第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P43

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-43-3] 壮年期女性における膝前十字靱帯再建術後の筋力回復がパフォーマンスに与える影響

生田旭洋1, 庄田圭佑1, 梅田千恵子1, 彦坂潤1, 内藤敏博1, 及川道雄2 (1.特定医療法人宝美会総合青山病院リハビリテーション技術室, 2.特定医療法人宝美会総合青山病院整形外科)

キーワード:膝前十字靱帯損傷, パフォーマンス, 壮年期女性

【はじめに,目的】

前十字靱帯(以下ACL)損傷膝に対するACL再建術後において,十分な筋力回復が競技復帰に必要となる。ACL損傷の発生率は女性に高く,受傷機転として非接触型が多い。この要因として柔軟性が高く,筋力が弱いなどの特性が挙げられる。さらに,外側広筋の筋線維組成に性差が存在する(Staron, et al., 2000)ことや女性ホルモンは骨格筋量を負に制御している(Ogawa, et al., 2011)も明らかになっている。また,ACL再建術後の競技復帰の指標の一つとしてパフォーマンステストの一つであるSingle hop testが多く用いられており,再建術後の筋力回復過程において相関関係があることが報告されている(Reid A, et al., 2007)。ACL再建術後はパフォーマンスが低下することが報告されており,この性差はスポーツ復帰に影響する可能性がある。しかしながら,術後回復過程において壮年期女性に対する筋力とパフォーマンスの影響についての報告は少なく,Single hop testが臨床的指標となるのかは不明な点が多い。

今回,我々はACL再建を施行した患者に対し,術後から11ヶ月の身体能力の回復影響を年齢と性別で検討した。


【方法】

対象は2013年3月~2015年11月にかけて当院にてACL再建を行い10ヶ月以上経過観察し得た45例の患者である。10.20代の男性をYoung man(以下Ym)n=12,30.40代の男性をOlder man(以下Om)n=11,10.20代の女性をYoung woman(以下Yw)n=10,30.40代の女性をolder woman(以下Om)n=12とした。評価項目は活動レベルの評価(Tegnel activity score),膝関節可動域(以下膝ROM),パフォーマンステストはsingle hop testを採用し,膝筋力はアルケア社製ロコモスキャンを用いて術前,術後3・6・11ヶ月で経時的に評価した。統計処理は,一元配置分散分析後,多重比較検定(Tukey-Kramer)を行い,Single hop testと膝筋力の関係はピアソンの相関関係を使用しP<0.05をもって有意差ありとした。


【結果】

膝ROMは,群間において回復過程に有意差は認められなかった(P<0.05)。膝筋力・Single hop testについてはYm,Om,Ywでは術後3ヵ月と比較して6・11ヵ月で有意に増加を示したが,Ow群では有意な変化を示さなかった(P<0.05)。また,Single hop testはYm,Om,Ywでは相関関係を示したものの,Owにおいては相関関係を示さなかった(P<0.05)。


【結論】

膝筋力・Single hop testについてOwでは他の群に比べ,回復過程で異なる結果となった。よって,ACL再建術後に筋力回復には,性差および加齢による身体能力に遅延が存在することが示唆された。また,壮年期の女性においては筋力とパフォーマンスは互いに影響していないことが確認でき,Single hop testは競技復帰にむけての判断基準として有用でない可能性があると考える。以上のことから,一般的にはACL再建術を施行した症例には,統一した後療法で実施されているが,年齢・性別を考慮した運動処方・スポーツ復帰時期を考えていく必要があることが考えられる。