[P-MT-43-2] 健常人およびACL損傷患者における等尺性股関節内外旋筋筋力比の比較検討
キーワード:股関節, 筋力, ACL損傷
【はじめに,目的】
非接触性の膝前十字靭帯損傷(以下,ACL損傷)は女性で多く,関連要因の一つに筋力の不均衡が報告されている。なかでも,膝関節屈曲筋と伸展筋の筋力比を表すH/Q比の不均衡は,ACLの損傷や再受傷との関連が報告され,ACL損傷の予防や治療プログラムの効果判定の指標として広く用いられている。さらに近年,ACL損傷の原因として股関節外旋筋力の低下に伴う股関節の内旋運動の制御不足が報告されているが,股関節回旋筋力に焦点を当てた報告は見当たらない。そこで本研究の目的は,股関節内旋筋と外旋筋の筋力比の性別および,ACL損傷の既往の有無での差を明らかにすることとした。
【方法】
対象は下肢に重篤な整形外科的疾患の既往のない健常成人50名(以下,健常群)(男性28名:年齢25.7±4.0歳,体重65.7±8.4kg。女性22名:年齢23.0±3.2歳,体重52.2±4.6kg)およびACL損傷の既往のある者15名(以下,ACL群)(男性6名:年齢21.5±3.1歳,体重73.5±15.4kg。女性9名:年齢29.7±13.9歳,体重53.4±4.2kg)とした。利き脚はボールを蹴る側の脚とし被験者全てが右脚であった。測定項目は最大等尺性収縮での股関節内旋筋力,外旋筋力とした。測定はハンドヘルドダイナモメータ(以下,HHD)(μtas F100,アニマ社)を使用し,ベルト固定法で実施した。測定肢位はベッドから両下腿を下垂した背臥位で,股関節屈伸・内外旋中間位,膝関節90̊屈曲位とした。HHDのパッドは内果の直上に設定した。測定時は骨盤,大腿部をベルトで固定し,両上肢はベッド端を把持させた。測定は各3回ずつ5秒間行い,測定間には1分間の休憩を行った。また,健常群は右側,ACL群は患側での測定値を解析対象とした。統計解析は股関節内旋筋力,外旋筋力の平均値を体重で除した値(以下,IR,ER)および,内旋筋力を外旋筋力で除した値(以下,I/E比)に換算し,健常群の性別と,男女別での群間の比較を対応のないt検定を用いて行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
ER,IR,I/E比はそれぞれ,健常群男性0.2±0.1,0.1±0.0,0.6±0.2,健常群女性0.1±0.0,0.1±0.0,1.0±0.3,ACL群男性0.1±0.0,0.1±0.0,1.0±0.1,ACL群女性0.1±0.0,0.1±0.0,1.2±0.2であった。性別での比較は,ERは男性が有意に大きく,IRは有意差がなかった。I/E比は,女性が有意に大きかった。群間での比較は,男性はERとIRで有意差がなく,I/E比のみACL群が有意に大きかった。女性では,ERに有意差がなく,IRおよびI/E比はACL群が有意に大きかった。
【結論】
I/E比は女性およびACL群が有意に大きいという結果から,I/E比の不均衡がACL損傷の関連要因の一つである可能性が示唆された。このことから,股関節内旋筋力に見合った外旋筋のトレーニングを行うことがACL損傷の予防に繋がるのではないかと考えられる。今後は,I/E比と動作との関連性や,実際にACL損傷を起こす者のI/E比を調べていく必要があると考えた。
非接触性の膝前十字靭帯損傷(以下,ACL損傷)は女性で多く,関連要因の一つに筋力の不均衡が報告されている。なかでも,膝関節屈曲筋と伸展筋の筋力比を表すH/Q比の不均衡は,ACLの損傷や再受傷との関連が報告され,ACL損傷の予防や治療プログラムの効果判定の指標として広く用いられている。さらに近年,ACL損傷の原因として股関節外旋筋力の低下に伴う股関節の内旋運動の制御不足が報告されているが,股関節回旋筋力に焦点を当てた報告は見当たらない。そこで本研究の目的は,股関節内旋筋と外旋筋の筋力比の性別および,ACL損傷の既往の有無での差を明らかにすることとした。
【方法】
対象は下肢に重篤な整形外科的疾患の既往のない健常成人50名(以下,健常群)(男性28名:年齢25.7±4.0歳,体重65.7±8.4kg。女性22名:年齢23.0±3.2歳,体重52.2±4.6kg)およびACL損傷の既往のある者15名(以下,ACL群)(男性6名:年齢21.5±3.1歳,体重73.5±15.4kg。女性9名:年齢29.7±13.9歳,体重53.4±4.2kg)とした。利き脚はボールを蹴る側の脚とし被験者全てが右脚であった。測定項目は最大等尺性収縮での股関節内旋筋力,外旋筋力とした。測定はハンドヘルドダイナモメータ(以下,HHD)(μtas F100,アニマ社)を使用し,ベルト固定法で実施した。測定肢位はベッドから両下腿を下垂した背臥位で,股関節屈伸・内外旋中間位,膝関節90̊屈曲位とした。HHDのパッドは内果の直上に設定した。測定時は骨盤,大腿部をベルトで固定し,両上肢はベッド端を把持させた。測定は各3回ずつ5秒間行い,測定間には1分間の休憩を行った。また,健常群は右側,ACL群は患側での測定値を解析対象とした。統計解析は股関節内旋筋力,外旋筋力の平均値を体重で除した値(以下,IR,ER)および,内旋筋力を外旋筋力で除した値(以下,I/E比)に換算し,健常群の性別と,男女別での群間の比較を対応のないt検定を用いて行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
ER,IR,I/E比はそれぞれ,健常群男性0.2±0.1,0.1±0.0,0.6±0.2,健常群女性0.1±0.0,0.1±0.0,1.0±0.3,ACL群男性0.1±0.0,0.1±0.0,1.0±0.1,ACL群女性0.1±0.0,0.1±0.0,1.2±0.2であった。性別での比較は,ERは男性が有意に大きく,IRは有意差がなかった。I/E比は,女性が有意に大きかった。群間での比較は,男性はERとIRで有意差がなく,I/E比のみACL群が有意に大きかった。女性では,ERに有意差がなく,IRおよびI/E比はACL群が有意に大きかった。
【結論】
I/E比は女性およびACL群が有意に大きいという結果から,I/E比の不均衡がACL損傷の関連要因の一つである可能性が示唆された。このことから,股関節内旋筋力に見合った外旋筋のトレーニングを行うことがACL損傷の予防に繋がるのではないかと考えられる。今後は,I/E比と動作との関連性や,実際にACL損傷を起こす者のI/E比を調べていく必要があると考えた。