第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P41

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-41-5] 継続的なノルディックウォーキングが地域在住女性高齢者の骨密度に与える影響

地神裕史1, 佐藤成登志2, 金子千恵3, 栗原豊明4, 伊賀敏朗4, 和田匡史5 (1.東京工科大学理学療法学科, 2.新潟医療福祉大学理学療法学科, 3.胎内市健康福祉課, 4.中条中央病院整形外科リハビリテーション科, 5.国士舘大学理工学部)

キーワード:ノルディックウォーキング, 骨密度, 地域在住女性高齢者

【はじめに,目的】

ノルディックウォーキング(以下,NW)は二本のポールを地面に押しながら歩行する運動で,本邦においてもリハビリテーションや健康増進ための運動療法として広く普及している。我々はNW実施時にポールへの荷重量を変化させることで脊柱起立筋や腹直筋といった体幹筋活動が増加することを明らかにした。また,ポールを用いたエクササイズにより,多裂筋や腹横筋といった体幹の深部筋を選択的に収縮させる方法を開発した。このようにNWやそのポールを用いた運動療法は脊椎の分節的な安定性の向上や脊椎の鉛直方向のメカニカルストレスを増大させる可能性が示唆されている。これらの先行研究からNWやポールを用いた運動療法が,骨密度の維持・改善に効果的ではないかと考えた。よって本研究では地域在住の高齢女性に対して継続的なNWを実施し,中長期的な骨密度の変化を検証することを目的とした。

【方法】

対象は新潟県胎内市が企画した「ロコモ予防事業」の参加希望者で,そのうち本研究に対するインフォームドコンセントの得られた中高齢女性23名(69.4±8.3歳)とした。介入期間は8週間で,介入内容はロコモ予防に対する講話,日本式と呼ばれるポールの突き方で行うNW,NW前後の体調管理や体操などで構成された。介入前後と介入後6ヵ月に身体機能や骨密度の計測,NW実施状況や日常生活に関するアンケートを行った。身体機能計測は下肢筋力(屈曲・伸展),体幹筋力(屈曲・伸展),片脚立位時間,椅子からの反復起立回数,Timed Up & Go testなどを行った。骨密度の計測には腰椎のL2-4と大腿骨頚部に対してHOLOGIC社製QDR1000を用いてDXA法により計測を行った。これらの結果の経時的な変化を有意水準5%で統計学的に解析した。

【結果】

介入前後で体幹屈曲(前;8.7N,後;10.9N)と反復起立回数(前;21.7回,後;23.9回)が有意に改善した。また骨密度は介入前後では有意な差は認められなかったが,介入後6ヵ月で有意に改善が認められた(前;0.997g/cm2,後;1.003g/cm2,6か月後;1.033g/cm2)(p<0.05)。

【結論】

今回の結果より,8週間の介入前後では改善が認められなかった骨密度が,介入後6ヵ月では有意に改善した。骨密度の評価には骨代謝マーカーを用いた評価や超音波を用いた評価など様々な方法がある。今回計測したDXA法による計測は超音波による評価よりも信頼性が高い一方,骨代謝マーカーとは異なり介入効果が結果として表れるのに時間を要する。よって今回の6ヵ月後の改善には様々な要因が考えられ,一概にNWのみの効果とは断言できない。しかし,今回の8週間のNW介入により筋力や活動性,歩行や外出に対する自己効力感などが変化しており,これらの変化によって骨密度の改善につながったと考える。