した。
【結論】
対象者は厚生労働省が推奨する一日一万歩に満たない実施状況であったにもかかわらず,実施歩数が多いほどWBIは低下を示している。慢性疼痛患者にとって一日一万歩という目標が適応ではない結果を示しており,慢性疼痛患者にとって安易なウォーキング実施の促しは過負荷となる可能性を示唆している。慢性疼痛患者は様々な背景を有することが多く,一側面からのみで捉えた対応では慢性疼痛患者に対峙することが難しいことが伺える。
厚生労働省は,健康づくりのための運動として一日一万歩を目標としたウォーキングの実施を推奨している。しかし,人それぞれが様々な身体環境を有する中で,一日一万歩といった漠然とした目標が,万人に共通する適切な目標であるとは言いがたい。我々は,人の体力評価として体重支持指数(Weight Bearing Index:WBI)を用いてリハビリテーションを実施している。WBIとは,ヒトの重力に対する運動機能の高さを表す指標であり,疾患・年齢・性別に左右されることのない絶対体力指数であるとされている。そこで,WBIにて慢性疼痛患者の体力を評価し,ウォーキング実施前後のWBIにて比較検証を行なった。
【方法】
慢性疼痛患者30名(男性:6名,女性:24名,平均年齢:66.7±9.7歳)を対象とした。体力評価にはBIODEX社製system3を用いて膝関節の等尺性最大伸展筋力(ft-lbs)を測定し,体重比の百分率で算出したWBI(ft-lbs/Kg)を用いた。一日の歩数管理にはエステラ社製3D加速度センサー無線通信歩数計を用い,1ヶ月間のウォーキング状況を管理してウォーキング実施前後のWBIを比較した。統計学的手法にはWilcoxon符号付順位和検定を用い,有意水準5%未満とした。また,ウォーキング実施状況に応じて対象を5群に分類(0歩~4000歩:A,4001歩~6000歩:B,6001歩~8000歩:C,8001歩~10000歩:D,10001歩~:E)し,それぞれのWBI改善率(実施後WBI/実施前WBI)の傾向をみた。対象者には本研究の主旨を口頭および文書にて十分に説明し,同意を得た者を対象とした。
【結果】
対象者の実施前WBI83.0±21.2,実際ウォーキング歩数6874.5±3183.8歩,実施後WBI78.1±22.1であった。全体の比較では,ウォーキング実施前後のWBIに統計学的有意差は認められなかった。5群のWBI改善率は,A:102%,B:98%,C:96%,D:88%,E:85%と,ウォーキング実施歩数が多いほどWBIは低下を示した。
【結論】
対象者は厚生労働省が推奨する一日一万歩に満たない実施状況であったにもかかわらず,実施歩数が多いほどWBIは低下を示している。慢性疼痛患者にとって一日一万歩という目標が適応ではない結果を示しており,慢性疼痛患者にとって安易なウォーキング実施の促しは過負荷となる可能性を示唆している。慢性疼痛患者は様々な背景を有することが多く,一側面からのみで捉えた対応では慢性疼痛患者に対峙することが難しいことが伺える。