[P-MT-43-1] 50歳以上と若年者とのACL再建術後成績の比較
キーワード:ACL, 中高年, 術後成績
【はじめに,目的】
近年,生涯スポーツや健康意識の高まりから壮年期を迎えても活動性の高いスポーツ活動を楽しむ人が多い。これらのことから,前十字靭帯(ACL)再建術の実施年齢の幅も広がってきているとされ,当院では患者のデマンドや活動性を考慮して50歳以上の症例もACL再建術を実施している。中高年のACL再建術の術後成績では,Alanらが40歳以上の症例の術後成績を若年者と比較し検討した報告をしているが,それ以上の年齢層について若年者と比較した報告はない。本研究は,より年齢が高い50歳~70歳代の症例におけるACL再建術の術後成績を調査し,若年者と比較することを目的とした。
【方法】
対象は,当院で片側の初回ACL再建術を行った者で手術時年齢が30歳未満8例(男性5例,女性3例 平均年齢18.4±2.3歳),50歳以上7例(女性7例 平均年齢56.1±5.5歳)とした。評価項目は膝関節屈曲・伸展ROM,Lysholm score,hand-held dynamometer(日本メディックス製)で測定した膝屈曲・伸展の筋力(N/kg,体重で標準化)とした。評価時期は術前と術後10ヵ月以上(平均14.5±3.5ヵ月)とし,30歳未満群と50歳以上群で各項目間に差がないか検討した。統計には対応のないt検定またはMann-Whitneyの検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
膝屈曲ROMの術前平均値は,30歳未満139.4±7.8°,50歳以上142.1±4.9°,術後は142.5±6.6°,137.9±4.9°,膝伸展ROMの術前平均値は,30歳未満1.3±2.3°,50歳以上0±0.0°,術後は0±0.0°,-0.7±1.9°でいずれも両群間に有意差はなかった。Lysholm scoreの術前平均値は,30歳未満83.6±13.4,50歳以上71.6±13.6,術後は93.9±7.0,90.9±13.3で両群間に有意差はなかった。膝屈曲筋力(N/kg)の術前平均値は,30歳未満1.8±0.6,50歳以上2.1±0.9,術後は2.2±0.9,1.7±0.3,膝伸展筋力の術前平均値は,30歳未満3.1±0.9,50歳以上2.6±0.6,術後は3.6±1.6,2.9±0.5でいずれも両群間に有意差はなかった。但し,50歳以上群の1名で抜釘時に変形性膝関節症(膝OA)の進行を認め,Lysholm scoreが著しく低下していた。
【結論】
全項目において両群間に有意差は無く,臨床成績としては若年者同様の安定した成績が得られた。そのため理学療法士としては,50歳以上の中高年においてもACL再建術を施行することにより若年者と同様に患者のデマンドに応じた活動性の高いスポーツ活動などへの復帰を手助けすることができるのではないだろうか。また,膝OAの進行によりLysholm scoreが低下していた1名でBMIが高いという特徴がみられた。中高年の状態は若年者に比べ膝OAに変化しやすい可能性もあり,身体の機能面のみに着目するのではなく,体重のコントロールなど全身を視野に入れた理学療法が必要とされる。今後は症例数を増やすとともに経時的に調査し,中高年の回復の早さの差やBMI,膝OAの影響について検討する必要がある。
近年,生涯スポーツや健康意識の高まりから壮年期を迎えても活動性の高いスポーツ活動を楽しむ人が多い。これらのことから,前十字靭帯(ACL)再建術の実施年齢の幅も広がってきているとされ,当院では患者のデマンドや活動性を考慮して50歳以上の症例もACL再建術を実施している。中高年のACL再建術の術後成績では,Alanらが40歳以上の症例の術後成績を若年者と比較し検討した報告をしているが,それ以上の年齢層について若年者と比較した報告はない。本研究は,より年齢が高い50歳~70歳代の症例におけるACL再建術の術後成績を調査し,若年者と比較することを目的とした。
【方法】
対象は,当院で片側の初回ACL再建術を行った者で手術時年齢が30歳未満8例(男性5例,女性3例 平均年齢18.4±2.3歳),50歳以上7例(女性7例 平均年齢56.1±5.5歳)とした。評価項目は膝関節屈曲・伸展ROM,Lysholm score,hand-held dynamometer(日本メディックス製)で測定した膝屈曲・伸展の筋力(N/kg,体重で標準化)とした。評価時期は術前と術後10ヵ月以上(平均14.5±3.5ヵ月)とし,30歳未満群と50歳以上群で各項目間に差がないか検討した。統計には対応のないt検定またはMann-Whitneyの検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
膝屈曲ROMの術前平均値は,30歳未満139.4±7.8°,50歳以上142.1±4.9°,術後は142.5±6.6°,137.9±4.9°,膝伸展ROMの術前平均値は,30歳未満1.3±2.3°,50歳以上0±0.0°,術後は0±0.0°,-0.7±1.9°でいずれも両群間に有意差はなかった。Lysholm scoreの術前平均値は,30歳未満83.6±13.4,50歳以上71.6±13.6,術後は93.9±7.0,90.9±13.3で両群間に有意差はなかった。膝屈曲筋力(N/kg)の術前平均値は,30歳未満1.8±0.6,50歳以上2.1±0.9,術後は2.2±0.9,1.7±0.3,膝伸展筋力の術前平均値は,30歳未満3.1±0.9,50歳以上2.6±0.6,術後は3.6±1.6,2.9±0.5でいずれも両群間に有意差はなかった。但し,50歳以上群の1名で抜釘時に変形性膝関節症(膝OA)の進行を認め,Lysholm scoreが著しく低下していた。
【結論】
全項目において両群間に有意差は無く,臨床成績としては若年者同様の安定した成績が得られた。そのため理学療法士としては,50歳以上の中高年においてもACL再建術を施行することにより若年者と同様に患者のデマンドに応じた活動性の高いスポーツ活動などへの復帰を手助けすることができるのではないだろうか。また,膝OAの進行によりLysholm scoreが低下していた1名でBMIが高いという特徴がみられた。中高年の状態は若年者に比べ膝OAに変化しやすい可能性もあり,身体の機能面のみに着目するのではなく,体重のコントロールなど全身を視野に入れた理学療法が必要とされる。今後は症例数を増やすとともに経時的に調査し,中高年の回復の早さの差やBMI,膝OAの影響について検討する必要がある。