[P-MT-43-4] 保存療法中の変形性膝関節症患者に対する視覚的評価が可能な歩行異常性項目の妥当性と信頼性
キーワード:視覚的評価, 歩行異常性, 妥当性
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(膝OA)における歩行動態として,膝関節内反モーメント(KAM)が問題視されている。同時に,KAMは対象者により異なって出現し,膝関節側方動揺性やKAMを減少させる補償戦略として体幹の側方動揺性,足関節肢位の変容,股関節の屈曲増大などが報告されている。そのため,臨床での歩行異常性評価は膝OA患者の運動機能の差を正確に捉えられなければならないと考えられる。特に,歩行異常性因子は動作解析装置による定量的な研究が多く報告されている。しかし,視覚的歩行異常性評価の研究領域では膝関節の側方動揺性の有無に対しての信頼性,妥当性のみであり(2004 Chang),視覚的歩行異常性評価においても膝関節以外の補償戦略を検査・評価する必要があると考える。よって我々は膝OA患者に対する視覚的評価が可能な歩行異常性項目の妥当性と信頼性の検討を行うことを目的とした。
【方法】
歩行異常性項目の選定条件は膝OAの歩行異常性として報告されている論文,視覚的歩行評価が可能なものとし,研究チームにて内容的妥当性を確認した。内容妥当性が確認された項目においては,視覚的評価の採点結果の相対度数を確認し,外的基準変数との基準関連妥当性を検討した。視覚的評価は項目ごとに動画を複数回再生し異常性あり・なしの2件法で採点した。外的基準変数は歩行動画上の歩数割合と関節角度(3回の平均角度)をImage-Jにて算出した。統計処理は独立サンプルのT検定(p<0.05)を用い検討した。検者間信頼性は,歩行異常性あり・なしの2件法で採点し,2名の検者での一致率をCohenのKappa係数(p<0.05)を用い検討した。基準関連妥当性の検討は膝OA患者27例を対象とし,信頼性の検討は膝OA患者20例を対象とした。歩行の計測は7.6mの歩行路(予備路1m)を通常速度で独歩にて1往復し,ビデオカメラで前額面と矢状面の撮影を行った。
【結果】
内容妥当性は膝OAの歩行異常性13項目と一般的に観察可能な歩行異常性33項目から統合・選定し,歩行リズム,toe-out,toe-in,足部の接地,立脚期の足関節運動,膝関節の側方動揺性,立脚期の膝関節運動,遊脚期の膝関節運動,股関節の伸展範囲,体幹の側方動揺性の計10項目であった。外的基準との関連を示した項目は歩行リズム,toe-out,足部の接地,膝関節の側方動揺性,股関節の伸展範囲,体幹の側方動揺性の6項目であった。また,項目ごとのKappa係数(p<0.05)はすべての項目においてκ=0.61以上を示した。
【結論】
膝OA患者に対する視覚的評価が可能な歩行異常性は歩行リズム,toe-out,足部の接地,膝関節の側方動揺性,股関節の伸展範囲,体幹の側方動揺性という膝関節以外の戦略を含む項目であった。さらに,検者間信頼性も中程度~高い一致率を示し,従来行われていた視覚的歩行評価をより数理統計学的に示唆した。
変形性膝関節症(膝OA)における歩行動態として,膝関節内反モーメント(KAM)が問題視されている。同時に,KAMは対象者により異なって出現し,膝関節側方動揺性やKAMを減少させる補償戦略として体幹の側方動揺性,足関節肢位の変容,股関節の屈曲増大などが報告されている。そのため,臨床での歩行異常性評価は膝OA患者の運動機能の差を正確に捉えられなければならないと考えられる。特に,歩行異常性因子は動作解析装置による定量的な研究が多く報告されている。しかし,視覚的歩行異常性評価の研究領域では膝関節の側方動揺性の有無に対しての信頼性,妥当性のみであり(2004 Chang),視覚的歩行異常性評価においても膝関節以外の補償戦略を検査・評価する必要があると考える。よって我々は膝OA患者に対する視覚的評価が可能な歩行異常性項目の妥当性と信頼性の検討を行うことを目的とした。
【方法】
歩行異常性項目の選定条件は膝OAの歩行異常性として報告されている論文,視覚的歩行評価が可能なものとし,研究チームにて内容的妥当性を確認した。内容妥当性が確認された項目においては,視覚的評価の採点結果の相対度数を確認し,外的基準変数との基準関連妥当性を検討した。視覚的評価は項目ごとに動画を複数回再生し異常性あり・なしの2件法で採点した。外的基準変数は歩行動画上の歩数割合と関節角度(3回の平均角度)をImage-Jにて算出した。統計処理は独立サンプルのT検定(p<0.05)を用い検討した。検者間信頼性は,歩行異常性あり・なしの2件法で採点し,2名の検者での一致率をCohenのKappa係数(p<0.05)を用い検討した。基準関連妥当性の検討は膝OA患者27例を対象とし,信頼性の検討は膝OA患者20例を対象とした。歩行の計測は7.6mの歩行路(予備路1m)を通常速度で独歩にて1往復し,ビデオカメラで前額面と矢状面の撮影を行った。
【結果】
内容妥当性は膝OAの歩行異常性13項目と一般的に観察可能な歩行異常性33項目から統合・選定し,歩行リズム,toe-out,toe-in,足部の接地,立脚期の足関節運動,膝関節の側方動揺性,立脚期の膝関節運動,遊脚期の膝関節運動,股関節の伸展範囲,体幹の側方動揺性の計10項目であった。外的基準との関連を示した項目は歩行リズム,toe-out,足部の接地,膝関節の側方動揺性,股関節の伸展範囲,体幹の側方動揺性の6項目であった。また,項目ごとのKappa係数(p<0.05)はすべての項目においてκ=0.61以上を示した。
【結論】
膝OA患者に対する視覚的評価が可能な歩行異常性は歩行リズム,toe-out,足部の接地,膝関節の側方動揺性,股関節の伸展範囲,体幹の側方動揺性という膝関節以外の戦略を含む項目であった。さらに,検者間信頼性も中程度~高い一致率を示し,従来行われていた視覚的歩行評価をより数理統計学的に示唆した。