[P-MT-42-5] 開大式高位脛骨骨切り術前後の歩行における矢状面の重心位置と下肢関節角度の変化について
キーワード:変形性膝関節症, 高位脛骨骨切り術, 重心
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下膝OA)患者の特徴として,重心の後方化が報告されている。また,膝OAの代償的歩行戦略として歩幅の減少が報告されている。しかし,矢状面上の重心位置と歩幅の関係や術後の関節角度の変化は明らかではない。そこで,本研究では開大式高位脛骨骨切り術(以下OHTO)前後の踵接地時における重心の前後位置および下肢関節角度の変化を検討することを目的とした。
【方法】
対象は膝OAと診断され,OHTOを施行された男性5名,女性21名(平均年齢65.9±7.4歳)の26肢(OHTO群)とした。Kellgren-Lawrence分類の内訳はGradeIII14肢,GradeIV12肢であった。運動学データは10台のカメラから構成された三次元動作解析装置VICON MX(Vicon Motion System社製)と4枚の床反力計(AMTI社製)を用いて測定した。被験者にはマーカを身体の41ヵ所に貼付し,測定動作は裸足による自由速度での歩行とした。解析ソフトVISUAL3D(C-Motion社製)を用い,ステップ長,術側踵接地時の重心位置の割合(前足踵から重心までの距離/ステップ長×100の百分率で計算),歩行速度,前方肢の矢状面の股関節・膝関節・足関節角度を算出した。各値は3歩行周期の平均値とし,術前および術後6ヶ月時点で測定した。
また,健常群として健常者100肢(平均年齢60.6±7.3歳)の踵接地時における運動学データも同様に算出し,膝OA患者と比較・検討した。統計学的検定にはTukey法を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
ステップ長は術前OHTO群0.30±0.05m,術後OHTO群0.33±0.04m,健常群0.39±0.04mであり,術後OHTO群で有意に増大したが,健常群は他の2群より大きかった。
重心位置の割合は術前OHTO群32.3±5.3%,術後OHTO群34.3±3.9%,健常群32.2±4.9%であり,術前後に差を認めず,術後OHTO群では健常群より有意に重心の後方化を認めた。
歩行速度は術前OHTO群0.90±0.20m/s,術後OHTO群0.98±0.20m/s,健常群1.38±0.16m/sであり,術後OHTO群で有意に増大したが,健常群は他の2群より速かった。
股関節屈曲角度では術前OHTO群34.0±9.7°,術後OHTO群37.9±7.6°,健常群31.7±6.0°であり,術前後で差を認めず,術後OHTO群は健常群よりも有意に屈曲位であった。膝関節屈曲角度は術前OHTO群8.8±5.5°,術後OHTO3群10.1±5.7°,健常群4.6±4.5°であり,術前後で差を認めず,健常群は他の2群より有意に伸展位であった。足関節では術前OHTO群9.2±4.9°,術後OHTO群7.0±4.5°,健常群7.0±4.0°であり,術前OHTO群は他の2群よりも有意に背屈位であった。
【結論】
先行研究と同様に,術前は膝関節の伸展制限によるステップ長の減少と歩行速度の低下が生じているが,健常群と比較して重心の後方化は認められなかった。術後は踵接地時の重心位置の後方化が認められたが,術後に股関節の屈曲角度とステップ長が増加したことが原因であると考え,今後はこれらの変化の長期的な検討が必要である。
変形性膝関節症(以下膝OA)患者の特徴として,重心の後方化が報告されている。また,膝OAの代償的歩行戦略として歩幅の減少が報告されている。しかし,矢状面上の重心位置と歩幅の関係や術後の関節角度の変化は明らかではない。そこで,本研究では開大式高位脛骨骨切り術(以下OHTO)前後の踵接地時における重心の前後位置および下肢関節角度の変化を検討することを目的とした。
【方法】
対象は膝OAと診断され,OHTOを施行された男性5名,女性21名(平均年齢65.9±7.4歳)の26肢(OHTO群)とした。Kellgren-Lawrence分類の内訳はGradeIII14肢,GradeIV12肢であった。運動学データは10台のカメラから構成された三次元動作解析装置VICON MX(Vicon Motion System社製)と4枚の床反力計(AMTI社製)を用いて測定した。被験者にはマーカを身体の41ヵ所に貼付し,測定動作は裸足による自由速度での歩行とした。解析ソフトVISUAL3D(C-Motion社製)を用い,ステップ長,術側踵接地時の重心位置の割合(前足踵から重心までの距離/ステップ長×100の百分率で計算),歩行速度,前方肢の矢状面の股関節・膝関節・足関節角度を算出した。各値は3歩行周期の平均値とし,術前および術後6ヶ月時点で測定した。
また,健常群として健常者100肢(平均年齢60.6±7.3歳)の踵接地時における運動学データも同様に算出し,膝OA患者と比較・検討した。統計学的検定にはTukey法を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
ステップ長は術前OHTO群0.30±0.05m,術後OHTO群0.33±0.04m,健常群0.39±0.04mであり,術後OHTO群で有意に増大したが,健常群は他の2群より大きかった。
重心位置の割合は術前OHTO群32.3±5.3%,術後OHTO群34.3±3.9%,健常群32.2±4.9%であり,術前後に差を認めず,術後OHTO群では健常群より有意に重心の後方化を認めた。
歩行速度は術前OHTO群0.90±0.20m/s,術後OHTO群0.98±0.20m/s,健常群1.38±0.16m/sであり,術後OHTO群で有意に増大したが,健常群は他の2群より速かった。
股関節屈曲角度では術前OHTO群34.0±9.7°,術後OHTO群37.9±7.6°,健常群31.7±6.0°であり,術前後で差を認めず,術後OHTO群は健常群よりも有意に屈曲位であった。膝関節屈曲角度は術前OHTO群8.8±5.5°,術後OHTO3群10.1±5.7°,健常群4.6±4.5°であり,術前後で差を認めず,健常群は他の2群より有意に伸展位であった。足関節では術前OHTO群9.2±4.9°,術後OHTO群7.0±4.5°,健常群7.0±4.0°であり,術前OHTO群は他の2群よりも有意に背屈位であった。
【結論】
先行研究と同様に,術前は膝関節の伸展制限によるステップ長の減少と歩行速度の低下が生じているが,健常群と比較して重心の後方化は認められなかった。術後は踵接地時の重心位置の後方化が認められたが,術後に股関節の屈曲角度とステップ長が増加したことが原因であると考え,今後はこれらの変化の長期的な検討が必要である。