[P-MT-42-2] 片脚立ち上がり動作能力と股関節屈曲・伸展筋力の関係
Keywords:股関節筋力, 立ち上がり動作, 姿勢制御
【はじめに,目的】
立ち上がり動作やジャンプ動作は複合的な下肢屈曲位から伸展運動への切り替えが起こる類似した閉鎖運動連鎖(以下,CKC)であり,日常生活やスポーツ動作において重要な動作である。また,立ち上がりテストは等尺性膝伸展筋力との関連性が示されており,運動器症候群やスポーツ傷害後の復帰基準の評価指標として用いられている。先行研究により,垂直ジャンプ動作や複合的な下肢伸展トルクと股関節屈曲・伸展筋力の関係性について,屈曲筋力でより相関がみられたという報告がされている。立ち上がり動作の主要な下肢伸展筋は大腿四頭筋,ハムストリングス,大殿筋とされているが,股関節屈曲筋力においてもその関連性が推測できる。しかし,これまで立ち上がり動作における股関節筋力の関係性を検討した報告は少なく,未だ不明な点も多い。
本研究の目的は健常者を対象とした,片脚での立ち上がりテスト(以下,SLS)を動作課題とし,股関節屈曲筋力(以下,HF),股関節伸展筋力(以下,HE)との関係を明らかにすることである。
【方法】
対象は研究の同意を得た,整形外科的疾患および下肢に可動域制限のない健常男性16名(年齢:26.2±3.5歳,身長:169.9±5.3cm,体重:62.4±6.6kg)32脚とした。SLSは,村永らの立ち上がりテストに準じ,40・30・20・10cmの台から片脚で立ち上がりが可能か否かを評価した。HFは股・膝屈曲90°位,HEは股伸展0°,膝屈曲90°位を測定肢位とし,ハンドヘルドダイナモメータ(Power TrackII)を用い,非収縮ベルト固定下での最大等尺性収縮を計測し,トルク体重比(Nm/kg)を求めた。統計処理はSLSとHFおよびHEとの間の相関をSpearmanの順位相関係数を用いて検討し,有意水準は5%とした。
【結果】
股関節筋力の平均はHFが1.21±0.22Nm/kg,HEが1.02±0.27 Nm/kg,SLSの結果は40cmが7脚,30cmが9脚,20cmが6脚,10cmが10脚であり,相関関係はSLSとHFに相関を認め(r=0.57,p<0.01),SLSとHEには相関を認めなかった。
【結論】
今回のHFとHEの主動作筋はそれぞれ腸腰筋と大殿筋が挙げられる。SLSとHFに相関が認められた理由として,HFが臀部離床前の姿勢制御に影響したことが考えられる。立ち上がり動作では,臀部離床後に後方から前方へ身体重心を移動させる必要がある。また,SLSにおいては,台の高さが低くなることで股関節屈曲角度が増加し,身体重心が後方化することが推測される。よって,臀部離床に向けて身体重心を前方移動する為に体幹および骨盤を前傾させるには,より大きなHFが必要になると考える。対して,伸展方向における股関節パワーは殿部離床後にそのピークを迎える為,臀部離床前には大殿筋による大きなHEを必要としないと考えた。
今後はSLS時の重心動揺,動作解析を含めた検討を行うことを課題とし,男女間での比較,高齢者やスポーツ傷害後のアスリートを対象とすることで,臨床的意義を深めていきたい。
立ち上がり動作やジャンプ動作は複合的な下肢屈曲位から伸展運動への切り替えが起こる類似した閉鎖運動連鎖(以下,CKC)であり,日常生活やスポーツ動作において重要な動作である。また,立ち上がりテストは等尺性膝伸展筋力との関連性が示されており,運動器症候群やスポーツ傷害後の復帰基準の評価指標として用いられている。先行研究により,垂直ジャンプ動作や複合的な下肢伸展トルクと股関節屈曲・伸展筋力の関係性について,屈曲筋力でより相関がみられたという報告がされている。立ち上がり動作の主要な下肢伸展筋は大腿四頭筋,ハムストリングス,大殿筋とされているが,股関節屈曲筋力においてもその関連性が推測できる。しかし,これまで立ち上がり動作における股関節筋力の関係性を検討した報告は少なく,未だ不明な点も多い。
本研究の目的は健常者を対象とした,片脚での立ち上がりテスト(以下,SLS)を動作課題とし,股関節屈曲筋力(以下,HF),股関節伸展筋力(以下,HE)との関係を明らかにすることである。
【方法】
対象は研究の同意を得た,整形外科的疾患および下肢に可動域制限のない健常男性16名(年齢:26.2±3.5歳,身長:169.9±5.3cm,体重:62.4±6.6kg)32脚とした。SLSは,村永らの立ち上がりテストに準じ,40・30・20・10cmの台から片脚で立ち上がりが可能か否かを評価した。HFは股・膝屈曲90°位,HEは股伸展0°,膝屈曲90°位を測定肢位とし,ハンドヘルドダイナモメータ(Power TrackII)を用い,非収縮ベルト固定下での最大等尺性収縮を計測し,トルク体重比(Nm/kg)を求めた。統計処理はSLSとHFおよびHEとの間の相関をSpearmanの順位相関係数を用いて検討し,有意水準は5%とした。
【結果】
股関節筋力の平均はHFが1.21±0.22Nm/kg,HEが1.02±0.27 Nm/kg,SLSの結果は40cmが7脚,30cmが9脚,20cmが6脚,10cmが10脚であり,相関関係はSLSとHFに相関を認め(r=0.57,p<0.01),SLSとHEには相関を認めなかった。
【結論】
今回のHFとHEの主動作筋はそれぞれ腸腰筋と大殿筋が挙げられる。SLSとHFに相関が認められた理由として,HFが臀部離床前の姿勢制御に影響したことが考えられる。立ち上がり動作では,臀部離床後に後方から前方へ身体重心を移動させる必要がある。また,SLSにおいては,台の高さが低くなることで股関節屈曲角度が増加し,身体重心が後方化することが推測される。よって,臀部離床に向けて身体重心を前方移動する為に体幹および骨盤を前傾させるには,より大きなHFが必要になると考える。対して,伸展方向における股関節パワーは殿部離床後にそのピークを迎える為,臀部離床前には大殿筋による大きなHEを必要としないと考えた。
今後はSLS時の重心動揺,動作解析を含めた検討を行うことを課題とし,男女間での比較,高齢者やスポーツ傷害後のアスリートを対象とすることで,臨床的意義を深めていきたい。